9―この世界を考える2
ショーマは暇を持て余し、倉庫の書棚から魔道具の本を引っ張り出してダイニングで読んでいる。
俺が家に居なくても魔力の補充が出来るようにしないとな。でも、魔道具って難しい。ただの魔法陣とは違うんだね。
うーん。応用編の本じゃいまいち全容が掴めないな。基礎編があれば良かったんだけど・・・。学校の図書館に行ってみようか。
暫くすると女神が起きてきた。真昼はとうに過ぎている。
女神はゾンビの様にノロノロと歩きショーマのいるダイニングにやってきた。
「うー、頭がいたぁい」
「女神様おはよう。それただの飲み過ぎだから。とりあえずこれでも飲んで」
ショーマは冷蔵庫から出したガラスのコップを一混ぜして女神の前に置く。
「これ何?」
「オレンジジュースだよ」
「ありがとう。ゴクゴク。ちょっと苦い?でも生き返るー」
「コーヒーも二日酔いに効くから後で淹れてあげるよ。それと昼御飯代わりにこれだけでも食べて」
ショーマは女神の前に陶器の器を置く。
「これは?」
「アロエヨーグルト」
「ありがとう。パクっ。あ、甘くて美味しい♪」
「そう?良かった」
女神はショーマが用意した昼食を食べて少し元気を取り戻した。
「そう言えば、みんなは?」
キョロキョロと辺りを見回す。ショーマはコリコリとコーヒー豆を挽きながら答える。
「昨日の夜雪が降ったからソラさんとミツキは雪掻き。ヒスイは初めての雪に興奮して遊びたいってサクラさんと外に行ってる。で、俺は女神様のお守り」
「・・・ごめん」
「良いよ別に。昨日の意味を聞きたかったし。よし」
ショーマはコーヒーミル(みたいなもの)から挽いた豆を取りだし、ゴソゴソと抽出の準備を始める。
「でさ、昨日の話は覚えてるの?」
「覚えてる。まだ言うタイミングじゃなかったって反省中。ちなみに、聞かなかった事にはでき「出来ないよ?」・・・デスヨネ」
「ちょっと待ってて」
ショーマはコーヒーの抽出に集中する。この世界にペーパードリッパーなどの便利な物は無く、布でゆっくりと抽出しなくてはならない。一気にお湯を入れると、薄茶色いただのお湯になってしまう。それは濃いめのコーヒーが好きなショーマには我慢ならない事らしい。
「うん。まぁまぁかな。はい、女神様。苦くて飲めないならそこのシロップを入れて」
「ありがとう」
「さて、何から聞こうかな」
何故今の事態に陥っているのかな。予想はどれくらい合ってるんたろう。
「やっぱり聞かなかった事にはならない?」
「無理だね。とりあえず、昔は混沌がいっぱい有ったんだよね?魔力が今は薄いってことは、逆に昔は濃かったって事だから」
「うん。そうだよ」
ふーん。やっぱり。
「そうなんだ。なんで混沌がいっぱいあったの?ってか、混沌って何?」
「混沌は、恐怖・怒り・悲しみとかそんな負の感情の塊の事だよ」
「さすがにそれは分かるよ。結局混沌はなんなの?なんでいっぱい必要なの?」
「混沌は魔力の材料だから」
ここまでは予想通りだね。
「やっぱり混沌は魔力の材料なんだね」
「そう。世界樹が混沌から魔力を生み出してるの」
おー。それは予想外。
「・・・世界樹って、魔力の生産機関?」
「そうだよ」
「へぇー。で、なんで昔は混沌がいっぱい有ったの?」
「それは・・・――言わなきゃだめ?」
おいおい女神様、何かやらかしたのか?
