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第三十八話 人数は力

「……ふむ……」


 目の前に広がっている光景を整理してみる。

 右にドライアド、左にカフェ。

 二人共、一糸まとわぬ姿で俺に寄り添い、俺は、腕枕をしている。

 どこの皇帝か王様だ?

 それぞれ、感触が異なるが、共に、なんとも心地よいなぁ……

 いやいや、今はそういうことじゃない……

 ゆっくりと昨日のことを思い出す。


 そうそう、幸せな光景を見て、ちょっと感動して、二人を抱きしめて、そのまま調子に乗って飲みまくって……

 ああ、そうだ、相撲大会が始まったから一緒になって混ざって……

 一汗かいて気分が良くなって戻ったら、二人がやけにお酒を勧めてきて……

 気分が良かったから、たまには酔うかぁって調子に乗って……

 あれ? そこから……記憶が……


「タスク……起きてたの……? 

 もう、昨日あんなに激しかったのに、元気ね」


「ふにゅ、おはようタスク……

 昨日は、ありがとうございます。

 これからもよろしくね」


 二人は起きると、なかなかに刺激的なことを言ってくる……

 よくある勘違い系のセリフだろ、俺は知ってるんだ……


「ああ、おはよう二人共。

 昨日は幸せな一日だった。

 これからもよろしく頼む」


「はい、旦那様」


「はい、あなた」


 !?


 冷静になるんだ。

 まだ、慌てるような時間じゃない。

 おいおい、仙人機能、今日は全然働いていないじゃないか、感情ぐわんぐわんだぞ。


「……旦那様、一応お話しますが、世俗に塗れると堕ちますよ?」


「まさか、昨日のこと覚えてないのかタスク!」


「い、いや、その……」


「まぁ、良いじゃないカフェ。

 今日からはたっぷりとご奉仕できるんだし」


「にゃにゃ、ま、まだドライアドほど上手くないけど……

 頑張る!」


「お、お手柔らかに……」


 どうやら、そういうことらしい……


 結局、俺は性欲によって人間らしさを取り戻してしまった。

 いや、いいんだ。

 無限に生きたいわけでもないし、獣人たちと心を動かしながら一生懸命生きたい。

 そして、守るべき存在が出来たことが、自分にとってはストンと腑に落ちた。


「なんにせよ、俺も男だ。

 二人の幸せのために頑張るよ……」


 人は守るべき存在が有れば強くなる。

 今までも動物や獣人のために戦ってきたが、これからは、愛する二人のために頑張れる気がする……


「ところで、重婚ってありなの?」


「私は精霊ですよ、そんな細かなことを気にしません」


「獣人では当たり前だぞ。強いオスは複数のメスを囲う。

 人間もそうだと聞いているぞ」


「そうか……」


 ……何の記憶もなく、チェリー喪失とか……ちょっと、哀しかったのは内緒だ。


(後々わかるのだが、これ、ドライアドとカフェが共謀して担がれただけだった……)


 獣人たちは、自分たちの生活のため、そして獣人が安心して暮らせる場所を作るために一生懸命働いていく。

 農林畜産鉱業、人が増えれば相乗的に成長していく。

 俺も森と山を駆け巡って森の内部の移動手段の整備と鉱山の開発などに協力する。

 カンナギの街が発展すれば、ガリウスの街も潤っていく。

 お金が集まる場所には人が集まる。

 そして、あの街は決断する。

 壁の破壊だ。

 壁がなくとも、清廉なマナが溢れる街に魔物は近づかない。


 魔物に襲われない街。


 その噂は、魔物に苦しめられている人間の間にまたたく間に広がっていく。

 そう、カンナギの街では獣人が増えて、ガリウスの街では人間が増えていった。


「人の数は、単純で絶対的な力だ」


 俺の言葉に全員うなずく、今はガリウスの街で今後の戦略会議だ。

 

「この世界で、人が多く集まれるのには多くの条件が必要になる。

 その理由は魔物の存在だ。

 そして、その一点において、俺達は、チートとも言える力がある。

 他の魔法使いたちが、魔法や兵をつかって魔物を退治しているのに対して、俺達は一切の労力を払わずに魔物を退けている。

 結果として人間は疲弊しないし、生産活動に集中できている。

 現状この街で生み出される物は、他の街とは一線を画している。

 すでに、他の街からの間者が侵入してきている。すでに獣人によって始末したが……

 ガリウスの名で防げない大物が釣れる日も近い」


「いや、師匠、俺の名前でとか……」


 ガリウスが照れてうっとおしい。


「そう言えばガリウス、とうとう精霊に会えたんだろ?」


「はい! おかげさまで……シルフィードという精霊と縁を持ちました!」


「気分屋でしょ、あの子」


「いやー……トイレで紙がなくなって慌ててたら、急に腹を抱えて笑う女性が現れたのでびっくりしました」


「……嫌な、本当に嫌な嫌がらせを受けているんだな……」


 正直ドン引きだ。

 ドライアドも目頭を押さえて苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「日々がスリリングになって、楽しいですよ!

 ただ、できればもう少し大人っぽいと言うかドライアド様のような魅力が有ると……」


 突然突風が吹いて、ガリウスが飲んでいた熱々の紅茶をぶっかけてきた。

 ガリウスは一瞬でその液体を凍りつかせて、カップで受け止める。


「腕を上げたな……」


 マナによる魔法の発動は以前とは比べ物にならないほどに早く淀みがない。

 

「ま、こんなところも可愛いんですがな」


 ガッハッハと笑うガリウス。

 馬鹿だが、器がでかい。

 街の人々にもすっかり受け入れられている理由を垣間見る。


 まぁ、なんだ、精霊、シルフィードも、頑張れ。

 

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[一言] ん?堕ちたってとこが嘘?それとも堕ちるってとこが嘘? 世俗に塗れたってとこが嘘?重婚OKが嘘??
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