1―家に帰ると/ルリの秘密
※6/27…会話文の表現を修正。
縄張り制覇を終えたショーマは、とりあえず家へ帰ることにした。
ショーマはウルシ達の機動力に加速の魔法を使って、西端から一月程で洞窟へ辿り着く。
真っ直ぐ帰るだけでも一月か。海まで遠かったなー。あ、縄張り制覇したってソラさんに報告しなきゃ。
ショーマはウルシとルリを洞窟近くの森へ放し、ソラを探す事にした。
「ソラさーん。どこー?」
ショーマはいつもソラが昼寝をしている辺りを探している。すると、向こうからサクラがやって来た。
『ショーマ、お帰りなさい。元気そうでよかったわ』
「サクラさん、ただいま!」
『見ない間に随分髪が伸びたわね。その髪型も似合うわよ』
「そお?ありがとー!」
ショーマは遠征中に髪を切るのが面倒になり、伸ばしたままにしていた。そのままだと邪魔くさいので、頭の高い位置に一括りにしている。
『まだまだ女神様の仕事は続くんでしょ?どれくらい家に居る予定かしら?』
「とりあえず、1週間くらいはゆっくりしよっかな?って予定。剣の稽古もしたいしね」
『そうなのね。あ、そうだ。ショーマはソラを探しているのよね。今洞窟に居るわよ。私は少し出掛けてくるから。夜には戻るわ』
「わかった。いってらっしゃい!」
ショーマはサクラに言われた通り、洞窟へと向かう。
「ただいまー。ソラさん居るー?」
『おー、お帰りー。仕事は順調?』
「ソラさんのお陰で縄張り内は終わったよ!」
『それは良かった。お疲れ様。そうだ、西の山でミツキに会ったかな?』
「うん。いろいろ教えてもらった!今度遊びに来るって言ってたよ」
『へぇー。楽しみだな』
「で、それはどうしたの?」
ソラの隣に何やら大きくて丸いものが置いてある。
『これか?何だと思う?』
「石?にしては綺麗な色だね」
『ははは。石か!これはね、ショーマの兄弟だよ。』
「へ?ドラゴンの卵ってこと!?さっきサクラさん何も言ってなかったけど!」
ショーマは恐る恐る卵へと触れる。
『そっか。産んだの結構前だったから、言うの忘れたんじゃない?』
「ぇえ!?忘れるって、どれくらい?」
『もうすぐ半年になるかな?』
「そんなに!?俺、どんだけ帰ってなかったの・・・」
ショーマはがっくりと肩を落とす。
『しょうがないよ。女神様に言われた仕事を頑張ってたんだから』
「うぅ。兄弟の誕生に立ち会えなかったなんて」
『うん?誕生はまだ先だよ。ほら、まだ卵だから』
「あ、そうか!そうだった!!あとどれくらいで生まれるの?」
ショーマは目を輝かせる。
『そうだね、順調に行って1年くらいかな?』
「わかった!それまでには絶対帰ってくるから!」
『また何処かに出掛けるの?』
「女神様に勢力拡大の任務をもらっちゃって。今度は北側にー」
『大変だね。頑張って!』
「うん!頑張る!でもその前に、また剣の稽古をつけてもらってもいい?」
『うん。いいよ。今日はサクラが出掛けてるから、明日からでいいかな?』
「全然OK!よろしくね!」
卵は弟かなー。妹かなー。ちょー楽しみ!
◇◇◇◇◇
魔王に新しく家族ができるらしい。
彼は次なる勢力拡大を北へと向けたようだ。
北は今まで見たことが無いものばかりだが、果たしてすんなりと事が進むのか。
◇◇◇◇◇
ショーマはウルシに跨がりルリを連れ、北方へ向かう。北方の地図が無いので、とりあえず北の果てを目指す予定だ。
北上するにあたり、ショーマは自動筆記の地図魔法を開発した。通った場所を次々地図に起こしていく。縮尺も全く問題ない。
順調すぎる。てか縄張りの西側より魔物が少ない?ローラー作戦じゃないからこんなもんなのかな。こんなときは女神リンク!ってね。
「もしもし、女神様?」
―――どうしたの?
「あのさ、今北側に来てるんだけど、ドラゴンの縄張りより魔物が居ない気がして。何か心当り無い?」
―――え?なんでだろう。
「心当りが無ければ別に良いよ」
―――ちょっと思い付かないかな。ごめんね。
「オッケー。サンキュー」
女神様には気にならない程度なのかな。
◇◇◇
ある晩、ショーマはいつも通り地図を描いていると、ルリがウルシに寄り添っていることに気付く。
地図を書き終えたショーマはウルシとルリの傍へ寄り話し掛けた。
「ねぇ、ルリはもしかして女の子だった?」
ルリは頷いた。
「ごめん。俺、小さいけど角があるから男だと思ってた。男っぽい名前を付けなくてよかったよ」
ルリは顔を背けた。ちょっぴり拗ねてるみたいだ。
「ルリ、ごめんね?」
ショーマはルリの頭を撫でながら声を掛ける。
俺最近、ウルシとルリの気持ちがちょっと判ってきたかも。
「ウルシ、二人は恋人同士なの?」
ウルシが頷く。ちょっぴり誇らしげだ。
「それはおめでとう!良かったね!」
ショーマは2頭を祝福した。
そろそろ矛盾が出てきそうです。頑張ります。