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第五十九話 名乗り

「北から侵攻?」


「はい、魔人を将とした魔物による軍行動が確認されました。

 開発中の新市街へと向かっています」


「数はどれくらい?」


「1000から1200といったところです」


 カイの報告を受けながら、皆でどうするかを議論する。

 防衛拠点を作って受け止めるか、平地で野戦で迎え撃つか……


「安全策を持ってすれば防衛拠点だけど……」


「今から突貫で作ったとしても大したものは……」


「あら、私がいるのを忘れてるのかしら?」


 ドライアドさんが頼もしく見える。


「なんとかできるのか?」


「もちろん! このあたりで良いわよね?」


 計画地よりも少し離れた平原、すでに魔植物も排除している見渡しのいい場所だ。


「敵到達まではどれくらい?」


「夜間も進んで、2日ほど」


「すぐに動こう、ドライアド、頼む」


「タスクも手伝ってね」


「もちろんだ、本国にも連絡してくれ、俺らが受け止めて、可能だったら背後を突いて欲しい」


「わかりました」


「私達は装備を運ぶわね、パーシェ達にも応援を頼むわ」


「助かる。武器は……カフェ、総力戦でいいぞ、出し惜しみはなしだ」


「わかったわ」


「よし、皆、勝つぞ!」


「おーーーー!!」


 ……なんか普通に戦争してるな、俺。





「さて、ここでいいわよね?」


「ああ」


「それじゃあ、お願いね」


 ドライアドは青々とした草原に降り立つと、目をつぶり両手を空に広げた。

 俺はその背に手を当ててマナを送り込む。


「大地よ、我が声に答えて……」


 ドライアドの足元から木々が伸びていく、絡み合い伸びる木々によって壁が作られ、どんどんと建物のように変化していく……


「ふぅ……こんな感じかな?」


 あっという間に防壁を備えた砦が完成した。

 その後、防壁の手前に土堀を魔法で作り上げ、その底には鋭い木の杭が設置される。

 数時間で、立派な防衛拠点が完成した。


「すごいな……街もこれで作れば……」


「だめよ、マナを使い尽くしたら枯れちゃうから、1週間位しか持たないわよ。

 その代わり普通の木々よりも固いし燃えたりもしないわ」


「それはすごいな」


「ほんとうにすごいわね……さ、私達も仕事するわよ!」


 カフェの部下たちが防壁の上部に連弩や投石装置を運び込んで組み上げていく。

 俺とドライアドは土堀の強化と範囲を増やしていく。

 敵の進行方向から想定した戦場に先に到着しているメリットは計り知れない。

 いろんな罠も作っておく。


「タスクって動物のお医者さんなのよね? なんでこんなこと思いつくの?」


「いや、シミュレーションゲームって言って、なんていうか遊びで戦争をする的な?

 そういうのとか漫画とかの知識だよ」


「平和な国って思ってたけど、結構怖いのね……」


 ドライアドの力で毒液の落とし穴や酸液の落とし穴を作って欲しいって言われたら散々な言われようだった。


 それから戦場に馬防柵をいくつか作ってもらって配置しおく。

 魔物に対しては、とにかく足止めして、上から撃つ。

 それで対処できるだけ対処して、魔人は俺が相手をする。

 そういう計画だ。

 夜通しの準備のおかげで、かなり立派な防衛拠点が構築できた。

 うーん、魔法って本当に便利だ。

 

「敵、森を抜けます!」


 遠くに広がる魔植物の森、そこから魔物が大量に溢れてくる。

 その戦闘には巨大な馬のような魔物の背に乗る魔人。

 突然開けた平原に魔物たちの移動速度を落とさせるぐらいの知恵は有るようだ。

 そのまま突っ込んでくれたらたくさんの罠がお待ちかねしていたのに……


「魔人様がなんの御用ですかね!?」


 魔法で拡張した声で問いかけてみる。ちょっと挑発もかねている。


「貴様ら、人間に、獣人だと?

 何が起きている……」


 魔人はなんていうか、細マッチョ。

 筋肉つくんだ……ガリガリの個体しかいないのかと思った……

 身体は相変わらず真っ青だけど、うん、なかなかいい体をしている。 

 

「陰気なあんたら好みのジメジメとした土地は性に合わないんで、現在絶賛改造中なんだ。

 とっとと森へ帰ってくれないか? そのうちそこもさっぱりさせてやるからさ!」


「人間ごときが生意気な……踏み潰してくれる!」


 挑発に簡単に乗ってくれるのはありがたい。


「照らせ!!」


 こっちはたくさん策を用意しているんだ!

 まずは陽光の輝きの照射だ。

 魔物への牽制もそうだが、これで敵は逆光での戦いを余儀なくされ、足元の罠や馬防柵への対応が鈍くなる。

 案の定落とし穴へと消えていく魔物も出てくる。


「卑怯な! 小賢しい!!」


 巨大な火球を作りこちらの拠点に放ってくる魔人。

 俺も戦闘状態に入って、その火球を叩き割る。


「相手してやるよ、かかってこい!」


「舐めるな!!」


 空高く飛び上がり、予定通り俺と魔人の一騎打ちとなる。

 仲間たちが容赦のない矢を魔物たちの軍へと放ち始める。

 正直、ドライアド、カフェ、カイが率いているし、魔物の侵攻はもう心配ないだろう。

 俺は目の前の敵を倒すことだけに集中する。


「不快な力だ!!」


「褒めてくれてありがとよ!」


 以前の大陸の魔人と比べると、魔力もそして動きが違う。

 別次元だ。

 魔人化したパーシェも強かったが、この魔人はそれ以上だ。

 容赦のない嵐のような魔法が降り注ぎ、なんとか間合いに入っても魔力を込めた一撃で反撃してくる。


「魔人は近接はできないのかと思ったぜ!」


「舐めるな人間!! この地で力を蓄えた魔人の力、見せてやる!!」


 下で討たれた魔物から、魔素が沸き立ち魔人に吸い込まれていく……

 ミシミシと音を立て、魔人の身体が肥大し、まるで鬼のような角が額より伸びてくる。


「魔人ガラサッド様の餌となれ、人間ども!!」


 強大な魔素のオーラが魔人の身体にまとわりついている……


「こりゃ、ヤバそうだ……」


 頬に当たる風がびりびりと震えている。

 俺は、帯を締め直した……


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