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9話 敵襲

今回視点がちょっと動いたりするので理解しづらいかもしれませんが何卒ご容赦を‼︎

「輝夜一体どうしたのですか?」

「え……」

「え? ではありません。 先程から足元がふらついているではありませんか。 挙句の果てに姫様の前で粗相をしでかしそうになる始末……いつも完璧なあなたがこのような事をしでかすなど尋常な事態ではありません。 一体何があったのですか?」


朧が心配そうに輝夜を見つめる。

いつもなら嬉しいはずのそんな朧の気遣いも今の輝夜にとって彼女の心を余計に苦しめる苦痛でしかなかった。


「兄様が……兄様が全部悪いんです……‼」


輝夜の精確な一撃が朧の鳩尾を捉える。


「グハッ……」


朧はその攻撃が予想外だったのか完全に無防備の状態で一発貰っていた。

そして痛みのあまり堪らず地面にうずくまる。

ただ輝夜は止まらない。


「兄様の……兄様の阿呆……‼ 馬鹿……‼ おたんこなす……‼ 兄様なんて……兄様なんて大嫌い……‼」


これは紛れもない彼女の本音であった。

先程までは、 心があまりの痛みに麻痺をしていたが朧の言葉を聞き彼女の心は再び息を吹き返していた。

ただ彼女の心がマヒしていたのは痛みのせい……そして息を吹き返すということは当然その痛みもまたやってくるということ。

その痛みに彼女は耐えられなかったのだ。

だからこそ彼女は、 朧に嫌われるような言葉を投げかけた。

そうすれば自身の痛みが和らぐと思ったから。 朧の顔を見ていると輝夜は、 自身の胸が張り裂けそうなくらい痛かったのだ。

だからこそ一刻も早く彼の前から姿を消したかった。

けれどそんな彼女の気持ちを朧が気づいているわけがない。


「か、 輝夜一体何を……」


朧が輝夜に手を伸ばす。

いつもの彼女ならここで彼の手を迷わず取るだろう。

けれどこの時の彼女は、 違った。

パシン‼ という音が城内に鳴り響く。


「触らないでください……‼」


その音の正体は、 輝夜が朧の手を払い退ける音に他ならなかった。

輝夜は朧の手を取ることを拒んだのだ。

その事が少なからず朧に動揺を与えた。

-輝……夜……? 何故……

朧がそう疑問に思ってもその場でその問いに答えてくれるものは、 いなかった。

何せ彼女はもう既に彼の前から姿を消していたのだから……



「兄様の……馬鹿……」


輝夜が朧の前から姿を消しておおよそ半刻。

彼女のは、 乙女の住む川城城内の大庭に生えた一本の大きなサクラの木の上で一人泣いていた。

先程よりは随分冷静になっているとは言え、 彼女の心は未だ激しく乱れていた。

-私の事好きでもないのなら優しくしないで欲しかった……‼ 優しくして期待させてそこから絶望に叩き落すなんてあんまりじゃないですか……‼

輝夜は、 今まで朧の優しさに救われてきた多くある。

ただそのやさしさが今は疎ましかった。

そんな折城内に鐘の音がなり響いた。


「何……?」


輝夜は知らない。

之が敵を知らせる鐘の音であることを……



「な!? このタイミングで敵襲だと……?」


朧は、 一刻も早く輝夜を見つけなければと焦っていた。

ただそんな折敵襲を告げる鐘の音……

普段の彼ならばその音を聞いた瞬間自身の主の元にはせ参じていた。

けれど今は、 輝夜の事が気がかりであった。

今の彼女を放置すれば後々大変なことになるという予感が彼にはあったのだ。

だからこそ彼は悩む。

ー掟をとるか輝夜をとるか……自分はどちらかを選ばなければならない……しかもこのことを考えている間にも敵は、 迫ってくるばかり……なれば自分は……どうすればいいのだ教えてくれ()()……

