5―ウサギ狩り
※6/27…会話文の表現を修正。
翌日、ショーマとミツキはウサギ狩りに出掛ける。
「ウルシ、ルリ、今日はミツキと狩りに行ってくるから留守番をお願い」
2頭は頷き、洞窟の中へ戻っていく。
「それじゃあ行こうか」
『わかった。主、乗れ』
「うん。振り落とさないでね?」
『主が気を付ければ良かろう』
ショーマとミツキは山の中へ入っていった。
◇◇◇
ショーマ達はウサギの巣の近くまでやって来た。ウサギの痕跡を探しながら歩く。
『主、止まれ。この先に獲物が居る』
「本当?どこ?」
『あの木の根元だ』
少し離れた木の根元に、茶色いウサギがいる。
「あ、いた」
『そう言えば、主はどうやって狩るつもりなのだ。剣やナイフでは難しいと思うぞ?』
「それは見てれば分かるよ」
そう言うとショーマは集中する。
『成る程。魔法で仕留めるのか』
ショーマは魔法で作った風の矢を放つ。矢は見事に命中し、ウサギの命を奪った。
「ふぅ。どうよ」
『あぁ、見事なものだな。よっと』
ミツキはサッと人化した。
「え!?ミツキって人化できるの!?」
「あぁ。主に教えるにはこの方が良かろう?」
「それは助かるけど。ドラゴン以外も人化できるなんて知らなかった」
「我は特別だからの。ほれ、さっさと処理を済ますぞ」
「うん。よろしくお願いします」
ショーマは更に数羽のウサギを仕留め、実地で処理を覚えていく。
「うむ。初めてにしては及第点か」
「ありがとうございます」
「人間は更にこれを料理するのだろう?」
「うん。でも、肉にしちゃえば料理は大丈夫」
「そうなのか。では戻るか」
ミツキは人化を解き、狼へ戻る。
『さぁ、主、帰ろう』
ショーマとミツキは洞窟へ戻る。
◇◇◇
ショーマはウルシとルリを森に放し、洞窟の外で火を起こして、食材の下ごしらえを始める。
そこにミツキがやってきた。
『主よ。我も料理された肉を食べてみたいのだが』
ミツキはショーマにすり寄っていく。
「え?いいけど。ミツキは生のまま食べるんじゃないの?」
『せっかく主が作るのだ。料理された肉というのも良いではないか』
「わかったよ。ミツキの口に合うかわからないけど」
『ふはは。楽しみだな』
ショーマは肉とキノコ、山菜を使い簡単に鍋を作る。味付けは塩のみのシンプルなものだ。
「ミツキ、できたよ」
『クンクン。なかなか良い匂いだな』
ミツキは人化して、鍋の前に陣取る。
「はい。これで鍋から直接食べて。皿は持ってきてないんだ」
ショーマは鍋をかき混ぜていたスプーンをミツキに渡す。
「我がこれを使って、主はどうやって食べるのだ?」
「俺はこれだよ」
ショーマは2本の小枝で作った箸を持つ。
「そんな棒2本で食べれるものか?」
「見てて。ほら、掴めるでしょ」
「ほう。器用なものだな。ではいただくとしよう」
「いただきます」
ショーマとミツキは鍋をつつく。
うーん。食べられないことは無いけど。やっぱり肉の臭みは香草か酒を使わないと抜けないか。
「主よ!料理された肉とはこんなに旨いのだな!」
ミツキは目を輝かせてどんどん鍋の肉を食べていく。
「気に入ってくれてうれしいよ。でも、サクラさんの料理の方がおいしいし、人間の街に行けばもっとおいしい料理があるよ?」
「もっとおいしい料理だと!?それは是非とも食べてみたいものだな!」
グルメな狼、ここに誕生。ってか?この様子だと絶対街まで食べに行くなー。
ショーマは鍋を頬張るミツキを見ながら、自分も久々の料理に満足した。
◇◇◇
今日の夕食にショーマとミツキは焼き鳥(塩)を食べている。ミツキはすっかり料理された肉の虜になって、毎日ショーマに強請っている。
「そう言えば、ミツキって魔法使わないの?最初に会った時使えば逃げられたんじゃない?」
ショーマは焼けた串をミツキに渡しながら話し掛ける。ミツキは渡された串を食べながら答える。
「我は身体強化の魔法しか使えぬのでな。主を襲った時も使っておったぞ。全部防がれてしまったがの」
「え?マジで?」
ショーマは驚き、ミツキを見つめる。
「あぁ。主はソラ殿に剣術を教えて貰っているのであろう?」
「うん。まだ7年ちょっとだけど」
「我はソラ殿の剣に勝てぬのでな。主はまだ防御しか出来ていなかったが、攻撃も出来るようになったら我では相手にならぬよ」
「そうなんだ。ドラゴンだから勝てないって訳じゃ無いのか」
「そうだ。これからも励む事だな」
「うん。頑張るよ」
ソラさんはほんとスゲーな。なんでも出来るんだな。
その晩、ショーマはミツキについて女神様に聞いてみた。
「もしもし女神様ー」
―――ショーマ君、お疲れ様。何かあったの?
「今ね、白狼のミツキと一緒に居るんだけど、女神様の事知ってるみたいなんだよね」
―――あー、ミツキ君は私が作った魔物だからねー。
「女神様が作った!?どういうこと?」
―――ソラ君に友達を用意してあげようと思ってね。昔は二人でつるんで悪さばっかりして大変だったよー。
「へぇー。そう言えば。ソラさんが、昔は人間がドラゴン退治に来てたって言ってたな」
―――そうそう。そんな事もあったなー。今の二人はかなり大人になったものだよ。
「そうだったんだ。ありがとう。悪かったね、夜遅くに」
―――全然問題ないよー。引き続き頑張ってねー。
ソラさんもミツキも昔はヤンチャしてたんだなー。