14話 接吻
累計pv5000突破しました‼︎
これも読者の皆々様のおかげです‼︎
本当にありがとうございます‼︎
「全く私に逆らうからこうなるんですよ……」
咲夜は朧の首元を乱暴につかみながらどこか呆れた様子でそう言った。
朧が咲夜相手に稼げた時間はおおよそ十分。 その間朧は、 自身のモテうる限りの技術をもって咲夜に相対した。
だがそんな彼に技は、 輝夜にまるで通じなかった。
咲夜相手に通じなかったのは技だけではない。 朧は咲夜との相対の際数多くの策を実行したのだがその策の唯の一つも彼女に通じず、 彼女は正面から彼の作戦を全て叩き潰したのだ。
この事に朧は少なからず動揺し、 それが朧の敗因となった。
「それにしてもまさか朧様がここまで強くなっているとは、 少々予想外でした」
咲夜は、 朧の策を正面から力でねじ伏せているものの朧の実力には、 目を見張るものがあった。
咲夜と十分以上斬り合うことのできた者は、 今まで彼女の祖父であり、 最強の忍と名高い一影だけなのである。
-ふふふ。 之が弟子の成長を喜ぶ師匠の気持ちなのですね
咲夜は、 自身の愛弟子の目覚ましい成長が素直に嬉しかった。
けれど一つ不満もある。 それは、 朧の力が振るわれた理由にあり、 朧は輝夜を咲夜から守るために力をふるったのだ。 輝夜はまだ子供とは言え異性に違いない。 その事が咲夜の乙女心を著しく傷つけたのだ。
咲夜とて乙女である。 当然好きな異性からは守られたいという欲望がある。
朧を日々鍛え上げているのもいつか自分を超え、 自分の事をどんな脅威からも守れるほどの力を身に着けて欲しいというのが彼女の思惑の一つでもある。
ただその力も今回は、 咲夜に刃向かうために振るわれた。
その事が咲夜が気にいらなかった。
そして何より自分以外の異性に夢中になっている朧を見ているのが咲夜には耐えられなかったのだ。
輝夜が自分より遥かに年下であり、 朧が輝夜の事を子供にしか思っていないのは、 朧の事を全て知っていると自負している咲夜とて理解している。
だがそれでも納得いかないものは、 納得いかないのだ。
乙女心は大変複雑なのである。
「はぁ……まさかこの私がこのような俗っぽいことで悩む日が来ようとは……」
咲夜は、 自身を大きく変えた朧の事を少々恨めし気に見る。
ーもう……人の気も知らず気持ちよさそうに寝られて……
朧は未だ気絶しており、 そんな彼が輝夜の恨めしそうな視線に気付くわけもなかった。
そんな折輝夜の脳裏で一つの邪ともとれる考えが思い浮かぶ。
「今の状況もしかしたら朧様と接吻できたりするのでしょうか……?」
咲夜は未だ朧と口づけをしたことがなかった。
それどころか手をちないだ事すらもなく、 自身が朧の事を一人の男性として愛しているという事実も伝えていなかった。
それは偏に彼女は、 朧から拒絶されるのが怖いからであった。
もし自身が告白して朧に振られてしまったら彼女は、 自身の正気を保つ保証が持てなかったのだ。
だからこそ彼女は今の今まで自信の気持ちを心の奥底に秘めてきた。
そしてその秘められてきた気持ちが今まさに暴走しそうであった。
彼女は、 今気絶している朧にならば自身が口づけをしてもばれないと思ったのだ。
「朧様? 起きてますか?」
彼女は朧にそう声を掛けるが朧からの返事は、 やはりなかった。
-どうやら朧様は未だ気絶しているようですね。 ならば大丈夫……ですよね? ええ、 きっと大丈夫です……‼
咲夜の形のよい肉厚な唇がゆっくりと朧の唇へと近づいていく。
ーああ、 本当に大丈夫なのでしょうか……‼ もしここでバレてしまったら……でもしないのも……
咲夜の心臓は、 朧に自身の気持ちがバレてしまうかもしれないという緊張感からか激しく鼓動していた。
「ん……んっ……」
ただその心配は結局は、 彼女の一人相撲であり、 朧は咲夜にキスをされても尚目を覚ますことはなかった。
けれどその様な事今の咲夜には、 どうでもよかった。
ーああ、 遂にしてしまいました……///
咲夜は、 朧とのファーストキスの余韻に存分に浸っていたのだ。
彼女は、 この瞬間をかねてから望んでいた。
その思いがまさに叶った瞬間の彼女の表情は、 乱れに乱れきり、 脳からは大量のアドレナリンがあふれ出ていた。
