2―誘拐事件2
ちょっと遅くなりました。
ショーマは一人考える。
とりあえず、誰かと連絡を取りたいな。えーっと・・・連絡取れるのソラさんだけか。こんな事ならみんなに隷属魔法を掛けておけばよかったー。そうすればじいちゃんとも連絡が取れたのに。
そもそも魔法を掛けてればアンズ姉ちゃんと一緒に捕まったりしなかったよね。あんな必至に捜さなくても、繋がりを辿れば良いだけだもん。はぁ、帰ったらみんなに掛けさせてもらおう。
さて、何をするにしてもまずは鞄を回収するか。誘拐犯が一緒に持ってきてくれてればいいんだけどね。
ショーマは扉を開けようと取っ手に手を掛けた。
あれ?鍵が掛かってる?俺らの手足を縛っておいて、扉に鍵まで掛けるってかなり鬼畜じゃない?
ショーマはガチャガチャと扉を揺するが、閂が上がる気配は無い。
ショーマは取っ手から手を離すと、扉の前に腕を組み仁王立ちになった。
「フン。この程度で俺を捕らえたつもりか?
・・・――――ッ///」
ショーマは言ってしまってから羞恥に苛まれ、真っ赤に染まった顔を両手で隠し、指の隙間から周囲をキョロキョロと見回す。幸いアンズを含め全員が気絶しているので誰もその場面を見ていなかった。
コホン。さて、遊んでないでさっさと脱出しますかね。向こう側の人は、うん。気絶してるっぽい。
ショーマは顔を赤らめつつも扉に耳を当て、見張りが居るであろう外の気配を窺う。外に動く気配が無いのを確認すると、扉の向こう側へ転移魔法の出口を設定し難なく倉庫から前室へ脱出した。
◇◇◇
ショーマは前室へ出た。前室は倉庫と同じくらいの広さがある。こちらがこの小屋メインの部屋の様だ。壁には大きな窓があるが今は冬だからか板がブラインドの様に打ち付けてある。光は多少入っているが薄暗い。
ショーマは前室で倒れている二人の男に近寄る。
「もしもーし、起きてませんよねー?」
ペシペシと男の頬を叩いて完全に気絶している事を確認する。
うん。起きないね。さてさて、俺の鞄はここにあるかな?
ショーマは辺りを見回す。すぐに入口横の棚の上に置かれた鞄を見付けた。
誘拐犯も親切だねー。中身は・・・あれ?全部そのままだよ。お金は取られたかと思ってたけど。まぁいっか。とりあえず、ダイコンとブリを洞窟に転送しますか。折角アルカンまで来て買ったんだから、無駄にしたくないもんね。
ショーマは鞄からダイコンとブリを取り出すと、転移魔法で洞窟の氷室に転送した。
よし。で、次は・・・ここが何処か確認するか。見張りのオッサン達寝てるし、外に出てもバレないよね?