「言わなきゃダメ」
「えー、うー、あー・・・だめ?」
「是非教えて欲しいな」ニッコリ
勿体振らずにさっさと言えって。
「――はぁ。昔は私が管理してた世界じゃなかったから。だよ」
「えっと、それは前任者が居たって事かな?」
「そう。前任の女神様はかなり優秀でさ。魔王だってちゃんと居たし、世界も魔力で潤ってたんだよ。今より文明も発展してたし・・・。新人の私はそんなキラキラ世界を譲り受けたの。同僚の誰もがこんな事になるとは思ってなかったでしょうね」
そう言って、女神は遠い目をする。
仮説その2が正解。2なんだから女神様が悪い。いやいや、まだ3の可能性も捨てきれないか。
「うん。女神様、その話長くなる?」
「え?」
「過去への感傷はいいから要点だけサクッと教えてよ」
「へ?」
ショーマは事務的に捲し立てる。
「前任者が優秀で、世界に魔力が潤沢だったと。魔王も居たし、文明も進んでたんだね。それで?なんで今の事態に陥ってるの?前任者の模倣をすればこんな事にはなってないでしょ?」
「――私には魔王を維持出来なかったから」
あー、女神様の弱点だね。人物設定が酷すぎなんだよなぁ。俺のも含めて。
「・・・それは分かった。じゃあ、なんで戦争を回避するの?魔力の材料になる混沌を増やすには戦争が一番効率的でしょ?人間の持ってる魔力もある程度解放されるし」
「――文明が進みすぎて、戦争がこの世界を壊しかねないレベルまで行ったから」
どっかで聞いたことがある理由だね。
「それはあくまで昔の話で、今は寧ろ戦争やっててくれた方がいいよね?魔法の威力だってたかが知れてるし。態々魔物を作ってチマチマ人間を襲わせるよりはよっぽど効率的だと思うよ」
「そ、そうだけど」
女神はショーマに気圧される。
「じゃあなんで戦争を止めてるの?何か困難な理由なり重大な問題でもあるの?まさか、犠牲者が出るのが嫌だなんて言わないよね?」
その2か?その3か?どっちだ?
「・・・特にないです」
はい。仮説その2で確定。
「ふーん。要するに、女神様が大した理由もなく戦争を止めてるから、今は世界に混沌が発生しにくくなってるって事だね。
魔王を作り出すのも失敗してるし?どうせシドさんにも勿体振って混沌云々は言わなかったんでしょ。あー、当時はまだ混沌が残ってたから言うのを忘れたのかな?」
「うっ」
女神は図星を指され、声も出ない。
「それじゃあ今後の対策として、とりあえず悪魔の仕事は勢力監視レベルまでにしよっか。戦争は止めない方向で。どーせ悪魔の影響力は対峙した個にしか効かないんだしさ。なんなら悪魔らしく戦争の火種を撒くくらいしてくれてもいいよ?
俺が魔王になるまでは混沌を生み出す為に人間達にかるーく戦争してもらうって事で。それでいいよね?」
ショーマは有無を言わせない勢いで女神に迫ると、女神はコクコクと無言で頷いた。
「じゃあ今日は解散!」
ショーマは空いた食器を流しに置き、部屋に行く。外出する準備を整えると一度ダイニングに戻ってきた。
「ソレ飲み終わったらカップは流しに置いておいて。あと、帰ったら水を沢山飲みなよ?」
ショーマは女神にそれだけ言うと、ヒラリと手を振り玄関から外に出てしまった。
女神は一人残される。
「・・・コーヒーが、ほろ苦いなぁ・・・ぐすん」
◇◇◇◇◇
まったく、これだから皆に駄女神と馬鹿にされるのだ。
それにしても魔王らしくなってきたな。
◇◇◇◇◇
女神様 「しくしく…」
朝木 「あれ?どうしたの?」
女神様 「どうしたのじゃないよ!」
朝木 「…あぁ!まぁ、女神様がいけないよね」
女神様 「そんなぁ」
朝木 「これでも、当初の予定より早く発覚したから、傷は浅いよ?」
女神様 「…当初の予定はいつだったの?」
朝木 「ショーマが魔王になった後かな?」
女神様 「素直に良かったって言えない」
朝木 「そもそも、酔っぱらって暴露したのは女神様じゃん」
女神様 「な!?」
女神様は基本ポンコツな様です。
って、皆さん知ってるか!笑
次回は、異世界の年明けです!
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