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1―誘拐事件1




 男が三人、小さな船に乗りアルカンを離れた。足下には大きな麻袋が二つ積まれている。


「まったく、この町の警備はどうなってるのかしらねぇ。これなら前回の村の方がよっぽどマシよぉ。まぁ、お陰様で仕事は楽々なんだけどねぇ」


 髪の長い細身の男が口を尖らせる。


「領主と組織が近いからだろ。海は賊が使うからノーマークって事だ」


 ガッチリとした体躯の大男が呆れ顔で答える。


「それにしてもよ、いくら仕事でも(ひと)(さら)いなんてやりたくねぇな。後で助けるっつっても心がいてぇや」


 日によく焼け浅黒い小柄な男が顔を(しか)める。


「我々は組織に潜入してるんだ。汚れ仕事は仕方がない」

「そうよぉ。ワタシ達には後で助けてあげる事しか出来ないのよぉ」


「んなの、俺だってわかってら」


 三人はそれっきり沈黙した。船はゆっくりとアルカンの沖にある島へと近付いて行く。




  ◇◇◇




 三人組は離れ孤島の護岸に船を着けた。細身の男はひらりと、大男は二つの麻袋を小脇に抱え船を降りる。小柄な男が船を繋留(けいりゅう)している間に、細身の男は砂浜をずんずん歩いていく。そして砂浜にぽつんとある一軒の小屋の扉を躊躇(ちゅうちょ)なく開いた。


「はぁいオニイサン方、お待たせぇ」


 奥からひょっこりと男が二人顔を出す。


「おい、ノックくらいしろや」

「寿命が縮んだっすよ」


 小屋の中に居た男達は、口々に文句を言う。


「で、商品は?持ってきたんだろ?」


 二人の内、態度の大きい方の男が細身の男に問いかける。


「青を2つ追加よぉ。これで最低限は揃ったかしらぁ?」


「兄貴、良かったっすね」

「あぁ助かったぜ」


 細身の男が小屋に居た男達と話している間に、大男が小屋へ入ってきた。態度の大きい兄貴と呼ばれた男が大男に問いかける。


「どんな商品だ?」


「よそ者の姉妹だな。姉が10、妹が7って所か」


「余所もんか。どれ、顔を見てやろうか」


 大男は麻袋を開けて、ショーマとアンズを袋から出した。二人は手足を縛られていて、その場に転がされる。未だ意識を取り戻していない様だ。


「おぉ!これまたキレーな顔じゃねーか」


「でしょぉ?ワタシが市場で見付けたのぉ。保護者も居ないし楽勝だったわよぉ」


「へぇ、親無しっすか。騒がれなくて良いっすね」


 兄貴と呼ばれた男が品定めをしている。


「ふんふん。確かにこれは青だな」


「この子の鞄はどうするのぉ?要らないなら町に捨ててくるけどぉ」


 細身の男がショーマの鞄を手に兄貴と呼ばれた男に問う。


「余所もんなら結構金持ってんだろ。こっちで預かって後で(かしら)に渡しとくさ」


「よろしくねぇ」


「とりあえず、嬢ちゃん達は奥に転がしてくれっす」


「わかった」


 下っ端っぽい男に指示された大男はショーマとアンズを奥の倉庫に連れて行き、壁に寄りかからせる。そしてしっかりと扉を閉じ、(かんぬき)を落とした。

 その間に小柄な男も小屋に入ってくる。兄貴と呼ばれた男は小柄な男に話しかけた。


「まだ商品は集められんのか?」


「あぁ、当てはあるぜ。ただ、仕入れは夜を待ってだな」


「今この町の原石(むすめ)に手を出すと、すぐに自警団が出てくると思うのよねぇ」


 細身の男が腕を組み人差し指で顎を触りながら兄貴と呼ばれた男に言う。


「明日の朝までに何とかしろや。朝になっちまえば逃げられんだからよ」


「へいへい。時間の許す限り集めてくりゃいんだろ」


 小柄な男は頭をガシガシと掻き、めんどくさそうに返した。


「ヘタこいて自警団の奴らにバレんじゃねぇぞ?」


「だから(かしら)は俺らに任せたんだろ?その辺は抜かりねぇよ」


 小柄な男はニヤリと笑って小屋を出た。大男と細身の男も後に続く。三人組はまた小さな船に乗り、アルカンへ戻って行った。


 小屋には男が二人残される。


「兄貴、あいつら大丈夫なんすかね。ヘマして自警団に捕まるなんてこたぁないっすよね?」


「まぁ、(かしら)が連れて来たんだ。なんとかなんだろ」


 二人は焚火の傍らへどかっと腰を下ろす。


「しっかし、あのナヨナヨした野郎の目はまちげぇねぇみたいっすね。村から仕入れた原石もなかなか見れるもんでしたぜ」


「あぁ。この町に残る原石にも期待できんな」


「そうっすね」


「まぁ、最低限は仕入れたんだ。(かしら)も怒るまいよ」


「青10、黄5、赤3っすもんね。一度にこれだけ仕入れちまったら、北では当分仕事になりやせんぜ」


「だろうなぁ」


 下っ端の男が薪を投げ入れる。


「それにしても、今の二人はベッピンすぎやしやせん?」


「まちげぇてどこぞのご令嬢でもかっさらってきちまったか?」


「いやぁ、令嬢はねぇっすよ。市場で捕まえたつってやしたから」


「ハハハ。市場に令嬢がいるわきゃねぇか」


 小屋の中に冷気が漂ってきた。


「おい、扉閉めてる、よ、な・・・」ガクッ

「な、なんか、さみー・・・」ドサッ


 小屋の中に居た男は二人とも気絶した。




  ◇◇◇




 冷気の根源であるショーマは独り小屋で起きていた。彼は今、魔力制御を解除中だ。気絶と共に解除されなかったのは、普段から睡眠中も制御しているからだろう。


 なんで俺こんなところにいるんだろ。って、完全にアンズ姉ちゃんのせいだけど。俺と姉ちゃんだけだったらなー。このまま転移しちゃえば良いんだけどさ。


 ショーマは10畳程の窓の無い部屋をくるっと見回して溜め息を吐く。


 はぁ。これ見ちゃったら助けないと後味悪すぎるよね。てか被害者多すぎない?1、2、3、、、俺入れて18人!?この町の警備はザルなの!?


 部屋には明らかに(さら)われて来たと解る娘達が手足を縛られ体育座りのまま気絶している。数名大人の女性も居るが、ほとんどが年端も行かない少女だ。

 目覚めて早々に魔力制御を解除したショーマは知らないが、彼女達はこれから訪れる自分の未来に絶望していた。


 今の俺は何も武器が無いんだよな。()()ってヤツだよ。まぁ、武器が無くても魔法があるから大丈夫だけどさ。とりあえずこれ切るか。


 ショーマは己の自由を奪っているロープを風の刃で静かに切った。縛られていた手首を軽く(さす)る。


 はぁ。ロープの跡が着いちゃったよ。さて、どうやってこの苦境を乗り越えるかな。


 ショーマはヒールを唱え、手首の傷を手当てしながら脱出方法を考え始めた。





 脱出劇どころか、ショーマ捕まったままですね…

 と言うか、持ち味のほのぼの感が皆無!?

 (・・;)



 名前の無い男が大量発生中ですが、そろそろショーマのターンです!笑



 次回、今度こそ脱出劇!です。

 頑張れ私!えっ?笑



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 ムフフー(*>∪<)ノ~~~


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