朧は、 自らの手で殺めたかつての()()の名を無意識のうちに思い出していた。



「クッ……この女やる……」

「おい大丈夫か‼」

「問題唯のかすり傷……」

「いえ、 貴方はもう終わりです」

「グぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」


ーふぅ……まずは一人……

輝夜は、 今まさに敵に襲われていた。

川城に襲撃を掛けた国は、 白馬。

川城からほぼ真上に位置する国であり、 白馬は川城を手に入れようと今まで何度も襲撃してきたのであった。


「な!?」

「次は貴方です」

「クソ……‼」


輝夜の鉄扇が白馬の雑兵の首目掛け振るわれる。

輝夜の鉄扇には、 毒が仕込まれている。 しかもその毒は、 とても強力な物で傷口に一滴でも侵入しようものならばたちまちその者の体を腐敗させるといった恐ろしい物であった。

事実先ほど雑兵の仲間である侍の一人もそれでやられており、 今また一人彼女の手によって一つの命が奪われていた。


「この程度ですか。 これでは憂さ晴らしにもなりません」


輝夜の心は未だ乱れていた。

その為輝夜の優雅な鉄扇さばきはいつもの物とは大きく異なり、 ひどくあらあらしい物であった。

もし朧がこのような輝夜を見たら激しく激怒していたであろう。

それは偏に彼が、 輝夜の鉄扇さばきに純粋に見せられた一人であったからだ。

だからこそ今の輝夜の荒々しい鉄扇の扱いを彼は認めるわけには、 いかないのだ。


「ほう。 これはまた随分綺麗な女子が戦場におるではないか」

「何者……‼」

「我が名は、 浅間友景。 さあくノ一の嬢ちゃん。 俺と踊ろうか……‼」


ーこの男強い……‼

輝夜の予測は、 的を得ていた。 浅間友景は、 白馬の侍大将を任されている男である。

その性格は残虐非道、 それだけでも始末が悪いというのに彼は女癖が酷く、 彼に捕まった女たちは、 皆彼によって玩具の様に扱われ、 最後には殺されてきた。


「どうしたどうしたその程度か‼」

「クッ……‼」


友景の太刀筋は、 男性特有のあらあらしさが含まれているものの決して雑という分けではなく、 むしろ洗練されていた。

友景は性格こそあれではあれど剣の腕だけは、 間違いなく本物であったのだ。

事実先ほど輝夜は、防戦一方であり、 彼の太刀筋を一撃受け止めるだけで腕がジーンと痺れ、 その痺れも中々取れなかった。


「くっ……コイツ強い……‼」

「おらおらそんなもんか‼ 嬢ちゃん!」

「ぬかせ……‼」


輝夜は反撃に転じるがそれこそ友景の罠。

友景は、 輝夜の鉄扇を体をよじることによって躱し、 そのまま流れるように彼女の鉄扇をはじき飛ばした。



「しま……」

「もらった……‼」


友景の刀が輝夜に迫る。

輝夜はなんとかそれを間一髪でよけるが、 完全に回避しきれたわけではなく、 彼女の忍装束は破れ、 彼女の胸元が露わになる。


「ひっひひ……嬢ちゃんいいからだしてるじゃねぇか」

「下種が……‼」


輝夜の顔が怒りからか真紅に染まる。

ただ戦いにおいて怒りはむしろ逆効果でしかなく、 事実いつもの彼女ならこの程度のことで心を乱すことはなかった。

にもかかわらず彼女が怒りを露わにしてしまったのは、 先程の朧の言葉で未だ彼女の心が乱れているのが大きな要因であった。


「まあそう言うなよ。 後で俺の体忘れられないようにしてやるからさ」

「ふざけるな……‼」


輝夜は、 背中に指した忍び刀を用いて友景に襲い掛かるが今の怒りに捕らわれた彼女の太刀筋は非常に読みやすく、 友景に軽くあしらわれ、 鳩尾に一撃まで食らってしまう。


