プロローグ:スコープ越しの未来
ふ、と…防御壁を背に寄りかかりながら、教室全体を見渡した。
まっさらな黒板。
端に寄せられた机や椅子。
乱雑に荷物が押し込められたロッカー。
その順々に目を向けながら、なんだかんだで“高校一年生”が終わろうとしているのだと、場違いながらに実感する。
教室だけじゃない。
一年前はお互い緊張混じりで挨拶をしていたクラスメイトとも、いつの間にか数え切れない程の思い出が出来ているなぁ、と。
そんな事を頭の端で考えながら、ぐるりっと周囲を見渡したところで、隣に座る彼とバチリッと目が合った。
「お前…随分と余裕そうだな」
「あー、いや…別に余裕ってわけじゃないけど…」
ただ暇なだけ。
そう続けて零すと、目の前で彼は呆れたように溜息を零した。
そんな彼の態度に多少ムッとしたが、ふと視線を向けた彼の手元にはゲームアプリの起動したスマートフォンが握られていて、あんたも人のこと言えないじゃん、と彼同様に溜息が零れ出た。
そんな時。
ガラガラガラッ
「!」
突如として教室の扉が開き、数名のクラスメイトが補給物資を手に駆け込んで来た。
「みんな待たせたな!負傷したやつらは無事に救護室に連れて行ったから問題ないぜ!」
「予備の武器と弾倉も貰って来たから各隊自由に持って行って!」
そう声を張り上げたクラスメイトに呼応するように、物資の周りにはワラワラと生徒が群がった。
そんな様子をぼうっと見つめていると、群がる塊からヒョイっと一つの影が飛び出す。
そして、迷いなくこちらに近付いて来たその足音は…
「おい、お前たちも自ら取りに来ないかッ!」
私たちの前に辿り着いて早々に大声で怒鳴り散らした。
「…うん、ごめん…」
「………」
そんな怒り心頭なメガネの彼に緩く謝罪を入れると、彼は眉間の皺を更に深くしてこちらを睨み付けた。
「(あぁ、これはまたグチグチと言われるやつだなぁ…)」
それは面倒くさいなぁ。
なんて、段々と青筋の浮かぶ目の前の彼を見つめながらぼうっとしていると、そこに嬉しい救世主。
「まぁまぁ、少し落ち着いて」
「む、」
「二人とも昨日今日と連戦続きで疲れてるんだから、サポート役の私たちが色々助けてあげなきゃ!」
そう言ってまさに女神のような笑顔を浮かべるのは、ほんのり桜色の綺麗な髪をゆったりと纏めているクラスで一番美人の彼女だ。
容姿どころか性格まで女神のような彼女は、一年のみならず二年や三年にまで人気があるもっぱらの有名人だが、今まで共に過ごして来た中で浮ついた噂の一つだって聞いたことがない。
所謂、自分の身は自分で守れるしっかりした子である。
「しかし、ここは学園だぞ?連戦の一つや二つ日常茶飯事だ!」
コイツらをあまり甘やかすなっ!
そんな女神な彼女とは対照的に、年がら年中キリキリしては周囲にお説教垂れてる彼は、真面目な性格をそのまま体現したかのような黒縁眼鏡に、制服のシャツは第一ボタンまでしっかりと閉じると言う徹底ぶり。
日常的には煩い彼だが、その勤勉な性格が戦闘では大いに役立っている。
「おいッ!さっきから聞いているのかっ!?もうすぐ三年生の攻撃が終わるぞっ!!」
「!」
「!」
前言撤回…
我がクラスの学級委員長でもある彼は、戦闘中においても姑の如く喧しい。
だが、まぁ、しかし…
「…もうそんなに時間経ってたんだ」
「通りでラスボスまで辿り着いたわけだ」
そろそろ出番だと言うのならゆっくりしているわけにもいかない。
私と…そして隣の彼も、学級委員長の一言に気持ちを入れ替えると、傍に立て掛けてあった魔導ライフルを手に取った。
私たち一年生の攻撃が終了して、気付けばもう三十分が経過しようとしている。
あと二分で三年生が標的を仕留められなければ、作戦はセオリーに従って学園総攻撃へと移行するだろう。
《CPより待機中の各員へ告げる》
噂をすればなんとやら、だ。
《作戦第三段階終了まで残り100秒。各員は戦闘態勢へ移行せよ。繰り返すーーー…》
耳元の通信装置から流れる音声に従って、教室中は一斉に緊迫した空気に包まれた。
それは勿論、私たちの隊も例外ではない。
衛生兵の学級委員長と、弾薬補充員の女神が背後で待機する様子を横目に、私と隣の彼も魔導ライフルを防御壁の上へと静かに構えた。
準備は万全ーー…
そうすると彼は……隣の戦友は決まって口を開く。
「しおん、政弥、理蘭」
《第三段階終了まで残り30…》
「生きるぞ」
《第三段階終了!作戦はこれより第四段階へと移行する!!》
「了解」
「了解だ」
「了解!」
《総員…穿てェッ!!!》
ガンアクションは黙々と学びながらの執筆です。
銃系は素人ですので、アドバイスや修正点を教えていただけると大変ありがたいです(T ^ T)




