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13話 炎

最近体調を崩してましてそのせいで投稿が結構遅れてしまいました申し訳ありません。

今もまだ少し体調が悪いため次回の投稿も少し空いてしまうかもしれませんが何卒ご容赦ください。

時は、 再び進み朧が咲夜と出会ってから八年が過ぎていた。

この勘朧は咲夜との鍛錬をただの一日を欠かすこともなく通っており、 咲夜もまた朧に自身の持ちうる技術を全てを叩き込んだ。

咲夜の訓練は尋常ではないほど厳しい物であった。

剣との訓練も訓練用の木刀を使うのではなく、 真剣を用いており、 それ以外のメニューに関しても朧は日々命の危険に晒されていた。

そんな事をしているのだ。 当然朧の体に生傷は絶えなかった。

ただ朧はその様な苛烈な状況に置かれているにも関わらず、 唯の一度も咲夜との鍛錬を止めたいと思ったことはなかった。

それは咲夜の気持ちがとても真剣であり、 本気で自身の事を鍛え上げようとしてくれているのを朧自身理解しているのもあったがそれよりも朧は、 強くなって周りの人間を見返したかったのだ。

そして咲夜の過酷な訓練の甲斐もあり、 この頃のの朧の実力は里の中でもかなりの物となっており、 忍具が一切使えないにも関わらず同年代の者達の中では、 最上位の腕前を誇っていた。

そんな朧の事を当然里の者も見る目を変える。

一番変わったのは彼の両親であった。

最初は朧の事を冷たく扱っていたのにも関わらず、 今では自慢の息子の様に彼を扱うのだ。

当然朧はこの事実に困惑した。

何せ今の今まで彼は、 実の両親から冷たい扱いを受けてきたのだ。

突然その様な扱いをされても困惑しないわけない。

しかも彼の中にある感情は困惑だけではなかった。

彼の中には、 両親への憎しみの炎が灯っていたのだ。

彼の両親は彼がいじめられている時一切救いの手を差し伸べなかったのだ。

それは幼い朧に少なくない絶望を抱かせた。

そして未だ子供である朧が自身をそのように扱った相手を自身の親といえど許せるわけがなかった。

けれど彼がその怒りの炎を爆発させることは唯の一度もなかった。

それは偏に彼が自身の両親を糾弾することによって彼の家族が壊れてしまうのではないかと考えたからだ。

彼には、 自身より二歳年下の妹と五歳下の弟がいる。

彼の姉弟は、 自身の両親の事をとても尊敬しており、 そのせいか朧の事をあまりよくは思っていなかった。

ただ彼らが直接朧に嫌がらせをしてきたことは唯の一度もなく、 幼少期の朧は彼らの幼いころ少なからず面倒を見ていたこともあり、 彼らの事を大事に思い、 また家族として深く愛していた。

だからこそそんな二人の前で両親の事を辱めるような行いをしたくはなかったのだ。

そして彼は、 日々怒りを募らせながらも懸命に我慢し続けた。 全ては家族の為にと……

この八年の間で変わったことはこれだけではない。

咲夜の妹である輝夜も六年前に生まれ、 この頃には六歳になっていた。

忍は、 里の掟により三歳の頃から鍛錬が始まる。

その為輝夜もこの年から忍としての鍛錬が始まり、 そんな彼女の指導役を任命されたのが朧である。

彼が選ばれた理由……それは一影が直々に彼に依頼したのであった。

一影が朧を指名した理由は、 偏に彼が里の中のどんなものよりも我慢強いということを知っていたからだ。

忍に置いて我慢することというのは、 かなり重要なことである。

何せ忍の名の由来は、 耐え忍ぶものの事を指しているのだから。

一影は、 朧の中に眠る両親への怒りの炎を見抜いていたのだ。

そしてそれを日々我慢し、 苦悩していることも。 だからこそ一影はこう考えた。

今にも怒りに捕らわれそうな朧に子供の無邪気さをふれさせてやれば彼の怒りの炎も和らぐのではないか? あわよくば彼の我慢強さを自分の孫娘が学んでくれるのではないか? と……

そんな一影の願いは、 身を結ぶ。

朧は、 輝夜に指導している内にだんだん自身の中で眠る怒りがだんだん和らいでいくのを感じ、 いつしか両親の事について深く考えなくなっていった。

また輝夜の凄まじい才能に朧が魅せられ始めていたのも彼の怒りが和らいでいった要因の一つである。

輝夜は朧が一週間かけて覚えた技をおよそ一日で習得してしまうことができたのだ。

その事に朧は、 輝夜の才能の恐ろしさに驚愕しつつも何より自分が教えた技をどんどん吸収していってくれることが嬉しかった。


「凄いな輝夜は……僕が習得するのに一か月もかかった技を立った一週間で覚えてしまうなんて」

「ふふん‼ 当然です‼ なんたって私は、 おじいさまの孫なのですから‼」


この頃の輝夜は、 少々傲慢な気質が見て取れた。

ーふふふ……やっぱり姉妹なんだな

ただそれは彼の姉にも共通した気質であり、 そんな様子を見て朧は内心笑みを浮かべる。

咲夜は、 昔から自身に対して絶大なる自信を持っている。

それは偏に彼女が鬼才であるから。

事実十三歳になった彼女に勝てる者は、 里の中で誰一人といなくなっていった。

その事が余計彼女の孤独を加速させる。

咲夜は、 その事について全く気にしていないのだが朧は違った。

そんな孤独な彼女だからこそ自分だけは、 味方でいてやらなくてはいけないと思ったのだ。

そんな朧の気持ちを咲夜は、 素直に嬉しく思った。

そして彼女は次第に朧に依存していった。

具体的に言うならば彼らはほぼ四六時中一緒にいたのだ。

 彼らが別れるのは、 朧が輝夜を鍛えている時と夜だけであり、 それ以外の時間はずっと一緒にいたのだ。

その事に里の者達は、 朧に彼女に近づかないよう言うが元々里の者が好きではない朧が言うこと聞くわけがなく、 むしろそんな扱いをする里の者達への嫌悪感をさらに募らせていった。


