6―○○に擬態する
※2/7…商人の言葉使いを修正しました。
「――起きて。お嬢ちゃん。起きて」
・・・うるさいなー。早く起きてやってよ。
「ねぇ、起きてってば」
「・・・ふぇ?」
ショーマは身体をユサユサと揺すられて、起こされているのが自分である事に気付く。目を開けると知らないお姉さんがショーマの事を心配そうに覗き込んでいた。
あ、そうだった。俺、拐われたんだった。
そして、己が捕らわれの身だと言うことを思い出す。
「はぁ良かった。お嬢ちゃんがなかなか起きないから焦ったよ。妹ちゃんも胸は上下してるけど、他は微動だにしないし」
ギクッ!人形だってバレる!!
「あっはは。い、妹は一度寝たら自分から目覚めるまで何をしても起きないんですよぉ」
ショーマは背中に冷や汗が流れるのを感じつつも苦し紛れな言い訳をする。
「ふぅん、そうなの?それにしても、お嬢ちゃん綺麗ね。いくつ?」
俺、女の子の振りした方が良いよね・・・。
「キレイなんてそんなぁ。わたしは13歳ですぅ。あは☆」
ぐはッ。演るキャラ間違えた。これは死ねる。
「13歳なの?10歳くらいかと思った」
「そ、そうですかぁ・・・」
俺、13歳の男子です。もうすぐ14歳になる根っからの漢です・・・。
ショーマは精神的大打撃(ほぼ自爆)を受け目が完全に死んでいるが、部屋が薄暗いのでお姉さんは気付かない。
ショーマは口から魂が抜けそうになりつつも、情報収集をするためお姉さんに話し掛けた。
「お姉さん達もぉ、みんなアルカンから連れてこられたんですかぁ?」
「違うよ。みんな別の場所で捕まったの。ここで初めて会った子ばっかり」
「そうなんですかぁ。わたしたちは今日アルカンに初めて来たんですよぉ。なのにこんな事になっちゃいましたぁ。おじいちゃん絶対心配してるだろうなぁ」
ショーマは話しつつもこのお姉さんに違和感を感じていた。
なんでこの人、普通に話してるんだろ。あっちの子達は結構深刻そうな顔をしてるけど?もしかして、監視役!?
ショーマは警戒レベルを数段上げる。
「そうだ、お嬢ちゃんの名前はなんて言うの?」
「わたしはぁ・・・ティアって言いますぅ。お姉さんの名前はなんですかぁ?」
咄嗟にショーマは学校でジェレミアに勘違いで呼ばれた愛称を偽名に使った。
「ティアちゃんね。かわいい名前。お姉さんはレベッカよ」
「レベッカさんですねぇ。よろしくお願いしますぅ」
ショーマは自身が喋る度に精神攻撃を受けている有様だが、とりあえずは一命を取り留めた様だ。なんとかレベッカから情報を引き出す事に成功する。
今ショーマ達の捕らえられている場所はアルカンの沖に浮かぶ島で、夏場しか人間はやってこない。空でも飛べない限り脱出は不可能だろうと言うことだ。
今すぐにでも脱出できるけど?とショーマが思ったことは伏せておく。
誘拐犯は少女たちの事を原石と呼んでいるらしい。青・黄・赤の三色があり、年齢で分けられているのでは?と推測出来る模様。犯人達はショーマとアンズは青だと言っていたそうだ。そして、今倉庫内に閉じこめられている娘達で商品が一応揃っている。(その内一人はすでに空気人形に成り代わっており、更に一人は少女ではなく少年だが・・・。)
誘拐犯の会話によると現状に満足しておらず、今夜にも数名の被害者が増える可能性が高いそうだ。
誘拐犯は声しか知らない者が四人、少女たちの世話をしている者が二人らしい。声だけの者の内一人は頭と呼ばれているそうだ。彼はいつも夜中にやってくる。
ショーマは先程前室で見たのが世話係の者で、頭以外の三人が実行犯だろうと当たりをつけた。顔はアンズを拐った者しか見ていない。
レベッカは最初に連れ去られた被害者で、もう嘆くのも飽きたと言っていた。いつか逃げようとずっと外の様子を窺っていたところ、明日の朝に犯人達はここを離れる算段を付けているらしい。彼女はそのタイミングで船を奪い逃げようと画策しているそうだ。
被害者の内、大人の女性は実行役として彼女の計画に協力する。他の少女たちも力を貸す事になっているらしい。ショーマは完全にレベッカの事を信用した訳では無いが、一応力を貸すことにした。
以上を踏まえ、ショーマはこれからどう動くのが最善なのかをぐるぐると考える事になる。
被害者内訳
