11―協力者1
ショーマはソラと話した内容を踏まえて今後の方針を決める事にした。
さて、レベッカさんにどこまで情報を開示しようかな。
魔法が使える事は一応伝えた方がいいよね。戦術の幅が広がるし!・・・って、俺が魔法で捕まえちゃえば良いのか。お姉さん達が船上で危険を犯してまで突き落とす必要は無いよね。
アンズ姉ちゃんがもうここに居ない事も伝えた方が良いな。いつまでも「まだ寝てるの」って言ってもいられないし。
性別の件は・・・うん。恥ずかしいから黙っておこう。
ショーマは方針を決めると立ち上がり、女性たちの元へと移動する。
「あら、ティアちゃん起きちゃったの?」
「うぅん違うの。あのねぇ、レベッカさんに相談があるんですぅ。ちょっとこっちまで来てもらってもいいですかぁ?」
「相談?お姉さんで良いの?」
「うん!レベッカさんじゃないとダメなのぉ!」
「分かったわ。みんな、ちゃんと休んでおいてね」
レベッカはショーマの後に着いて、反対側の壁際まで移動する。
他の人に話を聞かれたくないなぁ。とりあえず、囲うか。
ショーマは周囲を空気の壁で覆った。壁は音で振動しないほどにぎゅうっと固めたので、防音効果が見込める。大声を出さなければ問題無さそうだ。ただ、壁は透明なので外から丸見えだ。
「レベッカさん。今からいろいろ言いますが、あまり大きな反応をしないでくださいね」
ショーマは話し方を改め、レベッカに注意を促す。
「ティアちゃん、そのしゃべり方・・・いえ、分かったわ。話してちょうだい」
レベッカは了承の意を示した。
ショーマはポケットから杖代わりの鉛筆を取り出し、短く息を吐くと話始める。
「まず、妹はもうここには居ません。これは人形です。その証拠に、ほら」
ショーマはそう言ってアンズ人形の変装魔法を解く。すると空気を固めて作られた人形の顔が透明に変化した。
「っ!!」
レベッカは大きな声を出さない様に口を手で押さえる。ショーマはその可愛らしい反応にクスリと笑みを溢す。
「わたしは魔法が使えるんです。だから、この人形と本物の妹を入れ替えちゃいました」
ショーマはそう言いながら鉛筆でクルリと円を描き、人形にまた変装魔法を掛けた。人形は元の通りアンズそっくりになる。
「あと、さっきまで寝たふりをして父さんと魔法で話してました。その中で、レベッカさんは協力者だよって事を教えて貰ったんで、こうしてお話ししています」
「・・・そうなの。じゃあティアちゃんのお父さんは彼らに会ったのかしら」
「父さんはトビーさん達に聞いたと言っていました」
「そう。もう、一般の人に悟られるなんて駄目じゃない」
レベッカは右手の甲を額に当てた。顔にはやれやれと出ている。
ごめんね。一般人にバレた訳じゃないんです。相手はイレギュラーなんで。
「――こほん。それで提案なのですが。明日はわたしが魔法で奴らを捕まえましょうか?」
「人を捕まえられるような魔法があるの?」
「捕縛魔法みたいなもの?が使えるんで、動きを止めてもらえればできると思います。みんなで体当たりをして海に突き落とすより現実的ではありませんか?」
「そうね・・・」
「あと、今夜もう一人協力者が来ると聞きました。その人にも手伝ってもらえればもっと簡単だと思います。明日の朝に一緒に船に乗る犯罪者は二人、若しくは頭って人と合わせても三人ですよね」
「ティアちゃん、どこまで知っているの?」
「協力者だけで言えば、トビーさん、セシルさん、オズさんが誘拐犯側で、ビルさんが自警団側、レベッカさんと今夜くる女性が被害者側の人なんですよね?」
レベッカはショーマの口から出てくる人物の名前に大きなため息を吐く。
「はあぁ。ほぼ全ての人員を知っているみたいね」
「そうなんですか?でも、流石にこの事件の概要までは知らないですよ」
「それは知らなくてもいい事よ。ティアちゃんはアルカンの子じゃないんだから」
レベッカはそう言って考えをまとめる為に天井へ目を向けた。
