15―事後処理1―離脱
船倉の外でガチャガチャと音がする。
――え?さっきはその部屋、誰も居なかったじゃないっすか!――
――うわぁー!――
ドスンッ、バタバタ
『おい』
―――うん。一応警戒しておいて。
ショーマとエドはドアの前に陣取り、ショーマは鉛筆を構えエドは直ぐに動ける様に腰を落とした姿勢でドアを睨み付けている。
ガチャッ
ショーマはビクッと身体を強張らせたが、開かれたのはこの部屋のドアでは無かった。
――被害者はいたか?――
――いや、この部屋では無いみたいだ――
『どうやら味方の様だな』
―――そうだね。
ショーマはエドにそう返すと、スタスタとドアに近づきガチャリと開けた。
「うわっ!?」
「あ、驚かせてしまい申し訳ありません。自警団の方ですよね。誘拐された女性がいるのはこちらの部屋ですよ」
部屋の前には今まさにドアを開こうと手を伸ばす自警団の団員がいた。ショーマはやけに丁寧に驚かせた事を詫びる。その対応で、団員はショーマが協力者だと理解した様だ。
団員を部屋に通すと、女性達がこれで助かったと互いに抱き締め合い、涙を流す者も居た。
―――これでとりあえずは解決だね。お疲れー。
『ああ、そうだな。なぁ、俺が性別を偽ってまでここにいる必要はあったのか?』
―――うーん。俺が捕まってなかったら必要だったんじゃない?
『・・・捕われ損だ』
ショーマの返答にエドはガクッと膝をついた。
船倉では自警団の団員が女性の名前や出身、健康状態などの確認をしている。ショーマとエドは入り口近くに積んであった箱の上に腰を下ろして寛いでいた。
そこにソラが現れる。室内が少しざわつく。
「ウィス、無事かい?」
「あ、父さん。お疲れー。こっちは自警団の人のお陰でなんにも無かったよー」
「それは良かった」
ソラはショーマの隣に座り、ショーマの頭を撫でる。ショーマは気持ち良さそうに目を細めた。
『おい、まさか、こいつがお前の父親なのか!?』
―――うん。そうだよー。
エドの疑問にショーマが軽く答えた。ソラは魔物の言語を使い、改めてエドに自己紹介をする。
『初めまして。ウィスの父のスカイ・・・いや、ショーマの父のソラです。君は?』
『・・・マーシーのエドワルドだ。エドと呼んでくれ』
『へぇ。君はマーシーなんだ』
「そうだ。ウィス、レベッカさんはどの子?」
「ちょっと待ってて。すぐ連れてくる!」
ショーマはレベッカを連れにソラから離れた。
『なぁ、ソラさん。あいつが竜人って本当か?』
『そうだよ。あの子は人間同士から生まれた竜人なんだ』
『人間同士から?』
『いろいろあってね』
「父さん、連れてきたよ。この人がレベッカさん」
「は、はは、はじめまして!レベッカと申します!!お宅のお嬢様には大変お世話になりました!!!」
レベッカはソラの顔を見て顔を真っ赤にし、挨拶をしつつ高速で頭を下げた。
「ご丁寧にどうも。僕はウィスの父のスカイです。頭を上げてください」
「え?ウィス?」
「ねぇウィス、お嬢様ってどういう事?」
ソラとレベッカの視線がショーマに集まる。ショーマはフイッと顔を背けた。
『フッ。こいつ、少し頭の弱い女の様に振る舞ってたからな』
「あ、なるほど・・・」
ソラは苦笑いを浮かべる。エドの解説でいろいろと察した様だ。
「ウィス、言わなくていいのかい?」
「──はぁ、そうだよね。レベッカさん、あのね、って・・・ねぇ、俺の父さんのこと見つめてぼけっとしないでよ」
「あ、ごめん、って、え?ティアちゃん、今、俺って・・・?」
「ごめんね。俺、男なの。ウィステリア。これが俺の名前。ティアじゃなくてウィスって呼んで」
「あ、え?おとこのこ?へ?あっはは・・・うそよ!そんなの信じられない!!」
「嘘じゃないよ。うーん。脱ぐ?」
ショーマは上着の合わせに手を掛けた。
「こら、女性相手にそれは止めなさい。レベッカさんが落ち着くまで少し待とう」
