7―家族が増えた日4
広間には大きな切り株のテーブルが設置され、その上には色々な料理やスイーツなどが所狭しと並んでいる。
「ヒスイ君の誕生を祝して、カンパーイ♪」
「カンパーイ!」
女神の音頭でカチンとグラスを合わせ、ヒスイの誕生パーティが始まった。
「えー!?この鍋ソラ君が作ったの?すごーい!!立派な料理男子だね!」
「材料を切って鍋で煮ただけだよ?それより、ショーマの方が凄いから」
「ショーマ君も何か作ったの?」
「めがみしゃま、これにーちゃんのぱん!かぁいーねー」
ヒスイは花の様な形のパンを見て可愛いと言っている。そんなヒスイを見て、女神は「いやん、ヒスイ君も可愛い!」と悶えている。
「ヒスイありがと。俺はこのパンを焼いただけだよ。パン生地を作ったのはサクラさんだし。てか料理男子って言葉どこで覚えてきたの?」
「えっと、ひみつ?そんな事より、私もこのブルーベリーパイ手伝ったんだよ!」
女神はパイを指差し、ドヤ顔だ。
「女神様は食べる専門だと思うてたがの」
「食べる専門はミツキ君でしょ!?態々人化までしてっ!」
ミツキと女神はまた言い合いを始めそうになる。すかさずサクラが仲裁に入る。
「まぁまぁ、ミツキは力仕事をしてくれたのよ?このテーブルを運んでくれたり。ね?」
「そうだぞ。我もそれなりに仕事をしたのだ」
ワイワイと宴は進んでいく。
「あっ、そうだ!女神様にしつもーん!」
ショーマが女神に何か聞きたいらしい。
「なぁに?答えられる範囲で答えるね」
「ソラさんとかって、魔物形態の時は言っちゃなんだけど裸だよね?なんで人化すると服着てるの?ナイフとかの装備品もしっかり持ってるし」
「あーそれね。むかーしむかしの更にかなーりむかし。何件かクレームが入ったの。『人化して街に行くと全裸だから変態だと思われて捕らえられる。服を着て行けるヤツはいいけど、俺には無理だからなんとかならないか』って。
確かにそうだねって思って、人化の項目に装備品の継承ってのを足したの。だから最後に着てたり装備してた状態になるんだよ。
あ、サクラちゃんありがとう。こくこく」
「どういたしまして」
女神のグラスが空になっている事に気付いたサクラがワインを注いだ。
「へぇー。魔物はどんな種類でも人化出来るの?」
「そうだよ。今は、うーん。ドラゴンとミツキ君くらいかな?こくこく」
「ドラゴンとミツキって、ほぼ身内だけじゃん。なんでそんなに減ったの?」
「そうだね・・・。これは言っても良いか!世界の魔力が昔から比べるとかなり薄くなってるんだよ。だから人化できる程魔力を所持してる魔物がいないの。
ソラ君、そっちのワインも貰っていい?」
「ああ。どうぞ」
ソラは女神が差し出したグラスにワインを注ぐ。
「世界の魔力が薄い?どういう事?」
「ソラ君、ありがとう。こく。こっちも美味しいね。こくこく。
理由は・・・、もう言っちゃっても良いか!うん!ショーマ君だもんね!!」
これは、聞かない方がいい気がしてきた・・・。
「やっぱり聞かなかっ「混沌が無くなったからだよ」って、え!?」
「混沌が無くなったから!もう、何度も言わせないでよ!
ミツキ君、そのワインちょうだい。まだ飲んでないの」
「ほれ、グラスを寄越せ」
いやいや、だって、混沌の代名詞の戦争を無くしてるのは女神様だから。でも、混沌が無いと魔力が薄くなる?だったら、戦争を起こさせた方が良いんじゃない?うん?どういう事?別に魔力が薄くなっても大丈夫だから、戦争が無くても良いのか?
「・・・マ?」
そう言えば、この世界の生き物は皆魔力を持ってるって言ってなかった?で、死んだらたぶん放出されるんでしょ?人が制御せずに放出してる分もあるし。それじゃ全然足りない計算なのかな?
「ショー・・・ぶか?」
そもそも混沌ってどんな扱いなんだ?魔力の素的な?でも、魔力は生命力でもあるんだよね?うーん。意味わからん・・・。
「ショーマ、大丈夫か?」
「あ、ソラさん。ごめん。考え込んでた」
ショーマはソラに肩を軽く揺すられ、思考の海から浮上した。
「ごくごく。ショーマ君。君には世界中からの憎まれ役である魔王になって貰いたいんだよ!これ以上魔力が薄くなると、この世界が崩壊してしまうから!」
女神はショーマに人差し指を向け、ズビシッと効果音が後ろに書いてありそうな姿勢を取った。
「・・・は?」
「ごくごく。だぁかぁらぁ!世界中のヘイトを集めろぉってゆってるのぉ!それがぁ、魔王の務めぇ!!ミツキ君それもっとちょうだい!!」
「は、はぁ」
大丈夫か?女神様。
「いい飲みっぷりだな。ほれ、どんどん飲め」
「女神様大丈夫?酔っぱらってしまったの?」
「ごくごく。ぷはぁ!らいじょおぶらよぉ!サクラちゃん!わらしはぁまらまらのめるぅ!!ミツキくん!おかわりぃ!!ショーマくん!らのんらよぉ!!」
「お、おう。・・・ソラさん、女神様大丈夫なのかな?」
女神はもっと酒を持ってこいと騒いでいる。ミツキは悪乗りして煽り、サクラがそれを止めている。
「まぁ、サクラとミツキに任せておけば大丈夫だと思うよ」
「うーん。おとーさん、ねむーい」
ヒスイがソラの膝の上で目を擦りながら言う。
「もうこんな時間か。ショーマ、ここは任せてヒスイと一緒に先に寝てて」
「わかった。ヒスイ、兄ちゃんと一緒に寝ようか」
「うん・・・」
ヒスイは既に船を漕ぎ始めていた。
「あらら。もう寝ちゃいそうだね」
「そうだね。よいしょっと」
半ば寝ているヒスイをソラが抱えてショーマの部屋へ行きベッドに寝かせる。ショーマはその隣に寝転んだ。
「ソラさん。おやすみ」
「ああ。おやすみ」
ソラはショーマとヒスイの頭を一撫ですると、部屋を出ていった。
広間のどんちゃん騒ぎは女神が寝てしまうまで続いたらしい。
ショーマ「酔っ払いの相手めんどいね」
朝木 「お疲れ様」
ショーマ「うん」
朝木 「明日絶対グロッキーだよね」
ショーマ「だろうね」
朝木 「なんで酔っ払うと飲むの止まらないんだろう」
ショーマ「ホント。明日の辛さを知ってるハズなのに」
朝木 「不思議だね」
ショーマ「だね」
酔っ払いのせいで色々と世界の謎が深まりました。
次回は、ショーマがこの世界についてちょっと考えるみたいです。
女神が謎を残して寝ましたからね!
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