十五順目 天才桐生
「リーチ!!」
すでに第2次予選の対局は始まっていた。
桐生は最下位の4位だった。
「ロン!!」
千佳は序盤から攻勢に出て、現在の所トップであった。
だが、もう気付いていた。
桐生はエンジンがかかっていないことを、そして出方を伺っていることを。
そして2回戦目。
千佳は相変わらず、攻撃を続けた。
彼女のプレースタイルは、攻撃型を超えた【超攻撃型】であったから、さほど不思議では
ない。ノミ手【役が1つだけの手】だとしても裏ドラ狙いでリーチをかけて、場を牽制
しつつも、あがり切る。あがればそれでいいのだが、そこにドラが付くほどやっかいな
ものは無かった。
そして、桐生に親番が回ってきた。
千佳の予想だと、ここから上って来るのではないかと予見していたから
鳴いて流す気も無かった訳でもないが、今はペースを崩すときではなかった。
「さぁ・・・どうでる」
千佳は胸のドキドキを抑えることはできなかった。
だが、結果は大きく千佳を裏切った。
流局になったが、彼はテンパイすらしなかった。
それでも何故か、彼はやりきったような笑みの表情を浮かべていた。
まるで、自分が最下位である事を楽しんでいるかのようだった・・・・
3回戦目になると、彼は何故か3位になっていた。
放銃が無かったためか、原点だけで順位を上げるという事態が起こった。
千佳は背筋が凍った。そろそろ最終戦に入ろうとしているのに、彼の手の動きが見えないからだった。
彼女はもう1度考え直した『ここまで計算して、やったことだろしたらどうだろう・・・』と。
深く考えすぎていたのかもしれないと思ったが、本当のことを言えば的を獲ていた思案だった。
最後になった。
現在千佳がトップで桐生は3位。このままだと桐生は予選敗退ということになる。
だが、それは無かった。
突然桐生が動いた。
「ロン」
「混一色、一気通貫 満貫ね」
と彼はされげなく8000点取っていた。誰も対応できなかった。というか、できなかった。
そして次も彼は跳満をあがりご機嫌になった。
だがここからが『天才桐生』といわれる由縁が分かった。
オーラス。ラッキーにも桐生が親だった。
千佳はトップだったので、流す気マンマンだったが失敗。
気取られて、桐生が【三色、ドラ1】であがってしまった。
この時点で2位。
もうこの時点で桐生は予選通過を決めたも当然であったが、そんなことは彼の自尊心を傷つける。
親である事を利用し、あがりにあがった。
気が付いたら、トップである千佳との差が3000点近くまで詰め寄っていた。
だがもう遅い。彼の勢いを止める事は誰にもできなかった。
対局が終わった頃には、桐生が1位、千佳が2位になっていた。