ショーマはソラに咎められ、上着を脱いで男だと証明する事は諦めた。ソラはレベッカにとりあえず箱に座って一度落ち着く事を勧めた。
少ししてレベッカは落ち着きを取り戻す。
ショーマが改めて自分が男だとレベッカに言うと、こんなきれいな子が男の子なんて・・・エドもそうだけど、世の中ってほんっと理不尽っ!と嘆きつつも今度はすんなりと信じた。
「じゃあ、これからの予定を話そうか」
ソラが仕切り直し、これからの事を説明する。
予定を簡単にまとめるとこの様になる。
・この船でアルカンに帰還
・自警団の詰所で再度事情聴取
・その後解放
アルカンから離れた地方の娘も多いので、自警団がそれぞれの村まで送って行くそうだ。
「その事情聴取ってさ、先に跳んで受けちゃってもいいの?」
「大丈夫だよ。でもその前に、ウィスにお願いがあるんだ」
「え?父さんが俺にお願い?」
「そう。レベッカさんとエドさんも一緒に連れてアルカンの港に跳んでほしいんだ。港には行った?」
「え?私?」
『俺もか!?』
レベッカとエドは、まさか自分の名前が出るとは思わなかったのか驚いている。しかし、ショーマとソラは二人の事を気に留めず話を進める。
「港は行ってるから大丈夫だよ。でも、船から跳んだことないんだよね。不安だけど頑張るよ」
「ジエンさんとブラウンも一緒にだから全部で六人だね。人数的には大丈夫そう?」
「近いし跳べると思う」
ショーマはそう言って、少し考え込む。
「なんか不安しか無いんだけど」
『奇遇だな。俺もだ』
レベッカとエドは意志の疎通は出来ないが、思っている事は一緒の様だ。
「おぉ、ウィスよ。危険な目に遭わせてごめんな」
「みんな無事に保護されたみたいだね」
ショーマが転移魔法について考えていると、リンドとシドが船倉にやってくる。室内は更なるざわつきを見せた。
「じいちゃん、ブラウンさん。俺こそ我が儘で心配掛けてごめんね」
「ははは。子供は大人に心配をさせるのが仕事の様なものだ。それにしても、奴隷商どもを海に突き落とす作戦には肝が冷えたぞ」
リンドはショーマの頭をその大きな手でワシワシと撫でる。
「やっぱり危ないよね。いくら俺には最終手段(威圧や魔力制御の解除)があるとは言え、無茶だとは思ってたよ」
「剣も持っていない状態だったしね。今後は体術も教えよう」
ソラはにこにことショーマの今後の訓練内容を考え始めた。
「なぁ、スカイ。そろそろこの船を出た方が良いと思うんだ。早くしないと合流できなくなるよ?予定時刻も過ぎているし」
シドは懐中時計を確認しつつも、周りの(主に女性からの)視線に居心地が悪そうにしている。
「そうだね。ウィス、隣の部屋に移動しよう。レベッカさんとエドさんも着いてきてください」
ソラに連れられて、一同は隣の部屋へ移動した。
残された女性達は残念そうに、自警団の団員達は緊張から解放された様に溜め息を吐いた。
ショーマ「はぁー。やっと出られたー」
朝木 「久し振りー♪囚われのお・ひ・め・さ・ま♪」
ショーマ「…朝木のせいだろ」(-_-#)
朝木 「おほほほほー」(・∀・)
ショーマ達はやっと助け出されました!
ドラゴン三人組は集まったら耐性の無い女性はイチコロみたいです。
「見た目は野性的なおじ様、爽やか剣士、
知的な秀才って感じかしらぁ。
そしてとんでもない美形なのぉ!
同じ空間にいるだけでもぉ瞬殺よん!
でも気を付けなさいねぇ。
身内には超甘甘なんだからぁ!
その差がまた良いけどねぇん♪
うふっ♪ 」
byセシル
「私、何故に囲まれてるんだろ。
目のやり場に困るんだけど。
…と言いつつ(/ω・\)チラッ 」
byレベッカ
次回、事後処理その2。です!
合流しまーす!
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