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第五十三話 事情

全話四十二話にて、ドライアドに下水侵入前に待機してもらう記述を追加しました。

ドライアドさんは外で待ってる状態からのスタートです。

「街の人を殺すのかー?」


「いや、そんなことはしない。

 ただ、魔素にやられている人々は浄化する」


「魔素ー?」


「その身を包んでいる物もそうだし、町中にも漂っている。

 この国全体にもはびこっている。

 人間には有害だ」


「……でもー、これのおかげでーなんとかー生きていられるんだぞー」


「そうだ、それがおかしい。

 あんたは、人間だと言ったが、俺からは魔人のように見える」


「魔法を使えるとー魔人なのかー?」


「いや、違う。

 一応俺も魔法を使える。

 マナを魔素に変える、魔人がもたらした魔法を使い続けると、魔素が溜まり穢れる。

 俺たちは魔素をマナに変え、マナを闘気に変えマナを増やしている」


 俺は小さな火球を作り出してみせる。


「君のー炎は色が違うー、僕のは、こうだー」


 真っ黒な炎の球が現れる。

 そして、周囲に魔素が溢れる。


「……魔素を使って、魔法を使うと魔素が増大する……闘気の魔素バージョンか……」


「これでー、街の皆をー長い間守ってきたー……邪魔するならー……

 あの人と同じくー、眠ってもらうー……」


「もっと健全な方法で街を守る手段を俺は持っている」


「信じられないー……この力で、この死んだ大地で食物も得られるようになったー……

 君たちはー……危険だな」


 黒炎が激しく燃え上がる。


「獣人達の未来のためにも、やはりお前は倒さなければ行けないようだ」


「……獣人、この力で作った食事では満たされない……

 でも、仕方ない……街の人を守らないと……

 君たちは、危険!」


 ゴウッと火炎が室内を満たす。

 魔素が溢れ出す。

 白衣が必死になって魔素をマナに変えてくれているが、完全に勢いは相手が上だ。


「タスク様、服の限界が近いです……」


「まずいな」


 炎を避けながら非常にまずい状態であることを確認する。

 魔石に封じたマナの残量が少ない。

 この場で防護服がなくなれば、濃厚な魔素の中での戦闘になり、敵に比べ、圧倒的に不利になる。

 

「マナを作ってもすぐに魔素に飲み込まれてしまう……

 もっと、白衣が頑張ってくれないと……」


 俺は自分の発言に、ハッとした。

 過去、師匠に言われた言葉を思い出した。


「バカヤロウ!! 道具のせいにすんな!

 道具はすげーんだよ、それが思い通りに動かねーなら、テメーの腕が悪いんだ!

 道具のせいにすんな! 未熟者が!!」


 いつもいつも白衣だより、俺はただそれを享受するだけ、そして、状況が悪くなれば白衣のせいにして……俺は、何も成長していない……


 ゴンっ


 俺は拳で自分の顔を殴りつけた。

 師匠からもよくげんこつを喰らってたな。


「悪いな、完全に頭が茹だっていた」


 敵の魔法は魔素に任せた大火力で弾幕のように俺たちに降り注ぎ続けている。

 こちらの魔法はマナ不足で出力が出ない。


「相棒、俺の身体の全てをお前に預ける。

 お前の能力を、信じるぜ!」


 目の前に迫った炎を空手の廻し受けで受け流し、丹田に力を込め、呼吸する。

 

「コオオオオオオオオオオォォォォォォォ……」


 全身で白衣とのつながりを意識する。

 僅かなマナを吸い込み、満たし、燃えあげる。

 白衣がポケットだけでなく、全体を使って周囲の魔素を吸い上げていくのがわかる。

 作られていくマナをすぐに吐き出さず、体内にため、俺の全身の経絡を通して回していく。

 円をめぐるマナは、どんどんと増幅していく。

 獣人ほどではないが、闘気を練り上げていく。

 丹田が燃え上がるように熱くなっていく。

 降り注ぐ敵の魔法を八相の構えで受け、捌く。


「オオオオオオオォォォォォォォ!!」


 白衣が輝き、姿を変える。


「押忍!!」


 震脚、大地を踏みしめ、自らの身体に大樹が根吹く。

 

「フンっ!!」


 丹田に溜めた気を一気に開放する!


「せいりゃぁああ!!」


 中段突き、全ての気をそこに乗せる。

 まるで魔法で起こした風の塊が部屋の壁、天井などを吹き飛ばしていく。


「……なーにが、起きたんだー?」


 慣れ親しんだ空手着に身を包み。

 敵に向かって構え直す。


「すまんな、少し、ぬるま湯に浸かってた。

 これからは少しはまともに相手出来ると思うぞ」


 周囲の空気も一変している。

 魔素とマナが拮抗し始めている。


「とんでもなーく、危険!」


 それでも街中から流れ込む魔素を利用して強大な魔法をポンポンと放ってくる。

 

「もう、怖くない……」


 道着に身を包み、心を正し、魔法でさえも受け流し、マナの塊を魔人に叩きつける。

 スライムのように身体を覆っているものは、魔素が物質化したような物で、大量のマナとぶつかり合って飛び散っていく。

 騒ぎを聞き付けて敵兵も集まってきているが、カフェたちが上手くあしらってくれている。


「カイ、カフェ達を手伝ってくれ!」


「くっ……すみません。わかりました、ご武運を」


 カイもよく頑張っていたが、魔法を避けるのでいっぱいいっぱいで攻撃に転じることは出来ずにいた。

 魔法を手で受けて捌くなんて無茶なこと、以前の俺もやる気にはならない。

 今、この道着が居てくれるからなし得ている。

 

「タスク、手伝う?」


 騒ぎを見てドライアドが合流してくれた。

 

「カイとカフェをフォローしてくれ、こいつは俺がやる!」


「わかったわ、気をつけて!」


 これであっちは大丈夫だろう。


「さて、いい加減まとってるものも少なくなってきたな、一息に終わらせてもらう」


「どうしてよー、街の人を守ってるだけなのにー!」


「だから方法が悪いって、言っているだろ!!」


 迫る氷の塊を上段蹴りで破壊し、一気に懐に入り込む。

 手刀、回し蹴り、上段回し受けからの中段突き、気の籠もった一撃で、スライムが完全に飛び散っていく。


「止めてよー!」


「眠ってろ!」


 ようやく顕になった腹部に一撃を喰らわせる。

 こうして、ようやく魔法の嵐が収まり、それと同時に、周囲から急激に魔素が薄まっていく。

 魔人が集めていた魔素の流れが、停止したのだった……




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― 新着の感想 ―
[一言] これは話し合いの余地ありのかほり・・・!
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