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1―卒業パーティ


 前話を少し改良しました。





 教室でブラウンを待つショーマは、半年使った自分の席に左手で頬杖をついて座っている。

 右手には先程配られた卒業証明をぶら下げ、じっと観察していた。


 この卒業証明ってヤツはどうやって光るんだろうか。そもそも、持ってる人の位置を把握してないと緊急招集にはあまり使えないよね。シャインレイだって広いんだし。もしかしてGPS機能でもついてるのかな?あ、GPS機能を魔法で再現出来たら面白い…いや、メッチャ使えるよね?帰ったら考えてみよう!

 てかさ、密入国者な俺の入国審査が緩和されるってのもおかしな話だよね。ちょっとウケる。


 ショーマは卒業証明を机の上に置き、視線を窓の外へ向けた。


 ジョージの話ってなんだろうな。応接室って事は外部からの来客か。卒業のタイミングに合わせて来たのかな。だったら、城からの使いとか?そろそろ本格的に取り込もうと動き出したのか。ジョージ・ウェラーになるのはほぼ確実だよね。

 ククッ、ただの“ジョージ”が“ジョージ・ウェラー”になるのか、クククッ。


 ショーマはクスクスと一人で笑っていた。気の済むまで笑うと、どさりと机に突っ伏した。


 はぁー。ジョージの件はあとでブラウン先生に聞くとして。

 えーっと、今夜はキャサリン()のレストランで卒業祝いでしょ?明日は部屋の片付けと掃除をして・・・あ、嵩張る物は先に洞窟()に送っちゃおう!そんで夕方までには退寮しなきゃいけないんだよな。

 ジョージは街で一泊してから出発するって言ってたな。俺も一応泊まった方が良いのかな?さすがに夕方バイバイして、俺はこのまま街道を歩いて行くからーって言うのは旅程として無理があるか。

 なんたって、俺はまだ13歳の世間で言うところのオコサマだし。中身がどうであれね。


 あ、帰る前に一度レイカーのみんなに挨拶して帰ろう。転移魔法を使えば一瞬だけど、そうそう来なくなりそうだし・・・。


 ショーマはガバッと机から起き上がる。


「ごめん。遅くなってしまったね」


 教室のドアをガラガラと開きながら、ブラウンが入ってきた。


「お疲れさまです。ジョージはもう寮に帰りましたか?」


「いや、まだ説得中かな?」


 ブラウンはショーマの前の椅子に横向きに座り、足を組む。


「説得中?もしかして、お客さんって城の人ですか?」


「よくわかったね。この前の調査の時に話した通りになりそうだよ」


「やっぱり。ジョージは大変だなー」


「いや、ウィステリア君がここに残されてるのも同じ様な状況だからだよ?まぁ、答えは判ってるから、適当に雑談して帰すけど」


「あっはは・・・はぁ。俺の魔力が多いのは王様にバレてますもんね」


 ショーマはそう言って項垂れる。ブラウンは右手で頬杖をつき、項垂れるショーマを眺めている。その顔は子を見守る親の様に優しい。


「あれは騙し討ちにあった様なものだからしょうがないよ。さて、彼らを誤魔化すために少し話をして時間を潰そう。

 何を話そうか・・・そうだ、ウィステリア君は明日にもう帰るのかな?」


「いや、退寮が夕方くらいになりそうなので宿に一泊しようと考えてます。その時間から外に出るのは少し無理があるかなって」


 ショーマは椅子を前後に揺らしながら答える。後ろに体重を掛け過ぎないように気を付けながら。ブラウンの表情の意味を悟って、少し拗ねている様だ。


「確かに。夕方から子供が独りで街道を歩いて行こうとしたら衛兵に止められるね」


「デスヨネー。ジョージも泊まるって言ってたんで、最後の思い出に一緒に泊まろうって誘うつもりです」


「それが良いと思うよ。

 そうだ、私も来月末で学校を辞めるんだよ」


「え?そうなんですか?」


「ああ。そろそろ家に帰ろうかなってね。家族が待っているし。本当は6の月に辞めるつもりだったんだけど、女神様からウィステリア君の事を頼まれたから、半年先送りにしたんだ」