18歳以上・・・3名(赤)
11~17歳・・6名(黄)内一人少年
5~10歳・・・9名(青)内一人人形
誘拐犯の会話から推測すると、集めるべき商品の数は赤3黄5青10。ショーマの年齢を勘違いしたせいで、本当は青が一人足りていない。
◇◇◇
その大男はアルカンの港近くの倉庫にひっそりと佇む。ここはキリナントル商会の積荷を一時的に保管する倉庫だ。
「すいません。遅くなりました」
後から来た身なりの良いつり目の男が大男に話し掛ける。
「いや、俺も今来た所だ。それで、ニック達の方は当初の予定通りか?」
「出発時刻が午後2時から午前10時に変更です。急がないと明日にも寒波が来るらしいので。そのまま船で王都に向かいますが、オズ達も一緒に乗りますよね?」
「いや、俺達はあいつら次第だな」
「そうですか。自警団へはこちらから伝えましょうか?」
「後で俺の方で伝えておく。エドの用意もあるからな」
「そうでしたね。そちらは任せました」
二人が予定の擦り合わせを終わらせると、オズと呼ばれた大男は倉庫から出る。ニックと呼ばれたつり目の男は何事も無かったかの様に検品作業に取り掛かった。
◇◇◇
ソラとシドは集合場所である“レッドベリー”と言う名の食堂へとやってきた。店の中を覗くが、まだリンドは来ていない様だ。
「スカイ、ジエンさんはまだ居ないみたいだ」
「まぁ、集合時間を決めてないって書いてあったから。適当にお茶でもしながら待ってよう」
二人は入り口を見やすい奥まった席を選んで座り、お茶と軽食を注文する。
「まだ夕方で良かったね。これが夕食時だと長時間は居座れないよ」
シドは注文を終え人心地つくと店の混み具合を見て安心した。
「確かに。・・・はぁ。なぁ、ブラウン。ウィスは一人で大丈夫だろうか」
ソラは右肘を机に付き、その手で頭を抱える様にクシャッと髪を乱した。シドは回りを確認し、魔物の言語に切り替える。
『急にどうした?ウィステリア君はスカイが鍛えてるんだ。学校で何度か練習を見たけど、並の人間ではどうすることも出来ないと思うよ?』
『それはそうだけどさ。でも心配だよ。間違って相手を殺してしまいそうで・・・』
『そっちっ!?』
シドは思わず突っ込む。ソラはそれを気に留めずに話を続ける。
『前の人生で人殺しを命じられて、それは絶対に嫌だと思っていたらしい。
でも、もし、仮に、万が一。ウィスがその手で人間を殺してしまったら、彼の中の何かが壊れてしまうんじゃないかと心配なんだ』
『そっか・・・』
二人は運ばれてきた熱いお茶をゴクリと飲む。ソラは重いため息を吐く。それを見て、シドは少し考えをまとめると話し出した。
『でもさ、きっとウィステリア君は今後どこかで人間を殺める事になると思う。こんな世界だからね。しかも女神様はそれを望んでいる。ウィステリア君も自分でやりたくないからと他人にやらせる様な卑怯者ではないし。
・・・これは魔王という役目から逃げた私のせいでもあるのかな』
『いや、ブラウンのお陰でウィスは僕の息子になったんだ。感謝しているよ』
『そう言って貰えると、少し気が晴れるよ』
二人は遣りきれない気持ちを溜め息と共に吐き出しながら、待ち人の未だ現れない入り口を見つめた。
二人は知らない。美形が憂いを帯びた姿の破壊力を。偶然居合わせた女性達の心を虜にしてしまった罪深さを・・・。(この話は続かない)
朝木 「あー、ショーマごめん。そんなブリッ子キャラにするつもりはなかったの…」
朝木 「許してちょ(*ゝω・)てへぺろ」
ショーマはうまーく少女たちの中に溶け込んでおります。笑
徐々に情報が集まりつつありますね。
あっちらこっちらで隠謀渦巻く~。
Σ(゜Д゜≡゜Д゜)?
あ、これ回収率悪いヤツじゃね?
…(;・∀・)
次回、ソラとの連絡の取り方について。です。
ショーマは画期的なアイデアを思い付くことが出来るのか!?
そしてきっとキリが悪い!(。>д<)
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
前話で20万字を超えていました。
ここまで続けられて正直びっくりです。
基本三日坊主なので…。
皆様のおかげです。
ありがとうございますm(_ _)m
※サブタイそろそろちゃんと付けようかな…。