3―リンドの墓参り
遅くなりました。
リンドはショーマとアンズと別れた後、アルカンの南町をさ迷っていた。
「さっき広場にいた人は領主の屋敷は南町にあると言っていたな。わしの記憶では北町だったと思ったのだが。まぁ、100年も経てば場所も移るか?
しかし、ここはどこなのだろう」
リンドは完全に迷子になっていた。
「ちょっとすいません。少しお話良いですか?」
リンドは背後から突然声を掛けられた。良い歳した大人がブツブツと独り言を言いながら宛もなくさ迷っていたら、それは最早不審者だろう。
声を掛けてきた男性はこの町の警備兵の様だ。歳は20代後半くらい。腰には剣を帯び、皮製の胸当てなど簡易的だが動き易そうな装備に身を包んでいる。
普通なら背後から声を掛けられたら驚く所だが、鼻の良いリンドは人間が近付いている事に気付いていた。
「ちょうど良かった!領主様の屋敷を探しているんだが迷ってしまってな。ちと教えてくれないか?」
「いや、あの、目の前の建物が領主様のお屋敷ですけど・・・」
リンドは既に領主の屋敷の目の前に居た様だ。
「これが?本当にここなのか?」
「そうですが」
「うーん。今代のソルマンティはどうも趣味が悪いな」
目の前の建物は一見豪華だが、どこかチグハグで調和がとれていない。
いや、調和どころの話では無い。例えるならば、凱旋門を潜ったら目の前にサン=ピエトロ大聖堂、かと思いきや目線を横にずらせばヴェルサイユ宮殿と言うくらいにごちゃ混ぜだ。
イタリアのチンクエテッレを彷彿とさせるカラフルな町並みからもかなり浮いており、思わず設計者を問い質したくなる程に酷い。
「――あの、ここはソルマンティ様のお屋敷ではありませんよ?」
「うん?アルカンの領主はソルマンティではないのか?」
「ええ。今の領主はロクサンド様です。ソルマンティ様のお屋敷跡にご案内しましょうか?」
「良いのか?是非お願いしたい」
リンドは警備兵に連れられて、領主の屋敷を後にした。
◇◇◇
リンドは警備兵に連れられて、アルカンの北町にあるソルマンティの屋敷跡地にやってきた。
「ここがソルマンティ様のお屋敷が建っていた場所です」
「これはどうしたんだ。何故こんな事に・・・」
リンドの目の前には惨状が広がっていた。
建物の基礎や腰壁であったであろう石積は辛うじて残っているが、その上に有った壁や柱、屋根などは所々崩れかけて残っている以外はほとんどが焼失していた。
「この国では数年前に政変が起こったのですが、その時に元王族側に着いたとしてソルマンティ家の方々は王都へ連行されました。財を全て没収された後にお屋敷は徹底的に破壊されこの有り様に」
「なんと。アルカンに太陽の民が居なくてはマーシー共が煩いだろうに」
「ええ。お陰でここの海は荒れ漁獲量が減り、この地は干ばつと寒波に見舞われ作物があまり育たなくなってしまいました。
税収が減って困った領主様が現国王に泣き付き、今年の夏に当主であるライアン様はマーシーへの贄として、人魚島へ送られるそうです」
「そんな事をしたら、マーシー共は更にへそを曲げるだろうな・・・」
二人の間に沈黙が訪れる。
「――あの、不躾で申し訳ないのですが、貴方はジエン様ではありませんか?」
「いかにもわしはジエンだが。何故知っている?」
「申し遅れました。私はテッドと申します。ソルマンティ家に執事として仕えておりましたモーリスの曾孫です」
「おお!モーリスの曾孫か!あの頃のモーリスはまだ歩かないくらいの赤ん坊だったんだがなぁ」
「そうだったのですね。曾祖父は生前、青紫色の髪と目をした御仁がソルマンティ家を訪ねて来たら粗相の無いようにと言っておりました。まさか本当にいらっしゃるとは思いませんでしたが」
「ははは。流石にモーリスも死んだか。やはり人の時は流れが早いな・・・。」
リンドは寂しそうに呟いた。
「テッドと言ったか。君はわしの正体を知っているのだな?」
「はい。存じております」
「そうか。わしはただ皆の墓参りに来ただけなのだよ。時間があれば墓まで案内してもらえないだろうか」
「ええ。お任せください。当時の領主様も曾祖父も喜ぶと思います」
リンドはテッドの案内でソルマンティ家とその関係者の眠る墓所へ向かう事になった。
◇◇◇
リンドはテッドと北町の北にある墓所へ向かっている。ソルマンティ家の墓所はアルカンの町を囲む塀の外にあるらしい。二人は世間話をしながらのんびりと歩いている。
「ほう。テッドは三人兄弟の真ん中なのか」
「そうです。兄が家業を継いで執事見習いでした。私は町の警備兵をしていましたが、政変の折りに解雇され今は自警団に所属しています」
「ふむ。であれば、テッドの兄はソルマンティの者と一緒に捕らえられているのではないか?」
「はい。ソルマンティ家の方々と一緒に王都へ連れて行かれましたが、たまに手紙が届くので心配はしていません」
「そうか。早く戻って来れると良いな」
「甥や姪も待っているので、早く帰ってきてほしいですね。あ、墓所はこの門の外です」
テッドが門に居る仲間に話しを通し、二人は町の外に出た。
「墓は町の外にあるのか。通りで見たことが無い訳だ。
テッドは三人兄弟と言ったが、弟は何をしているんだ?」
「弟はライアン様の次男であるルーベンス様と共に海に出たきり行方不明になっています。もう、戻って来ないのではないでしょうか」
「そうなのか。変な事を聞いたな」
「いえ、お気になさらず。
そうだ、ジエン様は今日お一人でいらしたのですか?」
「いや、孫達と買い物に来たんだ。わしがアルカンに住んでいた事を言ったら、墓参りに行ってこいと送り出されてな。それで場所が知りたくてソルマンティの屋敷を探していたのだ」
「そうだったのですね。私がリンド様とこうして出会えたのはお孫様達のお陰ですね」
「そうだな。孫に今日行かないと次は墓の場所が判らなくなると言われて来たが、正解だった様だ」
「今後お屋敷の様に破壊されるかもしれませんからね。今日来て頂けて良かったです」
二人は寂れた北門の外、山の麓にある墓所に辿り着いた。墓所は町とは違い雪が降り積もっている。ここが神殿や聖域と言われても納得する程に神秘的な空気が満ちていた。
墓所には石造りの割りとしっかりした建物が大小三つ並んでいる。中央が大きく立派で、その左右に一回り小さな建物が配置されている。中央の建物の高さは裕に10mは超える。
リンドはテッドと中央の建物の前へ来た。
「ジエン様、中央がソルマンティ家の墓所です。右手が家臣、左手が従者となっています。ただ、今後ここへ埋葬される者は居ないと思いますが」
「そうか。――ここまでの案内、感謝する」
「いえ、これもソルマンティ家に仕えていた者の務めです。
では、私はこれで失礼します。何か御用がありましたら、ノースウェイ三番街にある自警団の詰所までお越しください」
「ああ。何か有れば寄らせて貰う」
テッドはリンドをその場に残し、町へ帰っていった。
朝木 「ショーマが一度も出ないの初めて!」
朝木 「そして、謎が謎を呼ぶ?」
朝木 「ここをこうして、あれはどうして…」ブツブツ
リンドの知り合いはアルカンの元領主だった様です。
次回、ショーマがアンズを説教!です。
うんうん。しっかり叱らないとまたやるよね。
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