「・・・そうね。じゃあ明日の作戦を少し変えようかな。私たち以外の女の子が危険な目に合う必要はないもの。もちろんティアちゃんも含めてね」
レベッカはショーマに向けてウインクを投げた。そして、女性達の元へ戻る。ショーマはレベッカが防音壁にぶつかる前に霧散させた。
レベッカさんごめんね。俺、女の子じゃないの。
ショーマはレベッカの思い遣りに申し訳なく思いながらも、やはり自分が男だとは打ち明けられなかった。
◇◇◇
ショーマがレベッカと話をしてから時間が経ち、倉庫の前室に一人の男が入ってきた。
「おい、起きろ」
スパーンスパーンと小気味の良い音を立てながら、男は焚き火の前で船を漕いでいた部下の頭を叩く。
「いってぇー!」
「いてぇっすよ兄貴!・・・って頭じゃないっすか!」
二人の男は頭を押さえながら涙目で男を見上げた。
「まったく、お前達には緊張感がないな。今入ってきたのが俺じゃなかったらどうするつもりだ」
そう言いながら、頭と呼ばれた男は部下の隣に腰を下ろした。部下達は頭と目が合わない様に視線を泳がせた。
「はぁ。それで、商品の数は集まったのか?」
「へい。夕方になんとか集まりやしたぜ」
「今回は依頼数が多かったからな。当分ここでは仕事にならないな」
「さすがに今回は取りすぎやしたからね」
「ああ。いつもは多くて3だからな。こんなに大口な依頼は初めてだ」
頭と兄貴と呼ばれた彼の部下は今後の仕事を思うと、大きな溜め息を吐いた。
「頭ぁ、明日はいつ出発するんすか?」
「明日は日の出と共に出る。どうも寒波が迫ってるらしいからな。朝から準備に手間取らない様にしておけよ。出発が遅れれば、その分商品達の凍死の危険が高まる」
「わかりやした」
「りょーかいっす」
「で、あの三人はまだ来ていないのか?」
頭は部屋を見回し確認を取る。
「あいつらはギリギリまで粘るらしいっす」
「まだアテがあるっつってましたぜぇ」
「ほぉ?まだあるのか。流石、アルカンに住んでいただけの事があるな」
「どうも俺にはあいつらが信用できねぇ」
「そうっすよ。頭はなんであいつらを買ってるんっすか?」
「あいつらには絶対に裏切れない者が居るんだ。ソイツが俺達の仲間だから、信用はしてないが使ってるんだ。それ以上の事を知れば、後戻りは出来ないと思え」
「俺は知らなくていいっす!」
「俺もそれ以上は聞きたくねぇ!」
部下達は瞬時に両手で耳を塞ぎ、その先は聞かない事を態度で示した。
「ははは。そうか。俺は賢い奴は嫌いじゃ無いぜ」
頭は上機嫌に笑いながら、部下達の背中をバシバシと叩く。部下達はゲホゲホと咳き込みながらも、されるがままだった。
ええ!?そんな大声でいつも喋ってるの!?会話が中に筒抜けだけど!!
ショーマは倉庫で前室の三人の会話を盗み聞きしながら、思わず突っ込んだ。
そして、アルカンの夜は更けていく。
朝木 「やれやれ、やっと夜になった」
女神様 「なかなか進まないね」
朝木 「…ぐすん」
女神様 「わわ!泣かないでよ!」
朝木 「女神様がいじめるのぉー」
女神様 「いじめてない!応援してる!」
朝木 「…そぉ?」
女神様 「そうそう!だから頑張って!」
朝木 「うん。頑張る」
女神様 「…ふぅ」
って、脳内でいろんなキャラに応援されながら書いてます。
…私、痛い子やん(ノ_<。)笑
ショーマはレベッカに色々情報開示をしました。
可愛い女の子がビックリしながら手で口を押さえる仕草はヤバイと思います!
萌え萌え(///ω///)♪
あ、でもレベッカ姐さんはどちらかと言うとキレイ系の人ですよ。
犯人達はいつも大声で喋っています。
女の子達に聞かれようともどうせ商品だと気にしていません。
次回、更に協力者。です。
あの人の正体が判明します。
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/




