18―夕飯のお買い物3
前話とほのぼの編5のメルカまでの時間がおかしいなぁ。と調整しました。草原から歩いて1時間の距離にドラゴンが着地したら大騒ぎですよね。
ショーマとアンズを乗せたリンドはアルカンから少し離れた森の中に着地した。
ドスン。バサバサバサ。
着地の衝撃で、周辺の木々から積もっていた雪が落ちていく。
『ふー。わしの背はどうだった?』
「広々でちょー快適だったよ!
よいしょっと。ほらアンズ姉ちゃん俺に向かって飛び降りて!」
ショーマはリンドの背から飛び降りると、背に留まっているアンズに向けて両手を広げた。
「絶対に受け止めなさいよね!・・・うぅ、やっぱり高いっ」
リンドの背はソラやシドに比べて高く、アンズはなかなか飛び降りれない。
「アンズ姉ちゃん、はーやーくー」
「うぅ、えいっ!!」
「ちょっ、うわっ!」ドサッ
ショーマは予定していた所と違う所へ飛び降りたアンズを尻餅をつきながらもどうにか受け止める。
「ふぅ、新雪の上で良かった。あのさ姉ちゃん、飛び降りる時は降りる先をしっかり見てよ。目を瞑ると身体が強張って降りたい所に降りれないから」
「うっ、そんなの、言われなくてもわかってるよ!」
ショーマはアンズを自身から降ろしながら文句を言う。
「てか、ドラゴンが高いところ苦手って何?もっと高いところ飛んでるじゃん」
「うるさいな!」
アンズは高いところが苦手な様だ。ショーマに指摘され睨み返す。
「こらこら喧嘩はするな。さっさと行かないと夜になってしまうぞ」
「「はぁい」」
ショーマとアンズが喧嘩になりそうな所をリンドが止めた。
三人は雪をサクサクと踏み締めながら、アルカンへ向けて歩き出す。
「あ、ちょっと待って」
ショーマは少し進むと、後ろに振り向き魔法を掛けた。途端に今までいた広場が吹雪に見舞われる。
「何コレ」
「何をしたんだ?」
「うん?ドラゴンの着陸地点の隠蔽工作。こうすれば、あの窪みも消えるでしょ」
ショーマはリンドが着地した時に出来た大きな窪みを指して告げた。
「・・・ショーマは天候の魔法が使えたのか?」
リンドはショーマの魔法に衝撃を受けている様だ。
「うーん。雪の仕組みは知ってるから、やろうと思えば降らせられるけど。でもアレは閉鎖空間の中に風起こしてただかき混ぜてるだけだよ」
まるで洗濯機みたいにね。あそこは空気を筒状に固めて囲ってるから回りに被害は出ないはず!
「やっぱりショーマは規格外なんだな・・・」
リンドは小さな声でボソッと呟いた。
「うん?じいちゃん、なんか言った?」
「いや、何も」
「ねぇ、早く行こうよ!」
「そうだな。ショーマ、アレはあのままか?」
「放置で大丈夫。そのうち止むから」
「じゃあ行こうか」
三人は再びサクサクと歩き出した。
◇◇◇
三人が歩き出して、かれこれ2時間程経った頃。前方に漸く町が見えてきた。町の周囲には石積の上に木製の塀が巡らされている。
「へぇー、意外と大きな町なんだね」
「そうだな。この辺の漁村には市場が無いからな。
漁村の人間は日の出と共に村を出発して、漁を終えるとそのままアルカンの港に寄る。アルカンの市場で獲った魚を売って金を稼ぐと、また船に乗って村へ帰るんだ」
「へぇー。じゃあ、その日に獲れた魚は全部アルカンに集まるって事か!」
「その通り。しかも今が一番賑かな時間だぞ」
「良いタイミングなんだね!」
ショーマはまだ見ぬアルカンの魚を思い浮かべ、キラキラと目を輝かせている。
「ねぇ、まだ着かないのー?」
「アンズ姉ちゃん、自分で歩かないの?」
「だって疲れたんだもん!」
アンズは雪の中をあまり歩いた事が無いらしく、早々にリンドに抱っこして貰っていた。
「・・・お子様」ポソッ
「ショーマ君、今なんか言った?」
「別に。何も言ってないよー」
ショーマとアンズはにらみ合い、また喧嘩しそうになっている。
「こらアンズ、暴れるな。ショーマもあまりアンズをいじめるな」
「うー」
「へーい」
