異世界へ
よろしくお願いします!基本週一程度で更新していきたいと思います。頑張るので暖かい目でご覧ください。
もし運命なんてものがあるのなら、陽翔は自分の運命を呪う。
だから今、何もない真っ白な周りを見て陽翔は落胆する。
(世界はまだ俺に死なせる気がないらしい)
陽翔は体を起こして周りを見渡す。が、何もなかった。陽翔は頭を押さえて記憶を引き出す。
(確か・・俺は、トラックに轢かれて・・・それで・・・死、んだ?)
現実を認識すると共にあの時の激痛を思い出して陽翔は体を震わせる。肉がぐちゃぐちゃに潰れる感覚が、腕があらぬ方向に曲がる感覚が蘇るようで、陽翔は首を振り考えるのを放棄する。
陽翔は現状を把握することで考えないようにした。
(死んだことは確実だ。だとすると、ここは死後の世界?)
胸に手を当てて鼓動を確認する。トクン、トクンっと心臓が動いている。
(仮に、死後の世界だとしても、あまりに鼓動がリアルすぎる・・・だが俺はあの時死んだはずだ)
(ダメだ!分かんねぇ死んでいるのに死んでないなんて矛盾してるだろ)
考えることをまた放棄してため息をつく。
「宇都御 陽翔さんですね?」
突如この空間に綺麗なソプラノの声が響く。
陽翔は行き良い良く顔を上げて前を向いた。
そこには手に凄く高そうなステッキを持った綺麗な女性が立っていた。
陽翔は少しの間見とれてしまい反応が遅れる。が、その女性が何と言ったか思い出し慌てて声を絞り出す。
「あっ、えっと、はい」
その女性は陽翔が答えたのを見て安心したように微笑む。それがまた美しく陽翔はまた見とれてしまう。
(こういう人が美女っていうんだろうなぁ)
「それでは陽翔さん。あなたはご自分がどんな状態かわかりますか?」
「そ、そうだ‼俺は死んだんじゃないんですか!生きてるんだったらどうしてこんなところに・・・」
「・・・・・残念ながらあなたは亡くなっています・・・・」
陽翔はその言葉にやはりと感じつつ納得していた。
心の中でもう一人の自分が何かを訴えているがそれを無視して小さく笑う。
陽翔は笑いながら目の前の人物に質問する。
「そう、ですか。・・・ではあなたは一体誰なんですか?」
女性はそんな様子の陽翔を見て驚く。人がいきなりあなたは死にましたなどと聞かされたら、取り乱して信じようとなんてしない。
だが目の前の少年は事実を受け止め納得していている。
「も、申し遅れました。私は、女神レフィーネル。気軽にレフィとお呼びください」
女神という単語に驚きつ陽翔はさらに質問する。
「じゃ、じゃあレフィさん。ここはどこなんですか?」
陽翔は現実離れした現実を理解できず考えるのを放棄している。
が、かといって自分がどういう状況に置かれているのか知りたいのは当然と言えるだろう。
だがそれはさらに陽翔の頭を痛める事となった。
「ここは、神々が住まう神界と呼ばれる場所です」
ただでさえ女神という単語を聞いただけで現実逃避した陽翔には、荷が重すぎた。故に曖昧な返事をしてしまう。
「あ、えっとその・・・・・・そうなんですか」
「はい」
それを聞いた陽翔は、現実逃避することを諦めて、何とか理解することに成功する。
レフィは、そんな陽翔を見て少し安心する。これこそが一般的な人間の反応である。
「貴方は、運命とはいえあまりにも辛い人生でした」
陽翔の人生を見たレフィは、いったいどれだけ辛いのか想像する。
「貴方は精一杯に生き抜きました」
「また度重なる善行は神々の間でも話題となっています」
「あ、ありがとうございます?」
あまりよく理解出来ていない陽翔を見てレフィは心の中で微笑む。
「よって貴方が望むのなら異世界で生きてみませんか?」
「はい?」
「貴方が望むのなら異世界で生き」
「だ、大丈夫です!聞こえてますから!」
(こ、これって異世界転生ってやつか!?)
「ただ、新しく身体を創り一から育つという方法では、世界の「運命」をねじ曲げるため実行は出来ません・・・・」
「じゃあどうやって・・・」
「そこで貴方の身体をコピーしてその身体のまま行ってもらいます」
「確かに・・・それに自分によく馴染んでいるから動きやすい」
「はい・・・まぁようは、異世界転移となんら変わりありませんのでそう思って頂ければ」
「・・・・異世界転移」
陽翔としてはもう疲れていた。死んだと言われてやっと終わると思った位だ。
だが新しい人生で楽しくて幸せを感じてみたい、という欲求が陽翔の中で渦巻いていた。誰かとバカなことして笑う。そんな人生を送りたかった陽翔としては、その欲求を無視することが出来ない。
(俺は・・・・・・)
「どうなさいますか?」
「・・・・・・その話し受けるよ」
それを聞きレフィは、心の中でほっとする。
レフィもただの善意で、陽翔に話しを持ちかけた訳ではない。レフィには、レフィの目的があるのだ。だがわりと本気で陽翔の事を心配していた。
「では、貴方が行く世界、ラフィールについて説明しましょう」
そう言ってレフィは、ラフィールについて語り始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「と、いったところですよ」
説明を終え、一息をつくレフィ。そしてチラッと陽翔の方を見る。陽翔は今聞いたことを踏まえてどうしていくか考えている。レフィはそれを見てやはりと確信する。
(彼なら確実にあの堕ちた神見過ごさずに何とかしてくれるでしょう)
レフィとて無責任なことぐらい分かっていた。こうする他に方法がないのだ。神は基本、下界には不干渉だ。だからとって見過ごすことができないものもある。
「よし。だいたい分かったよ」
「そうですか・・・分かりましたでは、転送しますね」
心苦し思いを心に隠してレフィは、魔法陣を描く。
「うお!?こ、これが魔法なんですか?」
口で説明はされたが魔法なんていうフィクション上の物と今の今まで信じていた陽翔にとってやはり目の前で魔法が使われた事に少しなりとも興奮する。
それを見てレフィはさらに罪悪感を感じる。そして逃げるように転送魔法を発動させる。
「それではお気をつけて」
「ありがとうございました!」
そうして陽翔は転送される――――――
――――――はずだった。
正常に作動していた魔法に異変が起きる。
どこからか現れた黒い何かが魔法を侵食し始たのだ。
(これは!?魔力!?この禍禍しい魔力まさか!?)
「くっ!?」
(何としても彼を送り届ける!!)
黒い魔力がレフィの持つ魔力とぶつかり合う。
「め、女神様?これはどういう――――」
「何者かが邪魔をしています!!ですが貴方を必ず送り届けます!!」
魔力の激しさが増す。所々でぶつかり合い弾ける。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
レフィは限界まで力を引き出し、体が神々しく光り一瞬黒い魔力が弱まる。
「今!」
転送魔法が今度こそ発動する。それと同時に黒い魔力は霧散していく。
転送魔法により、陽翔の視界が真っ白に染まる中、レフィが倒れ始める。とっさに駆け寄ろうとするが壁のようなものが邪魔をし、阻まれる。
「くそ!なんだこれ!」
陽翔が見守るなかで倒れるレフィの口が一言呟いた。
「・・・・邪、神・・・・・・」
その言葉を聞くのを最後に陽翔は異世界へと転送された。
最近は忙しくて体が痛いですね。体調には皆さんもお気を付けください!