「そうだったんですか。俺の為に予定をずらして頂いて、ありがとうございました」


 ショーマは椅子から立ち上がって一礼する。


「そんな改まる必要は無いよ。そもそも、ドラゴンには半年なんて一瞬と大差無いんだから」


「そうなんですか?半年が一瞬って、ドラゴンはどれくらい長生きなんですか?」


 ショーマは椅子に座り直しながらブラウンに聞いた。なんの気無しの素朴な疑問だった。


「うーん。今まで老衰で死んだドラゴンは居ないかな?事故で死んでしまう子供は度々居るけども」


「ぇ・・・ぇえ!?老衰で死んだドラゴンは居ない!?」


「そうだよ。一番古株のドラゴンで七千歳くらいじゃないかな?まだまだ現役みたいでピンピンしてるよ。流石に眠っている時間は長くなったって言ってたけど」


「七千歳・・・」


「私とソラが二千くらい?二千五百越えたかな?もう数えてないから良く分からないよね」


 ブラウンはカラカラと笑っている。ショーマはまさかの事実に口をあんぐりと開けて呆けた。


「そんなだから、半年なんてあっと言う間だよ」


「・・・ドラゴンが思いの外長寿でびっくりしました」


「じゃあ、びっくり次いでにもう一つ」


「え?今度はなんですか?」


「寮母のナタリーさんだけど。彼女は熊人族(くまびとぞく)なんだ」


()()()()って・・・ぇぇええ!?魔族ってことですか!?」


 ショーマは思いもよらない所のびっくり真実に思わず身を乗り出す。


「ははは。やっぱり女神様は言ってなかったんだね。」


「また、あの女神様(ヒト)は重要事項の伝達を忘れたな・・・」


 ブラウンは懐中時計を取り出すと時間を確認する。


「さて、そろそろ解散しようか。ジョージ君もさすがに解放されているだろうし。今夜の食事会だけど、私は残務があるから少し遅れて行くと(みんな)に伝えて貰えるかな?」


「分かりました。じゃあ、また後で!」


 ショーマはブラウンと別れて寮へと戻った。




  ◇◇◇




 ショーマは寮でジョージと合流すると、キャサリンの家へ向かう。

 キャサリンの家には既にヘンリーとマイケルが居た。アランは仕事を少し片付けてから来るらしい。ショーマは皆の集まる席へ着くと、ブラウンが仕事で少し遅れると伝えた。


 マイケル、ヘンリーは各々お酒の入ったグラスを持ち、ショーマ、ジョージ、キャサリンはジュースの入ったグラスを持つ。

 この国の成人は18歳で、飲酒も結婚も18歳になってからだそうだ。


「まだみんな揃ってないけど、とりあえずカンパーイ♪卒業おめでとう!」


 キャサリンの音頭でグラスをカチリと鳴らず。


 一杯目の途中でアランが合流し、年長組がほろ酔いになる頃ブラウンが遅れて到着した。




 店先でショーマ、ジョージ、キャサリン、ブラウンの四人が話をしている。


「先生、二人をお願いしますね!」


「任せなさい。キャサリンさんには酔っ払いの相手を頼んでしまって済まないね」


「慣れてるので大丈夫です!

 先生、サービスするのでまた食べに来てくださいね?ジョージ君とウィス君には、もしかしたら二度と会えないかもしれないし」


 キャサリンは淋しそうに呟く。

 ショーマは(魔法で簡単に来れるんだよなー)と考え、ジョージは(近々またラアイテに来る事になるよな)と思っているが、二人揃ってアハハと苦笑いしている。


「そうだ、お母さんにもよろしく伝えといてね」

「僕の分もお願いします。まさか腰を痛めて臥せっているとは思いませんでしたから」

「うん!ちゃんと伝えておくよ!」


「じゃあ、そろそろ帰ろうか」


「キャシー、また会う日まで元気でね!」

「ご飯美味しかったです!」

「もしラアイテに来る機会があったら、絶対寄ってね!約束だからね!!」

「当たり前!」「絶対来ます!」


 ショーマとジョージは戸口で大きく手を振るキャサリンが曲がり角で見えなくなるまで手を振り返した。


「別れは寂しいものですね」

「でも、今生の別れにはならないでしょ?来ようと思えば来れるんだから」


 ジョージがポツリと溢した言葉にショーマがさらりと返答する。


「確かに、そうですね」


 ジョージはそう呟くと、満天の星空を仰ぎ見た。





ショーマ「ねぇ、朝木?挨拶って何か知ってる?」

朝木  「・・・(目が泳ぐ)」

ショーマ「はぁ。まぁ、いつも通りだからもう何も言わないよ」

朝木  「・・・ゴメン」

ショーマ「何?聞こえない」

朝木  「ごめんなさーい!!」


 挨拶回りに行く予定だったよ?予定だったけど。予定だったんだよー!(/´△`\)



 ドラゴンはかなりぶっ飛んだ生命体の様です。

 ジョージはやっぱり断りきれなかったみたいですね。



 次回は、みんなにバイバイするでしょう。

 きっと、たぶん。。。



 応援して頂けると嬉しいです(^^)

 訪問だけでも大感謝(^^)/



 ブックマーク、評価していただきました!

 ありがとうございます(σ≧▽≦)σ


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