5―ソラとシドに伝わる
ソラはショーマに鳥肉を強請られ、朝からシドと一緒に猟に出た。猟場は洞窟から南西に向かった山の麓だ。
『ソラ、そっちに行った!』
『分かった!』
ソラはシドの声に返事をすると、弓を引き絞る。ほぼ同時に木々の間から鳥が飛び出して来た。
バサッ
ビュンッ、ザシュッ
ギャーッ、ドサッ、バサバサ
ソラは矢を放ち一発で仕留める。鳥はバサバサと藻掻いて矢から逃れようとするが、直ぐ様ソラに紐でグルグルと括られ為す術もなく拘束される。この場で解体などはせず、生きたまま洞窟まで持って帰る様だ。
ソラが鳥を縛っていると、樹上からシドが重力を感じさせない程にふわりと降りてきた。
「なんかこうやってソラと狩りをするのも久しぶりだな。昔を思い出すよ」
「そうだな。僕がこっちに住む事になって以来か?」
「たぶんそうじゃないかな?
いやぁしかし、ショーマ君の考えた隠蔽魔法はすごいな!」
「ああ。風上で待ち構えても獲物は気付かず楽に狩れるから、猟に掛かる時間がかなり減って助かってるよ」
「身体を丸ごと覆ってしまうなんて盲点だった。私は風で散らす事しか考え付かなかったから」
シドはショーマの考え出した隠蔽魔法を絶賛している。ソラは捕まえた鳥を背負子の籠に入れて蓋を閉じる。
「――なぁ、その私ってやつは何とかならないのか?どうも違和感が拭えない。昔は俺って言ってただろ?」
「今まで長いこと教員だったからね。俺より私の方が威厳があるだろ?でもソラだって僕って言うじゃないか。ククッ。全然似合わないし」
「うるさいな。僕は改心したんだよ」
「ふーん?」
プイッとそっぽを向いたソラをシドはニヤニヤと覗き込む。案外この双子はソラの方が弄られる側なのかもしれない。
「そんな事より、もう少し狩るぞ」
「はいはい。今度はソラが追い込みの番だからな」
「分かった。昔みたいに間違えて僕を射るなよ?」
「フフッ。ソラが考えなしに突っ込んで来なければ大丈夫さ」
二人は楽しそうに狩りを続けた。
◇◇◇
ソラとシドは昼休憩を挟んで更に狩りを続け、3時頃にやっと洞窟前の広場へ戻って来た。
半日の狩りの成果は鳥7羽、猪1頭。概ね上々だ。
洞窟近くの解体場ではソラが鳥の羽を毟り、シドが猪の毛皮を剥いでいる。
突如シュピーンと言う音がしてソラの目の前に淡く光る手紙が届いた。
「ぅわっ!」
「どうした?」
「急に手紙が届いた」
「はは。そんな手紙の差出人はショーマ君しか居ないでしょ」
「それは分かってる。ただ驚いただけだから」
ソラは手紙を読むべく手に取った。すると、手紙が纏っていた光がフッと消える。シドは解体の手を止め、ソラの近くに来た。
「何て書いてある?」
「ちょっと待って、今読んでる・・・。
――ショーマとアンズちゃんが人間に誘拐されたらしい」
「は?」
「だから、子供達が誘拐されたんだって」
「いや、なんで誘拐された子供から直接手紙が届くんだ?」
「まぁ、ショーマだから。理不尽な方法で相手の人間を気絶でもさせたんだろう」
「うん。それはなんとなく想像がつく。と言うか、その手段を教えたのはたぶん私だな」
「おい。はぁ、まぁいいや。それで、アンズちゃんを洞窟に転移させるから、準備が出来たら教えて。だそうだ」
「え?アンズだけ?ショーマ君は帰って来ないのか?」
「なんか、一緒に捕まってる女の子達を助けたいらしい。
シドは魔力が見えるのか?」
「ああ。魔道具を使えば見えるよ」
「魔力が見えるシドと一緒にアルカンに来てくれって書いてある。それでリンドさんと合流してくれって」
「分かった。ここはどうする?」
「とりあえず血抜きだけやっておこう。今日は寒いから悪くはならないだろうし」
ソラは手紙を懐に仕舞うと、今手掛けていた鳥は放置し他の鳥の処理をしていく。シドは途中までやった毛皮剥ぎをキリの良い所まで進める。
二人共に手際よく処理を行うと、血で塗れた手を洗い洞窟へ入っていった。
◇◇◇
ソラは状況をサクラとカエデ、ツバキに話した。