アンズはプイッとそっぽを向き、ショーマは適当に流して前を向いた。
「はぁ。お願いだから仲良くしてくれ」
リンドは二人の孫に振り回されっぱなしで今にも音を上げそうに見えた。
◇◇◇
三人はアルカンの入口で入場待ちの列に並ぶ。海が近いからか、雪はほとんど積もっていない。道の雪が減ってからは、アンズも一緒に歩いて来た。
リンドは背が高いので、ショーマとアンズと話す為にしゃがんだ。二人を腿に座らせると目線がちょうど同じくらいになる。端から見て微笑ましい光景だ。
「結構並んでるね」
「この時間は仕方がない。近隣の山村から仕入れに来てるからな。それと、山村の人間は、漁村の人間相手に毛皮や肉などを売りに来ているんだよ」
「なるほどなるほど」
ショーマはリンドの説明に納得した様だ。
「あれ?ショーマ君はなんて呼べば良いんだっけ?」
アンズはショーマの人間の町での名前を忘れたらしい。
「リコちゃん。俺はウィステリアだよ。ウィスって呼んで」
「じゃあ、ウィーって呼ぶ!」
「・・・はぁ。どうぞご自由に」
アンズはショーマをウィーと呼ぶ事にした様だ。
少し列が進み、またリンドは腰を下ろした。
「そうだ、じいちゃんは何でアルカンに詳しいの?」
ショーマは思い出した様にリンドに聞いた。
「わしはここに住んでいた事があるんだ。ずっと昔だがな」
リンドは懐かしそうに目を細める。
「じゃあ、知り合いとか居るの?ついでに会ってきたら?」
「いやいや、100年近く前だからもうとっくに骨になってるぞ」
「あ、ごめん」
リンドはショーマの頭をワシャワシャと雑に撫でた。
「気にするな。ドラゴンと人間の時間は全く違うものだ。だがまぁ、そのうち墓参りくらいは行ってやるかな」
リンドは空を見上げた。
「おじいちゃん、これからお墓参り行ったら?」
アンズがリンドに提案する。
「いやいや、お前達をほっぽりだしては行けないよ」
「でも、次いつになるか分からないよ?そのうちお友達のお墓、わからなくなっちゃうよ?」
「しかしな。リコとウィスが二人になったら喧嘩になるだろ?」
リンドはショーマとアンズを見て言った。
「ウィーの面倒はあたしがみるから大丈夫!」
「いや、逆だろ・・・でも、ホント行ってきたら?墓参り。次がまた100年後とかになったら、マジで場所判らなくなるよ?もう既に判らないかもしれないけど」
アンズは胸を張って宣言する。ショーマは反論しかけるが、リンドに向き説得し始めた。
「いや、しかし・・・」
渋るリンドにショーマは小さな声で言う。
「俺、頑張って耐えるから。大丈夫。何か起こったら強制送還しろってカエデさんに言われてるし」
リンドはうーんと暫く考える。
「じゃあ、墓参りに行かせて貰おう。二人共仲良くな」
「任せて!」
「頑張るよ」
「町の中に入ったら、集合場所を決めないとな」
ショーマとアンズはリンドと別行動することになった。
◇◇◇
三人はアルカンの中へ入ると、集合場所を近くの食堂に決め二手に別れた。
「じゃあ、リコちゃん。買い物に行こうか」
「ウィー、ちゃんとあたしの近くに居なさいよ?」
「え?」
「ウィーは生まれてまだ13年しか経ってないお子様だもん。年長者のあたしが保護者としてしっかりしないとね!」
うぅ。ここは我慢だ。頑張れ俺。
ショーマは張り切っているアンズに手を引かれ、大通り沿いにある市場へ向かった。
ショーマ「おーい。朝木さんやー」
朝木 「何か?」
ショーマ「何か?じゃなーい!アンズ姉ちゃんどうにかしてー!」
朝木 「どうにかって、受け止めるしかないよ。200歳程お姉様なんだもの」
ショーマ「…ツライ」
朝木 「頑張れー!」
ショーマはついついアンズに反論してしまう様です。
リンドは昔アルカンに住んでいました。
アンズをショーマに任せて別行動します!
次回、アルカンでお買い物!
結局何を買わせようかなぁ…
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