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1-03-07 サリーの日常

 サリーの探し物は、エリクサーを作るための薬草だったのですね。



「俺は君が求めている物がまだ何かは正しくわからない。

 君の探しているものを知る為にも、君と君のいた世界の事がまだわからないので、これからいくつか質問をさせてもらいたい」


 俺はノートPCを出すが、最初に


「今はこれが何か聞かないでほしい」


 俺はPCの表計算ソフトを立ち上げて、記録準備をする。

 名前は聞いたが、異次元の住所は意味がないな。


 聞きたいことは沢山あるが、重要なことは彼女が急いで探している物についてだ。

 しかし直接的な聞き方では泣き出してしまうので、とりあえずそれには触れずに外濠から攻めることにした。

 急がば回れだな?



「君の世界に魔法とか魔術ってあるかい?」


「魔法って?」


「アー、 翻訳ってどの程度通じるか?」


 互いの世界において、それが存在したり空想上であっても概念があったら伝わるはずだ。ただ元の言葉の持つ意味が広すぎる場合、うまく伝わらない場合がある。


「サリー、火ってわかるか?」


「熱くって、ものを焼くことができるものですか?」


 うん、俺の質問趣旨を理解して答えている。

 この娘はなかなか頭は良いようだ。



「君たちは火を使うか?」


「はい、食事や暖房、@@@@で使います」


 ん、翻訳しようが無い? これがこちらの世界に概念すらない場合か。


「では、火を使う場合、どのような方法で使っているのか?」


「大きな屋敷や町では火種と呼ばれる、火の元を常に保有しています。

 火の元は、とても硬い特別な木なので、燃えにくいのですが、一度火がつくと大抵のことでは火は消えません。

 小さな火がゆっくり燃え、指くらいの大きさの木でも2週間くらいは燃え続けています。

 よほど貧乏でない村では、主に村長が火種を管理していますので、必要なときに火種から火を分け合います。


 また軍隊やお金持ちは火が出る薬があって、それを使っています。

 それは、いくつかのポーションや薬をしみこませた布を使って火を付けるらしいですが、私は使ったことがありません。

 私の商会では、火種を持ってました」


「水はどこから、どうやって手に入れていた?」


「水は川から汲んだ水を、水売りが担いで売りにきています。

 多くの子供の仕事にもなっています」


「地面から水を組み上げる、井戸って無いのか?」


「王都の周りには大きな川がありますので、井戸っていうのは見たことがありません」


「川から、街まで水を引いてきていのか?」


「王都は城壁に囲まれているので、城壁の内側まで川は流れていません。

 王都の中まで川が流れていたら、そこから敵の侵入を許してしまいます」


 あー、敵が攻めてくる世界か。 聞かなきゃいけないことが沢山すぎて困ったなー。


『マスター、呼んだ?』

 あーと言っちゃうと、いちいち反応するらしい。



 食べ物について聴こうとして、今更だが気がついたが、


「サリー、さっきこの世界の食べ物を食べたけど、おなかは大丈夫?」


「はい、わたしも父と一緒に旅をしていたので、生水さえ飲まなければ、お腹がおかしくなる事はありませんでした。

 でも、甘い食事というのは初めて食べましたが、とても美味しかったです。

 動物の乳はなかなか飲めないのですが、私は大好きです」


「水は飲めるのだよね。

 サリーの世界では、いつ、どのようなものを食べていた?」


「私達は、食事は朝は麦と呼ばれる植物を干したものを、塩を加えて茹でて食べます。

 夜は、王都では猟師が採ってくる動物の肉がいつでも買うことができるので、それを食べることができます。

 また、麦を粉にして水で練ったものを焼いたパンと言う、ちょっと硬い食べ物を食べます。

 あと、小麦を水ですりつぶして、熱した板の上で薄く焼いたもので、他のお肉などを巻いて食べます」


「さっき君が食べたのもパンだよ」


「嘘です。私の知っているパンとは全く別のものです。

 あんなにふんわりして甘いものが小麦を焼いてできる訳がありません!