「やっぱりアンズには早かったかなっ?今回はショーマ君が居たから良いけどっ。帰って来たらお説教だねっ」
「そうだね。私はソラとアルカンに行くから、アンズの事は頼んだよ」
シドはソラから手紙を見せて貰い、いろいろと準備をする。
「ショーマは無事なのよね?」
「大丈夫みたいだよ。ただ、夕飯は作れないからサクラにごめんねって書いてあったよ」
ソラはロングソードを腰に帯びながらサクラに答える。
「もう、あの人は孫をほっぽって何をやっているんだか」
「リンドさんはお墓参りに行っているそうです。ショーマとアンズちゃんから提案したみたいですよ。
ショーマは人間の町に馴れているので、二人でどうにかなると思ってたみたいですね」
「ご免なさいね。こんなことになってしまって」
「いえ、お気になさらず」
「ソラ、準備出来たぞ」
メガネを掛け、杖を携えたシドがソラに話し掛ける。
「ああ、分かった。
それでは今からショーマに合図を送ります」
ソラは目を閉じ、ショーマとの繋がりを感じる。そして、その繋がりをクイクイッっと手繰った。
「たぶんこれで来ると思います」
ソラが合図を送って直ぐに広間に魔法陣が浮かび上がった。そして一度光ると、アンズがちょこんと座った状態で現れる。
「アンズ!良かった!」
「アンズっ!知らない人間に着いて行っちゃダメでしょっ!」
ツバキとカエデはアンズに駆け寄り、抱き締めた。
「アンズ、みんなに言うことは無い?」
「――うぅーごめんなざーい!!」
アンズはシドに促され、ポロポロと泣きながらみんなに謝った。
「アンズはしっかり反省すること。じゃあカエデ、後は頼んだよ」
シドはアンズの頭を撫でるとカエデに後を託し、洞窟を出た。
シドが洞窟の外に出ると、ソラがドラゴンの姿で待っていた。
『さて、アルカンに向かおうか』
「道中頼んだよ」
『誰に言ってるんだよ』
ソラが翼を羽ばたかせるとブワッと飛び上がり、一気に上空へと加速した。
◇◇◇
ソラは洞窟を飛び立って、30分もしない内にアルカンの上空へ辿り着いた。この世界一の飛行速度は伊達では無い。
『ショーマはあの島に居るのか』
『だろうな。手紙の通り西の浜に小屋がある』
速度が速すぎるので、シドは魔物の言語でソラと話している。狩りの時もそうだが、いろいろと使い勝手が良いらしい。
『何にしろリンドさんと合流するのが先か。シド、何処か降りれそうな所はあるか?』
『えっと・・・。あそこの廃屋の庭なら人目に着かないんじゃないか?』
『うん?あれか。分かった。シドは先に降りて』
『了解』
シドはそう言うと、ソラの背を蹴って廃屋(ソルマンティの屋敷跡)の庭に向かって落ちていった。ソラも空中で人化すると後を追う。
二人は加速しながら一気に高度を下げる。地面が近くなると風を操り、ふわりと着地した。ドラゴンの中でもこの二人にしか出来ない芸当だ。
「よし。とりあえずショーマの居る場所の確認も出来たし、集合場所に行くか」
「ああ。リンドさんはもう居るかな」
「居るんじゃないか?」
二人は集合場所の食堂へと歩いて行った。
朝木 「書いててどっちがどっちか判らなくなる不思議」
朝木 「なんか、ショーマ心配されてないな」
ソラシド「だってショーマ(君)だから」
朝木 「ファッ!?」
あの双子は結構規格外です。
女神様設定で生まれてますから~。笑
次回、ショーマ本気で悩む。です。
どうやって脱出する気なのでしょう?
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作者都合で、次回の更新は12月26日(水)になります。
そして、年内更新は12月26日(水)、12月28日(金)で終わりとなります。年末年始のバタバタを乗り越え、2019年最初の更新は1月7日(月)予定となります。
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