第二十七話 気高き者
「穢れ……」「パパ……ママ……ぁ……」
「何を言っても取り返しのつかないこと、すまない」
俺が連れてきた獣の姿に村の人々は驚いていたが、とりあえず俺は件の二人を呼び出し、事の顛末を話した。本人が話すと言い訳がましくなるので、俺が包み隠さず話すことにした。
「二人には悪いが、俺はこの……そう言えば名を聞いていなかった……」
「気高き爪という意味でクレイルと申します」
「クレイルを受け入れることに決めた。
思うことがあり、納得ができないのなら支援はするが、村からは出てもらうことになる」
我ながら、非情だと思うが、穢や魔人の関与なんてことを聞かされると、この戦力は必要になる。
もとより俺は聖人君主でいようなんて考えていない。
同族を殺し、汚れたこの手で、求められるなら出来ることをしていくだけだ。
基本的には、勝手にやるから、勝手にしてくれ……だ。
「俺ら二人で生きていける場所なんて無い、それにここの人は皆良くしてくれている。
それに、俺らを助けてくれたタスク……様のために働く……」
「そうか、村にいれば出来る限り皆に手伝わせる。相互扶助がこの村の鉄則だ」
「そ、そう……ご?」
妹さんが後ろからぴょこっと顔を出す。
「ちょっと難しかったか、自分たち一人ひとりは弱いから、皆で助け合おうねってお話だよ」
頭を撫でようと手を伸ばすと、少しビクッとされたが、優しくなでてあげると気持ちよさそうに受け入れてくれた。
わがままでもいいから、出来る限りこういう子供を幸せにしてあげたい。
「さ、今後の計画を詰めるぞ」
戦闘部隊の皆と簡単な地図の前で最近増えた魔獣の発生場所を報告していく。
明らかに増加している。
しかも、うちらの戦闘部隊で苦戦することも少なくないらしい。
もう少し早く全員で情報を共有するべきだったと後悔した。
「……こないだ出た穢付きは強かった、ちょうどここ……」
姐さんと弟さんは戦闘部隊の中でも頭が出て強い。
今は街から奴隷にされた獣人が定期的に森へと渡されている。
もちろん見返りは渡しているから、商売何だが、街を納めることになったあの男なりの誠意何だと思う。
おかげで村の人手は増えて、出来ることも増えている。
今のところは俺が専制政治的に治めているので揉め事も少ない。
獣人のルールは比較的強いものが正義的な面があるので、強いものは弱いものを守るものだ。
そして守られる側は強いものに敬意を持つべきだ。
お互い様だ。
皆で助け合って生きていく。
コレが鉄則のルールだ。
「こうやってみると、ここが怪しいですね」
「そうだな……」
弟さんが指し示しているのは森の内部にある沼地、いわゆる底なし沼なので、出来る限り近づかないようにしている。
一応定期的には瘴気溜まりにならないようにパトロールはしているつもりだったが、このところ俺自身の採択が必要な事が村でも増えて、皆に任せっきりになってしまっている。
「早速明日にでも調査しよう……」
怪しい地点が何箇所かピックアップされた。
今まで通りにバラけてパトロールをすると、魔人と遭遇した際に危険だ。
非効率的だが、俺、姉さん、弟さん+5人位のチームを3つ作って、それらが交代で動くことにする。
話し合いを終えて家に帰ると当たり前のようにクレイルが着いてきた。
「そうか、家がないな……」
「私はタスク様のおそばにいます」
サモエド萌な俺にとってそれはとても嬉しいのだが……
「……まあ、いいか。ところで、クレイルはその白い毛だと森で目立つよな……」
「ああ、それは大丈夫です。パトロールは私も同行しますのでその時にお見せしますよ」
「食事作るけど、だめな食べ物でもあるか?」
「いえ、私は基本的に食事を必要としません。
この村は本当に最高で、めちゃくちゃ体調がいいです!」
「……精霊みたいな存在なのか?」
「そうですね、私はまだ格が低いのですが、父と母は山を治める神獣としての格を得ていました……」
「……そんな存在を穢れさせる魔人……危険だな……」
「かなり力は失っているはずです。父も母もそれはもう壮絶に戦いました……」
「回復前に見つけて叩かないとな……」
「……必ず……敵を……」
「さて、食べるか。俺も実は食べなくても寝なくても良いんだが、これは娯楽というか趣味というか……食べる?」
俺は調理していた皿をクレイルに見せる。
我ながらよく出来た。平たく言えば豚の生姜焼きだ。
使用している調味料は、一部白衣に出してもらっている。
無理やりこじつけてそれなりの日本の調味料を揃えている。
もちろん犬にこんな物をあげてはいけないが、不食で生きられる聖獣や精霊なら中毒の心配はないし、塩分のとりすぎも問題ない。
「……変わった……香りですね」
「先に食べてるぞ。いただきます」
うん、旨い。やっぱり生姜焼きはすりおろした生姜と刻んだ生姜を両方使うやり方が至高だ。
俺が旨そうに生姜焼きと白飯をかきこんでいると……
「せっかく作っていただいたのなら」
そーっと一口食べると。
しっぽがぴーんと伸びてブンブンと振り回してあっという間に平らげた。
口周りを一切汚すこと無く、周囲も汚すこともなく、凄まじいスピードで平らげてくれる。
「た、大変美味しかったです!」
「そう言ってもらえると今後の作りがいがあるよ」
こうして、同居人が増えた。