 子供の頃、商会の調理人とパンを作ってみたことがあるので私は知っています!」



 まあ話が長くなりそうなので、話題を変える。


「昼には、ご飯は食べないの?」


「明るい時間は短いです。

 時間が惜しいので、私達はお昼にはご飯を食べません。

 身分の高い方達は、家で明かりが十分に使え、夜の時間もたくさん使えるので、昼間にも食事をするようです」


 そう言われてしまうと、急いで聞くだけ聞いてしまおう。


「話し変わるが、君たちの世界で怪我や病気になった場合どうするの?」


「薬で治せる病気や怪我の場合、薬師様から薬を買います。

 王都にいらっしゃる薬師様はたくさんの薬を作ることができるのでそれを使います。

 怪我の場合や、重い病気のときは、医術士様に診ていただくこともあります」



 いろいろ聞いているうちに、サリーがモジモジし始めた。

 察しがよい俺は、とりあえずここで一旦質問を終了し、トイレについて説明をする事にした。

 言葉が伝えにくので、ちょっと直球質問とはなるが、大事なことなのでしっかりと話しておく。



「女性に失礼だが、用を足す場合の説明をしておきます。

 まずは、こっちにきて。

 ここがトイレ、もしくは便所と言います。

 この部屋では、男の人と女の人が同じトイレを使いますが、部屋から外に出ると、多くの場合は男の人と女の人のトイレは別の部屋になります。

 今度、外に出たときに説明します」


 ここで、実際にトイレの使い方を説明する。


「中に入って見るから見ていてね。

 この扉のバーをこう押し下げながら、手前に引くと扉が開きます」


 バー以外に、扉には丸いノブもあることを説明しておく。

 扉が開いた状態で、明かりのスイッチの説明。


「ここを、こう押すと明かりがつきます。

 反対側にすると、明かりが消えます。

 使うときに明かりをつけて、使い終わったら明かりを消す」


 スイッチの形にも違いがあるが、多くの場合は入り口に電気のスイッチがあることを説明する。


「電気って部屋の天井にある明るい玉のことですか?」


「そうだ。この世界では多くのものが電気という力で動いているのさ。

 あの明かりも電気で動いているから、この場で電気をつけてっていたら、電気の明かりをつけることを言います。

 さっきの洗濯機や冷蔵庫も電気の力で動いています」


「電気ってすごいものなのですね」


「そうだね。この世界では電気が重要な働きをしているね。

 次にこれは便器といい、ここに腰かけてオシッコやウンコをします」


 下手に遠慮して話すと恥ずかしいので、ここは開き直って言う。


「便器の上には、蓋と人が座る便座があります。

 男の人は、今のように全て開いた状態で、立ってここに向かってオシッコします。


 女の人や男の人も座ってする場合、この便座を前に倒してこの上に座ります。これが便座って言います。

 これがないとお尻がすっぽり便器にハマって、とってもはずかしい想いをします。

 女の人は座る前に、必ず便座を前に倒してください」


 彼女は実際に便座を倒してみている。


「座る前に、下着を全部下げて、前を向いて便座に座ってします」


 そういえば、昔の洋式便所には、便座に座る向きのイラストシールが張ってあったけど、最近は見ないな。


「用をたし終わったら、座ったままここのボタンを押します。

 このボタンを押すと便座の下から温水が出て、おしりを洗ってくれます」


「え? それってどういうことですか?」


「ボタンを押したあと、下から水が出たからといって、慌てて立ち上がると服や周りが濡れてしまいます。

 こちらの四角い印のボタンを押すと、水は止まります。

 水が出ても慌てて立ち上がらないように」


 次に、トイレットペーパーを少し手に巻き取り、


「この巻いた紙を、必要な量を取り出し、洗ったおしりの水を拭き取ります」


「あのー? さっきもとても柔らかなもの、これが紙? と言いましたが、とても高そうなものですが、私がこれを使ってもよいのでしょうか?


「いいですよ。 必要な量を引き出して、こうやって切りとって使ってください。

 少し重ねて使ったほうが良いですよ」

 水で洗うのが苦手な人は、この紙だけで拭き取る人もいます」


「慎二様はどうされるのですか?」


「俺は水で洗います。お勧めします。


 下着や洋服を戻し、最後にこのレバーを手前に引きます」


 レバーを引いてみせると


「大変! 水がこぼれます!」

 と言って驚くサリーに


「こうして、自分の出したものを水が流して、きれいに片付けてくれます。

 何か質問はありますか?」


「さっきの紙は、使った後どこにしまえば良いのですか?」


「えっ!?

 だから、一緒に水に流してください」


「ああ、どなたかが向こうで拾ってくださっているのですね」


「いや、この世界では、汚れた紙は、使ったら捨ててしまいます」


「ええ!そんな!

 私達の世界で、もしこのような紙があったら大変高価に……」


 すっかり商人の顔になっている。


「サリー、拭いた紙を絶対に取っておかないでね。 絶対にね」


 強く念を押した。



 サリーもようやく落ち着いてきたようですね。


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本作パラセルと同じ世界をテーマとした新作を投稿中です。

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人類が生き残る事の為には、至急電気に代わる新たな文明を生み出す必要がある。

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この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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