契約 (上)
はてさてどれだけ時間をかけてるのだろうか。
すみません。
少しだけ陽翔の過去が分かります。
「はぁはぁっ!」
男は必死に走っていて呼吸は乱れ、何度も後ろを確認しながら全力で、逃げていた。片腕が無くいまだ、血が出続けていた。
「くそ!!」
男は今日もいつも通りにクエストを受け、いつも通りにクエストを達成して、酒を飲もうと考えながら、いざ出発した。
「なんなんだよ!あいつは!」
楽にクエストを終え信頼している友と帰ろうとしたとき、そいつは現れた。
そいつ明らかに異様で思わず二人は時を止めた。
瞬間そいつは加速し、一瞬で腕が刈り取られた。
『逃げろ!!俺が時間を稼ぐ!』
そう言った友に逃がされ走っていたのだ。
「なんでだよ!なんで・・・なんで!」
分かっていた。残った友は殺され、すぐに自分が殺されるだろう事はわかっている。
それでも逃げきりたかった。だから友が命を懸けて稼いだ時間で精一杯走る。
・・・が
男の首は転げ落ちた。一瞬で命を刈り取られたため声をあげる間もなく落命した。
「グルルルルルルガァァァァァァ!」
勝ち誇るような雄叫びが森に響き渡った。
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「疲れた・・・」
日が沈みかけている中で陽翔は呟いた。
クエストを足早に終わらせ魔法の試行錯誤をしていたため、魔力不足も相まって疲れがたまってるのだ。
「魔法か・・・」
この世界には具体的な魔法は存在しない。魔法とはイメージ、故に人によって魔法は違う。下級などと位があるのは、どこまで威力と、魔力を消費するかで分けられている。
「下級までじゃあれが限界か・・・」
(しかし・・・中級は魔力量的にまだ厳しい・・・)
「はぁ」
とぼとぼと歩いていると、
「あ、ハルトさん!」
「え?セイナさん!?」
いつも見ているギルドの制服ではなく私服姿のセイナがいた。
「ふふ」
「あ、ごめんなさい!失礼でした」
「いえいえいんですよ、ただ面白かっただけですから」
陽翔のあまりの驚き方に思わず笑ってしまったのだ。
「それでどうしたんですか?こんなところで」
「えっと、これから図書館に行こうと思っていて・・・」
「何か面白い本があるんですか?」
「いえ、色々と調べています」
それは本来ならありえない。前も言った通り冒険者のほとんどががさつである。だからわざわざ、調べるなんてこと絶対にしない。
その結果、死者が増加してしまっている。それを防ぐためギルドが職員に勉強することを義務付けるくらいに深刻な問題である。
「・・・どうしてそこまで・・・」
「え?」
「いえ、なんでもありません」
セイナにとって陽翔は凄い人だ。死なないよう努力し、たくさんの人を笑顔にしている。とても優しく、誠実だと思っている。
だからこそ何故陽翔は冒険者になったのかさらに疑問が深まるばかりだった。
「それなら私が教えましょうか!」
「え!?いえ、悪いですよそんなの!それに今日仕事が終わったんじゃないんですか!」
「いいんです!私がしたいことですから」
ずいずいと陽翔に近寄りそう話すセイナ。
「わ、分かりましたよろしくお願いします!」
「ふふ、はい!優しいんてすね!」
「え」
(や、さし、い?)
瞬間陽翔は思い出す。己の後悔を。
『優しいね陽翔は!私それだけで救われるよ!』
(あぁ、お、れは・・・!)
『嘘つき・・・嘘つき!』
『守ってくれるって言ったのに!』
(ごめん、ごめん、ごめん!)
『もう関わらないで!!』
守りたくて、守りたくて、苦しくて、苦しくて・・・
「・・・さん」
「・・・るとさん」
「ハルトさん!」
「え?あ、はい」
セイナの声によってそれは中断され、意識が浮上する。
「どうしたんですか?私何かしましたか?」
「いえそんなことは無いですよ!」
「そうですか・・・」
「ほら行きましょう!たくさん教えて貰いたいですから!」
陽翔は図書館に向かって歩いていく。その後ろ姿を見てセイナは・・・
(どうしてそんな顔するんですか・・・どうしてそんな哀しそうにするんですか・・・)
陽翔の今にも泣きそうな顔を見てセイナはそう思った。
「セイナさーん!行きましょう!」
「あ、はい!今行きます!」
セイナは首をふって陽翔のあとに続いた。
その後たっぷりと勉強した。セイナが張り切って陽翔に教えていた。陽翔の疲れはさらに倍増したのは言わずとも分かるだろう。
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「はぉぁー、眠いな」
まだ朝も早く昨日の疲れからも眠さが増していた。
そう言いながらもギルドに向かって歩いていく。
「だからって休めないし」
そう言ってギルドに入る。
「あ、ハルトさん!」
(デジャブ!?)
「セイナさん、おはようございます」
「はい、おはようございます」
ニコニコしたセイナを見て若干顔引きつかせつつ挨拶を交わす。
「今日も依頼をお願いします」
「はい!そうですね~これなんかどうでしょう?」
渡された紙には護衛任務と書いてあった。行き先は此処からすぐ近くの村。
「護衛任務ですか」
「はい、信用できる方の方がいいと思いまして・・・その点ハルトさんなら安心です!」
「でもまだ、ひよっこで弱いですよ?」
「大丈夫です!あの村までの街道にほとんど魔物は現れたませんから」
(何事も経験、か)
「分かりました受けます」
そう言うとセイナの顔はパァと明るくなる。
「お気をつけて!場所は正門前に9時です」
「分かりました、行ってきます」
少し諦め気味に受けたのであった。
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