十一順目 感覚
東一局が始まった。
牌が卓から伸し上がってくる。
亮の配牌は良かった。運良く引きもノビ、四順目でテンパイした。
「これならいける」と亮はここでリーチをかけるか迷った。だがここは手変わりを待って流した。
対面の美人は冷たい目線で牌を見つめている。
「どうしたんだあいつ」何故か亮は不安になった。
そしてこの不安は嫌なことに適中する。
次の五順目亮は駄牌だったのでツモ切りした―
「ロン」
冷たい声が亮の目の前から突き刺さる。まるで氷が自分の身に突き刺さるような感覚になった。
対面の女、聖護院 楓だった。
「平和、ドラ2 3900」
と、高くはない点数だったが今の亮には役満以上の重みに感じられた。
それからも対局は続いたが亮は自分のペースを取り戻すことができず一回戦終わって4着。
続く、二回戦も楓のペースになり三着。このままでは予選通過もままならないという状況の
なか休憩時間に入った。
「ちょっと一服するか」と亮は外に出た。
すると横にいた男が話しかけてきた。
「一本くれねーか」
「ああ、いいぜ」
「済まないな。久しぶりだよキミから一本いただくなんざよ、一年ぶりかな」
どうやらこの男は亮と知り合いらしい。
「もうそんなに経ったか、桐生?」
「どうだかな。そうだ予選のほうはどうだ」
「イマイチだ。自分のペースが崩されてる」
「ほぅ、おまえがそんな弱音を吐くなんて滅多に無い事だぞ。雨でもふるかな」
「そういうお前はどうなんだ」
「ただ今1位だ。このままいけば予選突破・・・おっとそろそろ時間だ帰るよ」
桐生は館内へ戻ってしまった。
「俺もそろそろ戻るか」
と亮も館内に戻る途中千佳に出会った。
「お、村山じゃねーか」
「あっ、藤村さん。予選どうでした?」
「あまり良くないな。おまえは」
「私は今の所2位です」
「そうか。そのまま自分の麻雀を崩すなよ」
「はい。自分らしく打ちたいと思います」
亮はそこであることに気付いた。
―自分の麻雀か・・・そうか!自分の麻雀だ!
「そうだ、そこだったんだ!」
「どうかしましたか?」
千佳は困惑した。
「ありがとう」
「え?」
「だから、ありがとう。おまえのおかげで何とかなりそうだ」
「あっ、はい」
「それじゃーな。また」
亮は駆け足で館内へ入っていった。
「俺の麻雀、俺の麻雀だ!自分を貫け藤村亮!」
亮は何かを掴んでいた。自分でも何かよく分からない何かを掴んだのだ。
だが、これだけはいえる『もしかしたら勝てるかもしれない』と。
亮は新たな気持ちで後半戦に望む。




