10―自警団の詰所2
ソラ達は自警団の詰所の応接室にいる。
「まだ本題に辿り着いていないのだが。そろそろ何故私の娘の匂いがその男からするのかを教えてくれないか?」
シドの冷たい声に応接室は凍り付く。ソラは苦笑いで肩を竦めた。
「ブラウン。そんな威圧的に言ってもどうにもならないよ。まずはこちらの事情を説明しないと」
「そっか。ごめん。昔を思い出して頭に血が昇ってた」
「トラウマになるのも解るけどさ。今回は状況が違うんだよ。リコちゃんはウィスがもう家に送り届けてるんだから」
「そうだね。スカイ、ちょっと説明よろしく。私は少し頭を冷やすから」
シドはソラに説明を頼むと長い足を組み目を閉じた。
「なんだかすみません。とりあえず、僕らの事情から説明させてもらいますね」
ソラはそう言うと、今日あった事を順に話す。とは言っても、自分とシドの子供がこの町に訪れ、その際に誘拐されたと簡潔に伝えただけ。
「それで、えっと君の名前はオズ君だったかな?君からブラウンの娘の匂いがしているんだよ。どこかで子供にぶつかったりしていないかな?7、8歳くらいの淡い橙色の髪の女の子なんだけど」
ソラはオズに心当たりがないかと尋ねた。
「おい、淡い橙色って」
「トビー、黙りなさいっ」
「そっちの二人は心当たりがあるようだ」
シドは閉じていた目を開け、じっとトビーとセシルを見た。その視線に二人は蛇に睨まれた蛙の様に硬直する。実際はドラゴンに睨まれた人間だが。
「はぁ。トビーとセシルは少し黙ってろ」
オズはいろいろと察し、混乱を避ける為にトビーとセシルの口止めをした。
「あなた方の想像する通り、お二人の子を拐ったのは俺たちで間違いない」
「おいっ!どういうことだ!!」
「テッドよ。とりあえず今は落ち着け」
オズの言葉にテッドは怒る。そんなテッドをリンドが宥めた。
「やはりな。うちの娘に手を出した事を後悔させてやろう」
「はいはい。ブラウンは少し落ち着こうか。お前はただでさえ潜在的に魔王なのだから。また自分を見失うぞ」
シドはソラに指摘され、一度目を瞑り心を落ち着けた。
「・・・ふう。悪かったね。もう大丈夫だよ。
今ここにスカイが居て良かった。また昔みたいに暴れ出すところだったよ」
「本当だよ。カルメーナの時みたいに暴走されたら、僕とジエンさんの二人掛かりでもすぐには止められないんだから」
ソラとシドの会話にオズ、トビー、セシルはガタガタと震えだす。テッドは一人訳がわからず、見守る他ない様だ。
「彼がカルメーナの魔竜なのか」
「聞いてくれよ!こ、これにはふかぁーい理由があんだ!」
「そ、そうなの!それに、女の子達は明日の朝には開放してあげられるわよ!」
「はぁ。解放もなにも、私の娘はすでに家に帰っていますよ」
「「「えっ??」」」
呆れた様なシドの言葉に、三人はキョトンとする。
「さっきスカイが言ったじゃないですか。私の娘は一緒に捕まったスカイの息子が家に送り届けてくれました。なので、今捕まっているのはスカイの息子だけです」
「それは良かった!・・・って、息子?おいセシル。一緒に連れてったのは紫の髪をした女の子だったよな?」
「そうね。10歳くらいの女の子だったはずよ」
「いや、あの子が彼の息子で間違いないだろう。持ち上げた時に女の子にしてはしっかりしてると思ったが、男の子なら納得だ」
混乱するトビーとセシルとは対照的に、オズは納得している。
「あの~、スカイ様。そろそろ私もこいつらに話を聞いてよいでしょうか」
話の推移を緊張した面持ちで伺っていたテッドは、リンドから促されおずおずと話しの場に出てきた。
「どうぞ。テッドさんの質問が終わったら明日の件について再度聞かせてください」
ソラはそう言うと椅子に深く座りなおした。そして、ショーマにクイッと合図を送る。
ソラから質問役、いや、尋問役を譲られたテッドが鬼の形相で三人の誘拐犯に詰め寄る。応接室は先程とはまた違う方向の修羅場に変わった。
ソラがショーマと話終えこれからの動きを確認しようとした時、三人は床に正座をさせられ足の上に重石が載せられていた。暫く動けなかったのは想像に難くない。
◇◇◇
所変わって、ここはアルカン沖にある島の倉庫。
ソラからの合図を受け取ったショーマは、また糸電話の要領で声を届ける。
―――ソラさん、さっき振りだね!自警団の人とは会えた?