ショーマは鞄を肩に掛けるとそのままコッソリ小屋の扉を開けて外に出た。
◇◇◇
割とあっさり小屋から脱出したショーマは、目の前の光景に息を飲む。
これは想定してなかったな。絶海の孤島――まではいかないにしても、陸地が見えないなんて。
小屋の前には砂浜が広がり、その先にはどこまでも大海原が続いている。小屋から波打ち際までは10m程の距離しかないが、ちょっとした丘の様に少し盛り上がっている。満潮時でも小屋まで海は上がって来ないだろう。
ショーマは数歩海へ向かって歩き、小屋の方を振り向いた。
小屋の裏は森なのか。意外とこの森の向こうは地続きだったりして。
小屋の裏には針葉樹の森が広がり、砂浜を半円状に囲んでいた。小屋は浜の中央辺りにある様だ。ショーマはまた海へ向き直る。
あれ?あそこに見えるのってキリなんとか商会の商船じゃない?アルカンで見た時より近い気がするけど。
ショーマが右に視線を移すと、キリナントル商会の商船が見えた。
って事は、ここはアルカンから少し離れた島か半島って事かな?海岸からは見えなかったよね?でも有ったのか。うーん。不思議だ。
ま、いいや。とりあえずこの足跡を辿ってみるかな。
ショーマはこの地について考えつつも、周囲の状況把握をしようと砂浜に残る足跡を辿る事にした。
◇◇◇
ショーマは足跡を辿り、護岸までやってきた。
ここは船着き場?随分とキレイに整備されてるけど。小型の漁船くらいなら停泊できそうだね。
ショーマはそのまま歩いて護岸の先端までやってきた。
やっぱりあの帆船はキリなんとかの商船だね。で、アルカンはあの塀の向こう側か。なるほど。塀が邪魔でこっちは見えなかったのか。
護岸の先からは遠目だが、アルカンを囲む塀が見えた。
さて、一度小屋へ戻るか。みんないつまで気絶してるかわかんないしね。
ショーマは小屋へ戻る事にした様だ。しかし、少し戻ると森の奥に続く小路を発見する。
おや?こんな所に道があるよ。しかもちゃんと石で舗装してあるし。さっき通った時は海ばっかり見てて気付かなかったな。
この先に何かあるのかな?うーん、どうしよ。ちょっとくらいなら平気かな?何だかんだ言ってもドラゴンだし。
ショーマは小屋に残して来たアンズを一瞬心配したが、大丈夫だろうと小路を進む事にした。
◇◇◇
ショーマは森の中の小路の進む。その道は最初こそ平坦だったが、徐々に勾配がきつくなってきた。
この先に何があるんだろ?ワクワクするね!
この程度の勾配では、山に住むショーマには大した苦でも無い様だ。鼻歌混じりに楽々と登って行く。
小屋の裏は森じゃなくて、山だったのかな?意外と登った気がする。あ、あそこで開けるね。
今まで鬱蒼と繁っていた木々が急に途絶え、目の前には立派な建物が鎮座していた。
おぉー。立派な家だー。・・・人がいる気配は全く無いみたい。別荘とかかな?
ふーん。向こう側に玄関があるから、俺が登って来たのは裏口ってとこか。あ、玄関側にも道があるっぽいね。
ショーマは建物の玄関が正面とすると、右手に居る。どうやら使用人用の道を登って来た様だ。
とりあえず戻るか・・・あれ?あっちにも道がある。方向的には小屋に向かってそう。
ショーマは建物の裏に見付けた道を下る事にした。
ショーマはフンフンと鼻歌を歌いながら駆け抜ける。
新たに見付けた道の勾配は緩い。それは元の急勾配を緩和する為のものであり、実情はジグザグと折り返しのカーブを取りながら下へ延びていた。ショーマはその道程にめんどくささを感じ、折り返しのカーブの部分をトントンと跳んで下りている。ショーマにとっては3m程の高低差もただの階段とさほど代わらないらしい。
フンフンフーン。とうちゃーく。
やっぱり、小屋の裏手に着いたか。この小屋って海の家みたいなものかな?
とりあえず元の部屋に戻るかな。
ショーマはそう決めると、転移魔法でさっとアンズの隣に転移した。
「ふいー。ただいまっと・・・」
ショーマは回りを見回す。
まだ誰も起きてないのか。じゃあ、いろいろ始めますかね。
ショーマはソラに連絡を取るべく、鞄から紙と鉛筆を取り出した。
朝木 「あー、ショーマを早く後書きに出したい!」
朝木 「でも一応今は囚われの身だしなー。笑」
ショーマは楽々脱出しましたが、一度倉庫に戻りました。
どうやって正式に脱出しようか考え中の様です。
次回、その頃リンドは… です。
ショーマとアンズと別れた後のお話です。
孫達が誘拐されるなんて夢にも思ってないよね。
(;・∀・)
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