「朧様。 輝夜との鍛錬は終わりましたか?」

「ああ、 咲夜」


十三歳になった咲夜は、 五歳のころとは比べ物にならないほど大人の女性として色っぽくなっていた。

それは彼女が今まさに成長期を迎え、 胸などが子供の頃に比べて成長してきているのもあったが彼女がここまで色っぽくなった理由は、 彼女が()を知ったからに他ならなかった。

咲夜は、 朧とおおよそ八年間訓練を続け彼の人となりというものを完全に理解していた。

その最中咲夜は、 朧が自身の事を本気で信頼し、 自身の身を案じくれていることを知ったのだ。

その事実咲夜の体をまるで毒の様に次第に犯していき、 やがて咲夜は、 朧から離れられなくなっていた。

無論はなれられなければならないときがあるのだがその間の彼女の精神的な荒ぶりようはすさまじく、 正常な精神状態とはとてもじゃないが言えなかった。

だからこそ咲夜は朧から捨てられまいと日々自身の美貌をより磨くため努力するようになり、 その結果年齢以上の色っぽさを手に入れたのだ。

ただ当の朧の反応は、 昔とあまり変わっておらず、 その事が少なからず咲夜に不満を抱かせていた。


「すみません。 本当ならばあと五分はあったと思うのですけど我慢できなくて来てしまいました……///」

「ははは……」


咲夜は、 少々恥じらいを込めて様子でそういう。

これはその方が男受けが良いと彼女なりに導き出した結論なのだが彼女の意中の相手である朧の反応は、 彼女の望むものとは真反対の苦い物であった。

ーそんなに僕の事を虐めたかったのかな……?

朧と咲夜の鍛錬はいつも輝夜との鍛錬との後に行われる。

そして咲夜との鍛錬で朧はいつも徹底的にしごかれていた。

だからこそ朧は、 咲夜が我慢できなくなったと聞き、 その部分を自身を虐めたくてたまらないという風に捉えたのだ。

無論咲夜が言った意味合いは全く異なる。

そして自分の気持ちが全く伝わっていない事に咲夜は、 ため息をつかずにはいられなかった。


「はぁ……朧様は本当に馬鹿ですね……」

「はい……?」

「なんでもありません。 では行きましょうか」

「え、 ちょ、 ま……」

「ダメェェェェ‼」


突如あげられる絶叫。

その声の主は、 輝夜であった。

この事に朧は少なからず驚く。

何せ輝夜は今まさに朧の体に抱き着き、 朧の事を咲夜にとられまいとしていたのだ。


「か、 輝夜……?」

「まだ私と兄様の訓練は終わってないの……‼ だからまだダメ……‼」


輝夜はそう言いながら咲夜の事を激しく威嚇していた。

-これは少しまずいかも……

咲夜と輝夜の姉妹仲は、 あまりよいとは言えなかった。

それは偏に輝夜が咲夜に対していつも怯えていたから。

そして咲夜もまたそんな輝夜に対し全く興味も抱いていなかった。

けれどその認識も彼女が歯向かう意志を見せた事によって変わる。


「へぇ……輝夜。 私に逆らうとは中々いい度胸していますねぇ……」

「ふしゅぅ……‼」

「朧様。 予定変更です。 今からこの愚妹に()()()をしなければならなくなったのでもう少し待ってていただけますか?」


そういう咲夜の顔は、 満面の笑みであった。

ただし笑っているのは顔だけであり、 目はまるで笑っておらず、 激しい怒りの炎が垣間見れた。

朧もそれを察したからこそ必死に咲夜を止めようとする。


「咲夜いけません‼ 相手は子供です‼」

「ええ……分かっています。 ええ、 分かっていますとも……‼」

「そう言いながら刀を取り出しているではありませんか……‼」


こうなった咲夜を止められるものは誰もいない。


「輝夜早くにげてください‼ ここは僕が時間を稼ぎますから貴方は頭領のところに」

「う、 うん……‼」


朧の鬼気迫る表情に輝夜は頷くしかなかった。


「逃がしません……‼」


ただ咲夜は輝夜を逃がすまいと彼女の頭部目掛け手裏剣が飛んでいく。


「やらせはしないい……‼」


ただしそれは朧の手によって見事撃ち落とされる。

そして朧は、 咲夜の前に立ちはだかるようにして刀を構えた。


「朧様どいてください」

「無理です。 だってもし僕がここをどいたら咲夜は、 輝夜を傷つけるでしょう?」

「いいえ。 そんな事しませんただしつけをするだけです」

「嘘ですね。 貴方と私が一体何年の付き合いだと思っているのですか?」

「ふふふ……私の事よく知ってくださっていて嬉しいです……でもそこまで知っておいて私に逆らうのは、 やはり朧様は馬鹿なのではないのですか……?」

「そうかもしれませんね。 でも僕としても意地があります。 ですのでここで咲夜にはしばらく足止めを喰らってもらいます」

「そうですか……いいでしょう。 ならば先に朧様からしつけて差し上げます」


輝夜の眼が妖艶に輝く。

ーああ、 僕死んだかも……

彼女の怒りに燃える瞳を見て朧はそう思わずにはいられなかった。

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