「ガ八ッ……‼」


ーい、 息が……できない……‼

いまだ痛みに悶え、 立ち上がることのできない輝夜に友景は、 容赦なく迫る。

 そして彼女の刀を払い退けると彼女の服を乱暴にも引きちぎった。


「くッ……殺せ……‼」

「ひっひひ。 くノ一の奴らは皆そう言うな。 だがそれはむしろ俺を興奮させるだけだっての」

「私の体に手をだしてみろその時は絶対お前を殺してやる……‼」

「やれるもんならやってみるがいい。 この人数相手にできるのならばな」

「え……?」


輝夜の表情に絶望の色が走る。

それもそのは彼の後ろにはいつの間に集まったのか彼の部下とおもわれる侍たちが十人以上集まっていたのだ。


「大将。 後で俺らにもその女くださいよ」

「そうですよ。 いつも大将ばかりずるいですよ」

「ああ? 仕方ねぇな。 俺が遊んで壊れなかったらその時はやるよ」

「大将が遊んで壊れない女性ってそんなのいた試しないじゃないですか‼」


-ああ、 私今からこいつらに犯されるんだ……

この時輝夜は、 自身の運命を悟った。

-初めては兄様とがよかったな……でも兄様が私のことそう言う目で見てくれてないし……ならもういいかな……

輝夜は、 この時目を瞑っていた。

それは偏に自身の死期を悟ったからに他ならず、 助けはこないと諦めていたからに他ならなかった。

そして友景の手が彼女に触れようとした瞬間……


「その汚い手で自分の女に触れるな下郎……‼」


彼女の頭上から朧が現れたのは。

そこからの朧の技はまさに達人技。

彼は、 愛刀月影を引き抜くと今まさに輝夜を犯そうと油断しきっている友景の腕を目にもとまらぬ速さで切り落としたのだ。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ……‼」


友景は、 自身の腕を斬られた痛みから苦痛の叫びをあげる。

だが朧はまだ止まらない。

痛みに悶える友景の首に流れるように月影を突き立てるとそのまま友景の首を容赦なく切り落としたのだ。

その間実にコンマゼロ二秒。 この場にいる誰も彼の早業に気付くものはいなかった。


「ふん。 下種が。 その程度の実力で()()の輝夜に触れようなど……自身の身の程をわきまえてから出直してこい」

「な、 なんで兄様がここに……それに自分のって……」

「何故も何もありません。 私は、 貴方の()なのです。 自分の忍の事を心配して何がいけないのですか?」

「あ、 そういう……」


輝夜はてっきり自分の事を異性として見てくれたのだとぬか喜び仕掛けたがどうやらそうではないことを悟り、 一人落胆する。

そんな彼女に朧は、 自身の怒りをぶちまける。


「それで輝夜。 貴方先ほど生きることを諦めようとしていたでしょう?」

「うっ……それは……」

「いいですか。 忍たるもの何があっても生きることを諦めてはいけません。 自信が諦めたら何もかも終わりなのですから」

「で、 でもそれは兄様が……」

「でもじゃありません。 ここで貴方は『はい』ということは認めません。 分かりましたね?」

「はい……」

「よろしい。 それでは一度姫様の元へ行きましょうか」

「え? 兄様はまだ姫様のところに行っておられなかったのですか……?」

「ええ……まあ……」

「そ、 そうなのですか……」


朧は未だ乙女の元を訪れていなかった。

そう。 朧は掟よりも輝夜を選んだのだ。

その事実が輝夜には、 堪らなく嬉しかった。

何せ朧は、 今までどのようなことよりも掟を重視してきたのだ。

それを今回は、 破った。 それ即ち彼の中では、 掟よりも輝夜の方が大事ということの証明他ならなかったのだ。

ーああ、 ダメです……脳が解けてしまいそう……

輝夜の表情は頬が上気し、 息も激しく乱れ、 瞳は焦点があっていないのか完全に落ちていた。

そう。 この時彼女は、 朧に対して欲情していたのだ。

 そしてそれと同時に心境の変化も訪れていた。

ー私はもう兄様の事を諦めません……兄様が例え今は私の事を女として見てくれなくても……いつか絶対篭絡させて見せます……そのためには手段は選びません……覚悟してくださいね兄様……?

戦の真っただ中にも関わらず、 輝夜の思考には、 今後朧をどう落とし、 自分に依存させていくかしか考えられなかった。

朧は彼女がそのような恐ろしい事を考えているとは、 露にも考えてはおらず、 ただただ彼女の身を案じるばかりであった。

物語の補足をまたまた一つ。 今回は輝夜の事についてなのですが輝夜は、 本来ならこのような事を考える女性ではありません。では何故このようになってしまったのか? その辺りのこと考察しながら読んで頂けるとより物語を楽しめると思います。

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