―――ああ。今もまだ一緒に居るけど、とりあえず分かった事だけでも先に伝えておこうと思ってね。
―――なるほど!!あれ?何か面白い事でも分かったの?
―――なんでそう思うんだい?
―――うーん。なんか声が楽しそうだから?
―――そう聞こえる?なんでだろう。久し振りに暴れられそうで昂っているからかな。
―――え!?ソラさん、暴れちゃうの?
―――時と場合によってはね。大丈夫だよ、シドみたいにアルカンを荒野にしたりしないから。
―――へぇー・・・ソラさんはさ、冷静に見えて実は意外と怒ってたりする?
―――僕もシドも可愛い我が子に手を出されて、怒っていないと言ったらウソになるかな。
あぁ~、誘拐犯たちは二頭の竜の逆鱗に触れたのですね・・・ナームー。
ショーマは心の中で手を合わせ、誘拐犯の冥福を祈った。
ソラは自警団の詰所であった事を掻い摘んで話していく。
ショーマ達を誘拐した実行犯が今目の前にいること。彼らの名前(トビー/セシル/オズ)や容姿の特長、彼らが元自警団の団員で、現キリナントル商会の雇われ護衛をしていること。何か思惑があって娘たちの誘拐に加担していること。ソラたちがドラゴンだと告げたこと。など。
―――え?ドラゴンだってバラしちゃって大丈夫?
―――大丈夫だよ。彼らは命が惜しいから絶対誰にも話さないだろうし。
ソラは言外に脅したことを匂わせながら、協力者の情報を追加する。
自警団内にも協力者がいて、明朝に大捕り物があること。今夜追加で島に送る娘の中に協力者がいること。すでに捕らえられた中にも協力者がいること。
―――え!?この中に協力者がいるの!?
―――そうみたいだよ。協力者はレベッカさんって言うんだって。
―――いるいる!!そっかー、だから一人だけすごく落ち着いてるんだね。レベッカさんが協力者なら明日の作戦は完璧だな!
―――作戦?ショーマたちも何かやるのかい?
―――うん。こっちも明朝に島から出るみたいなんだけど、その時船上で男に体当たりをして海に落とすらしいよ。真冬の海に落とされたらひとたまりも無いってさっき話してた。
―――そこにいるのはショーマ以外は女の子だけだろう?そんな子供騙しみたいな作戦が通用するのかな。
―――まぁ、追加の協力者が来るなら大丈夫じゃないかな。俺も魔法でさり気なく補助する予定だし。
―――そっか。無理はしないようにね。
―――うん。何も武器を持ってないから、出来ることだけをやるようにするよ。
―――それがいいね。また何かわかったら合図を出すよ。一応、ショーマ達の方の作戦も伝えておくから。
―――お願いしまーす!俺はちょっとレベッカさんとお話ししておくね。
―――そっちはそっちで頼んだよ。
―――うん!じゃあまた後でー。
ショーマはソラとの話を終えた。
☆コネタ
シドは魔王として女神様に作られたせいで、怒ると手が付けられなくなります。いわゆる暴走特急です。
特に鬼門なのが身内に対する害悪で、アンズが誘拐されかけたカルメーナ事件が仲間内では有名です。その時シドは大暴走し、この世界で一番の大国だったカルメーナを丸二日で完膚なきまでに滅ぼしています。ソラが連絡を受け、速攻で駆け付けても彼一人では止めることが出来ませんでした。
◇ ◇ ◇
…ちょっと待て。Σ(´□`;)
ショーマ(主人公)の周囲がチートすぎるぞ。
この話はショーマの俺TUEEEだったはず…
(;´・ω・`)
次回、協力者とショーマ。です。
作戦の成功率を上げようと頑張ります!
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