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4-06-01 立山


 今、俺たちは中部山岳国立公園の中に有る立山にやってきている。


 ここは沢山の山々からなる国立公園であるが、立山は富山観光の目玉でもあり、富山からの交通の便も良い。

 でも、俺たちはこの山に観光の為に来た訳ではない。


 由彦さんの車には俺と珠江、マリアの4人が乗っている。

 イザベラとサリーはコテージで摩導具の実験中であり、今回4人で来たのは、乗ってきた車が軽の4人乗りのオフロード4WDであり、公安委員会の許可を受けているこの車でしか、国立公園のこの道路に立ち入る事ができないからだ。


 富沢家では、江戸時代から丸薬の薬草を加工する為に、ここ立山の山中に、土地と山小屋を所有していたため、国の特別な通行許可を受けている。

 所有する山小屋自体は雪の多い年に倒壊してしまったが、この時代になってから、国立公園内に建物を再建するためには、許可の手続きがとても面倒とのことで、今は土地のみの所有となっている。


 そう、今日ここに来た目的は、由彦さんの丸薬を作る為に、富沢家に伝承された製法である、貴薬草に気を注ぎ込む作業のために、ここまでやって来たのだ。

 わざわざ古文書どおりに山小屋までは行かなくてもとは思ったのだが、今は夏場であり、昔のように雪山登山ではなく、車で簡単に行けるということであるので、せっかくであれば観光がてらにとやってきた。


 立山には、冬に積もった雪を切削し、15メートルほどの高さの雪壁に挟まれた道路が作られ、そこは雪の大谷と呼ばれ、春先の道路開通時の名物となっている。

 ただ、この大谷と呼ばれる雪が大量に積もる場所は、山頂の室堂よりもすこし下にある一部分であり、由彦さんの土地はそこよりもう少し下にあった。


 一度道路の終点の室堂へ寄った後、少し道路を下り、途中で通行止めとされている場所から分岐して少し進む。


 この通行止め周辺から、既に富沢家の私有地だ。

 薬草が手に入らない富沢家では、ここへ来ることは無く、小屋は自然消滅し、途中の私道も荒れており、4WDでもかなり厳しい場所がある。

 途中何度か落石や倒木で塞がれていたので、それら障害物をストレージに収容して、目的の山小屋があった場所まで到着した。


 ここは国立公園内ではあるが、すべてが国の土地ではない。

 先ほども言ったように、この一帯は富沢家が個人所有している土地である。

 店舗を閉じた際に、この土地を売ろうとしたそうだが、ここは法律で強い規制がかかっているので、買ったところで使いようがない土地の為、売却を断念したらしい。


 ところで、特別保護地区では、自分が所有する土地であっても、通行を阻害する大きな石などを除去して持ち帰った場合、法律違反となってしまうのだろうか?

