4―白狼のミツキ
※6/27…会話文の表現を修正。
ショーマ達は白狼の住む洞窟へ入る。
『まったく。してやられたわ』
白狼は諦めきった様に座り込んでいる。
「本当に申し訳ありません」
ショーマは土下座する勢いで謝る。
『主が下手に出てどうするのだ』
「騙し討ちみたいになってしまったので」
『油断していたとは言え、我が主に従えられた事には変わり無い。胸を張るがよい』
白狼は尻尾をゆらりと動かす。
「そっか。ありがとう」
『ところで、主は何故魔物を従えておるのだ?』
「この地を治める魔王になれって女神様から言われてて」
『また女神様か。して、魔王とは何ぞ』
白狼は首をかしげる。
「えっと、魔の者の王ってことだと思う」
『成る程。だから我を従えたのだな』
白狼は納得したようだ。
「そうだ!君、名前ってあるの?」
『我が名はミツキ。白狼のミツキだ。この山の頂点に君臨する者とは我の事よ』
ミツキは胸を張り堂々と名乗る。
「この山の親分はミツキなんだね!じゃあもう山の魔物は全部従えた様なものか」
『そうだ。この我を従えたのだからな』
「そっか。あっさり山編が終わってしまった」
『うん?何か言ったか?』
「いや、何でもないです」
ショーマはそのまま洞窟で夜を明かすことにした。
◇◇◇
ショーマ達はミツキと共に山を回り、魔物を次々と従えていく。
ミツキ曰く「今後の為にも直接会って従えろ」ということらしい。
ショーマ達はミツキの後をついて行く。
「ねぇ、ミツキはどうやってこの山の親分になったの?」
『そんなもの、向かってきた者共を全て叩きのめしてやったまでよ』
「なんだかサラっとすごいね」
『主はそんな我を従えているのだ。もっと堂々とせい』
「俺ってそんなに頼りない?」
前を行くミツキは歩みを止め、ショーマを振り返った。
『あぁ。威厳というものが無いな。王になるのであろう?』
「そんなこと言われてもなー。まだ子供だから威厳なんて無いよ」
ショーマは肩を竦めながら答える。
『ふむ。それもそうであるか』
「大人になる頃には魔王になる予定だから、それまで待ってて?」
『ならばそれまで気長に待つとしよう』
ミツキは前を向き、尻尾を一振りしてまた歩きだす。
◇◇◇
夕方、一行はミツキの住む洞窟へと帰ってきた。
ショーマは地図を眺めながら、干し肉と木の実を食べている。ミツキはそんなショーマを眺めている。
『のぅ。主は干した肉ではなく、生の肉は食べぬのか?』
ショーマは地図から顔をあげ、ミツキを見る。
「動物を狩る事は出来るけど、肉の処理の仕方が分からないんだよ」
『ソラ殿に教わってはいないのか?』
「うん。家に居るときはサクラさんがやってくれてたし」
『あの二人は何をやっているのだ。人間を旅に出すなら必ず教えなければならない事ではないか』
ミツキは前脚で器用に頭を抱える。
「まぁ、二人は飛べちゃうからこんなに長く旅することがあまり無いんだと思うよ。それに、肉を食べなくても木の実とか食べれば大丈夫じゃないかな?」
ショーマは首をかしげる。
『生きるだけならばそれも良かろう。だが、主は毎日森や山を歩き回るのだ。身体が保たぬよ。しかも、まだ子供ではないか』
「そうだけど」
『ならば今肉を食べねば身体が大きくならぬよ』
「それもそうだね。どうしよ。今から家に戻るのも難しいな」
『はぁ。仕方がない。我が教えよう』
ミツキはため息を吐き、提案する。
「ミツキは肉の処理の仕方分かるの?」
『伊達に長く生きてはおらぬよ。任せておけ』
「よろしくお願いします!」
ショーマは勢いよく頭を下げる。
『では明日は狩りをしようかの。まずはウサギが手頃で良かろう』
「うん。どの辺に行けば良いかな?」
ミツキは地図を覗きこみ、ある地点を示す。
『ここの周辺にウサギの巣がある』
「わかった。明日はそこに行こう」
明日、ショーマ達は狩りをすることに決めた。