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第二十九話 復帰者

 自死もさせない、まさに瞬殺……

 マナをたっぷりと浴びたクレイルの力は、計り知れない。


「ありがとうございました、これで、誇りを取り戻しました。

 ワオーーーーーーーン!!」


 空に向かい遠吠えをするクレイル、白衣が魔人から吹き出した魔素を一気に吸収して大量のマナを噴出する。周囲のマナがその遠吠えに反応して輝きだし、そして全てクレイルに吸い込まれていく。

 クレイルの身体が輝きだし、一回り大きく成長する。


「……どうやら、父や母と同じ存在に進化したようです!」


 でかい……5m程の巨大な真っ白な狼……気がつけば俺はフラフラと近づいて、そのふわふわの毛並みに身体を預けるのであった。モフモフ。


 その後、正気に戻った俺は魔人のコアを白衣にしまう。

 やはり、魔人からは考えられないほどに美しい。

 

「みんな大丈夫か?」


「ええ、軽いやけど程度で、すでに回復しています」


「クレイル……見えなかった……」


「俺も全く見えなかった……」


「大丈夫ですよ! これから一緒に鍛えれば直ぐに慣れますよ!」


 つぶらな瞳で見つめてくるクレイル、その瞳に今の発言に一言の嘘も混じっていないことを表している。


「カフェさんのように、す、すぱるた? でやればいいって!

 今日からは教わったとおりに皆さんをすぱるたで鍛えますから!」


「え? あの、クレイル?」


「とにかく、ちょっと父と母に報告に言ってから村に戻りますね!」


 風のように近くの木を上り、あっという間にクレイルは森の奥へと消えていった……


「カフェ、何かクレイルに言ったのか?」


「え、ええ……皆気合が足りないからもっとスパルタで行かないと!

 クレイルもちゃんと着いてきなさいよ! って……」


「姉さん、ちゃんと責任とってくれよ?」


「あ、あんたも一緒に……」


「諦めろ二人共、死人が出ないように俺も頑張って参加する……」


「タスク……」「タスク様……」


 カフェ式ブートキャンプは、クレイル式デッドロードと呼ばれるようになっていく……


 魔人との戦いを終え、日常を取り戻した俺達は、森の村の発展のために日々汗水を垂らして働いた。楽な仕事ではないが、自分たち自身の手で自分たちの居場所を築いていく作業は不思議と苦ではなく、楽しくもあった。

 強いて言えば辛いのは訓練の方だ……

 とにかくクレイルが自分と同じことを俺たちができると思って指導してくれているので、必死についていこうとすると成長はできる。

 もちろん死ぬほどハードな訓練になる……うっぷ……思い出したらあがってきた……

 その御蔭で、全員かなり成長している。

 散発的に現れる魔物たちの対処にも余裕が出てきた。

 もちろん強力なやつもいるから油断はしない。

 一瞬の油断が死につながるのが森のルールだ。


 クレイルが進化して、俺を背に乗せて走れるようになったおかげで周囲の地図作成は一気にはかどった。

 森の中で自生している食べられる植物も集めて村で増やしたりと、食材の面でもかなり豊かになっている。

 森の外の街とも定期的なやり取りはしている。

 心を許すことはないが、今では俺以外が取引にでたりもしている。

 魔物から襲われない安心は人々に心の余裕を作り、獣人に対する攻撃的な言動も今ではほとんど鳴りを潜めている。

 より強いものに抑圧されて、立場の下のものを作って攻撃するってのはよく聞く話だ。

 しかし、その傾向はこの街だけで、未だに獣人や獣は奴隷扱いする場所も多い、できる限り集めて森の村へと引き取る手伝いをしてくれているのには素直に感謝している。


「いつも済まないな」


「いえいえ、森からの食材は非常に人気でしてね。

 かなり大きな収益を上げているので……そのせいで少しこの街は危うくなっているかもしれません」


「目をつけられたか……」


「ごまかしましたが、魔法使いがいないことが漏れ始めてしまっています。

 もしかしたら、新たな魔法使いが狙ってくるかもしれません」


「……わかった。頭には入れておく、ここが変なやつに取られるのは本意ではない」


「ありがとうございます」


 久しぶりに街に出たが、街の規模は更に大きくなっていた。

 人も多くなっている気がする。

 魔法使いが納めていないのに、魔獣が危害を加えない街。

 移住する人にとっては夢のような場所だが、魔法使いからすれば目の前にぶら下げられた人参みたいな場所になる。

 

「……と、言うことで、街に人を置くことにする。

 異常が有れば、有害な者は排除しなければいけない」


「人間は嫌いですが、仕方ないですね」


「私達はタスク様に従います」


「おかげさまで村人も増えてきました。

 番を得る者も増えて、本当にタスク様のおかげで我らは平穏な時を得られました。

 どうか、恩返しをさせてください」


「ありがとう。もちろん魔法使いやら魔人が出たら無理をするつもりはない。

 俺とクレイル、カフェ、カイら全員で当たる」


 不穏な空気はあるが、穏やかな日々が続いていた。

 そんな中、突然村に来客、いや帰還者が現れる。


「ひさしぶりねタスク」


 ドライアドが、本当に突然戻ってきた。





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