「ああ……ダメ……ああ……‼ ああああああああああああああああああああ……‼」
快楽に落ちた彼女の表情は、 一人の男を知ったメスの顔。
口元はだらしなく緩み、 涎も垂れていた。
頬は激しく上気し、 体はまるで火に焼かれた様に熱かった。
瞳も快楽によるものか焦点が全くあっておらず、 そのせいか彼女の理性という名のリミッターは完全に外れてしまっていた。
-もっと欲しい……もっと朧様を感じていたい……‼ もっと繋がっていたい……‼
彼女の手が朧へと触れ、 彼の服を今にも脱がそうとしていた。
「ん……ここは……咲夜……?」
そんな折朧は目を覚ます。
そして彼は、 目撃してしまった。
今まさにだらしなく緩み切り、 快楽に落ちた咲夜のメスとしての顔を……
-な、 何がどうなってこうなった……‼
当然朧はその事に困惑する。
けれどそんな朧の心を読めていないのか咲夜は、 未だ止まらない。
「ねぇ朧様……もっと気持ちいいこと……しましょう……?」
咲夜はそう言いながら強引に朧の唇を自身の唇で塞ぐ。
「んん……!?????」
朧はいきなり何をされたのかわからず堪らず声を上げようとするがそんな朧の口に咲夜の舌が入り、 朧の舌に絡ませてくる。
-な、 何が起きている……!???? 咲夜は僕に何をしているんだ……?
朧の脳内で混乱が加速する。
咲夜はそんな朧をお構いなしと自分の欲望を着々と満たしていく。
「んっ………朧様……んっ……///」
-ああ、 もう何も考えられない……///
その言葉の通り咲夜は、 この時自身が何をしているのか何も考えておらず、 ただ自身の欲望を満たすためだけに行動していた。
その行動は、 普段から考えて物事を行う咲夜らしからぬ行動であり、 まさに今の彼女は何者かに憑かれたかのように朧を求め、 貪った。
「ごめんなさい……」
咲夜が気絶した朧を襲ってからおよそ半刻。
彼女は完全に理性を取り戻しており、 今まさに自身の行った行為を恥じていた。
ーああ、 何故私はあのようなはしたないことを……‼ しかも朧様も起きていらっしゃったのに……‼
この事で咲夜の好意が朧に伝わったのは、 明らかであった。
「そう謝らないで咲夜」
「ですが私は先程朧様にあ、 あのようなはしたない事を……///」
「あははは……まあ流石にあれには少しビックリしたかな……」
「うう……」
この時の咲夜は、 穴があったら入りたかった。
そして可能ならばそのまま死にたいと思ってしまうほど追い詰められていた。
「ねぇ咲夜。 一つ聞かせてもらってもいい?」
「はい……なんでしょうか……?」
「咲夜はその……僕の事……好きなの……? それともただ単にああいうことに興味があっただけ……?」
「そんなの決まっているじゃないですか‼ 私は朧様の事を好いているんです‼ でなければあのような……あのような破廉恥な真似……出来るわけがありません……///」
「そ、 そっか……」
朧はこの事実に大きな衝撃を受けていた。
朧は今の今まで咲夜の事を友人として見てこなかった。 いや、 見ないようにしてきた。
それは偏に彼女が美しいから。彼女と自分とでは釣り合わない。
だからこそ輝夜が自分の事を一人の男性として見てくれているなどと考えないようにしてきたのだ。
ただ事実は違った。 咲夜は昔から朧の事を一人の男性として見てくれていたのだ。
その事が朧には、 堪らなく嬉しかった。
けれどその事を彼は、 直接彼女に口にしない。 いや、 出来なかった。
彼は、 素直に好意を伝えるのはとても苦手な人間であり、 だからこそ言葉にするのが恥ずかしかったのだ。
だからこそ咲夜の気持ちを知っても尚彼は、 言葉にしない。
けれど心を読める咲夜は、 朧から口にしてもらう必要はなく、 彼が自身の事を一人の女性として受け入れてくれたことを知り、喜びに打ち震える。
「……///」
「ええと、 咲夜もしかして僕の心呼んだ……?」
「はい……///」
「あはは……そっか……」
「朧様」
「何だい?」
「これから私の事一杯可愛がってくださいね……///」
「あははは……」
咲夜のその言葉に朧は、 ただただ苦笑する他なかった。