 そもそもここは本来道路であり、今この道を塞いでいる物は、以前はここに無かった木や岩だから、少なくとも除去行為自体は原状復帰作業だよね。

 まあ、法律はよく解らないな。


 富沢漢方薬屋の先代たちは、雪のある時にこの場所にまで登って来て、この山の雪を溶かして、水を作って作業していたらしい。

 そして小屋の中では薬草を蒸し、さらに屋外で周囲の雪を用いて冷却することを何回か繰り返していたそうだ。

 ここまでの往復だけでも、凍傷や落石や滑落など、命がけの作業であった事が(しの)ばれる。


 俺たちは、今は小さな平地だけしかない、小屋があった場所に降り立つ。

 周辺には以前の小屋の残骸であろう朽ちた木材が、まだ少し残っていた。


 すると、マリアが、


「慎二、 ここはエターナルの流れを強く感じますわ」


 俺は感じられないが、この場所は貴子の里のようにエターナルの流れが強い場所のようだ。

 きっと、気に敏感な人が、古文書に有ったこの場所を探し当て、ここに小屋を建てたのであろう。


 早速、車から折り畳みの椅子とテーブルを出して、マリアとしっかりと密着できるように、椅子には俺が座り、その俺の上にマリアが座る事にした。


 そして、先ほどわざわざ山頂付近まで行って取ってきた、綺麗な雪が入った小さな壺を取り出して、マリアに渡す。

 さすがに夏時期ともなると、いくら山頂でも柔らかな雪ではないので、残っていた固い雪の表面を削って、中の凍った部分を削ったものが入っている。


 最初にマリアの魔法で雪を温めて、壺の中を水に戻す。 うーん、やっぱり魔法って便利だなぁ。

 その中に貴薬草を入れ、壺に蓋をする。


 安全のために由彦さんには横で待機してもらい、古文書に代わる新たの文献を後に作成するために、珠江は様々な記録を行う。

 壺には温度計のプローブや、壺の蓋の裏には小さなカメラとLED照明が取り付けられ、テーブルには記録用のノートPCが置かれた。


 珠江は、その様子をカメラでも撮影している。 「はい、チーズ!」


 さあ、準備は完了だ。


 マリアには直接触れていないが、俺の上に座っているので、既に十分なエターナルが流れ込んでいるものと思う。

 さらに強く密接するように、後ろから軽く抱きしめる。


 マリアからエターナルを流し込むわよとの、合図が発せられる。

 すると、その瞬間、爆発でもしたかのように壺が強く光った!


「キャッ!」


 ちょっと想定外の事がおき、全員が驚くが、マリアはしっかりと壺を押さえていた。


「マリア、大丈夫か?」


「はぁーん。 ハァァ。

 ちょっと... 待って... ください。 深呼吸します。

 はぁー! はぁー! はぁ! わたくしは大丈夫ですが、壺の中身な大丈夫でしょうか?」


「何が起きたんだ?」


「ここは、エターナル的に言って、あまりにも環境が揃いすぎるのではないでしょうか?

 わたくしは魔力としてエターナルの流れを貴薬草付近にピンポイントに集結させて照射しました。

 そうレンズで光を集めるようにです。

 そのために強いエターナルのフィールドが壺の中に出来てしまい、中で貴薬草が高速に反応したのではないでしょうか?」


「それほどに、ここは強いエターナル流を感じるのか?」


「そうですね。 この周囲は確かに強いですが、慎二さんからのエターナルが、今日はものすごく強く感じられました。

 私も、今下半身に力が入らず、まだ震えています」


 膝の上で後ろを振り返ったマリアは、顔が上気している。

 マナ溜りを経由して、爆発的に一気に壺に流し込んでしまったようだ。


「マリア、立てるかい?」


 そう言うと、由彦さんがマリアから壺を受け取ってくれて、それをテーブルに移している。

 珠江が手を貸してくれて、マリアを引っ張って俺の上から立ち上がらせてくれた。

 これで、ようやく俺も立ち上がることが出来る。


 そして、皆で壺の蓋をそっと開ける事にした。


 蓋を取ると、中はわずかな液体となっており、壺の内側が緑色に光り輝いていた。


「多分、成功ですね」


「古文書だと、これほど早くは出来ないのですが、多分成功で間違いないでしょう。

 工場での結果と同じで、反応までの時間がずいぶん早く、そして光が強いですね。

 急いで、工場に戻ってタンクに沈めたいと思いますので、すみませんがこれにて撤収します」


 そう言うと、由彦さんはノートパソコンを大事に車に仕舞い、壺の蓋が外れて、液体が漏れないように、丁寧に梱包を始めた。

 俺たちはテーブルと椅子を片付けると撤収準備は完了だ。


 あの、観光は?

 この風光明媚な景色の中、お茶の一杯くらい飲んでいきたいのだが、由彦さんにはそんな心の余裕はないようだ。


 有無を言わさずに車は工場まで直行で戻り、由彦さんは水を汲んだタンクに壺を沈めた。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

太陽活動の異変により、電気という便利な技術が失われてしまった地球。

人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

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こちらもご支援お願いします。 亜之丸

 

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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