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3―西の山


※6/27…会話文の表現を修正。





 ショーマは今日、西側遠征へ出発する。




 ソラとサクラはウルシとルリを脅かさない様に人化して見送るようだ。


「ショーマ、忘れ物はないわね?」


「大丈夫!昨日何度もしっかり確認したから!」


「本当に大丈夫かしら」


「サクラ、心配し過ぎだよ。ショーマを信用してあげて」


「そうなんだけど。たまに抜けてるから、どうしても心配なのよね」


「本当に大丈夫だよサクラさん。もし何か忘れてたら誰かに取りに行って貰うから。その時はよろしくね?」


「わかったわ。身体に気を付けてね」


「ほら、ウルシとルリが待ってるよ。行きなさい」


「うん。行ってくるね」


 ショーマはウルシに跨がり出発した。後ろを振り返り、大きく手を振る。


「行ってきまーす!」


 ソラとサクラは手を振り返す。


「「行ってらっしゃい」」






 ソラとサクラは二人、ショーマが去った方向を見ている。


「行っちゃったな」


「そうね。寂しくなるわ」


「サクラ」


「なぁに?」


「ここのところずっと考えてたんだけど」


「うん」


「ショーマに弟か妹を増やしてあげない?」


「ふふふ。それは名案ね」


 二人は仲良く洞窟へと戻っていった。




  ◇◇◇




 ショーマはどんどん西へ向かっていく。既に従え終わっている領域を抜けると、今度は穴になる場所が無いように南へ北へとジグザグに進んでいく。




 西側には結構魔物がいるんだな。なかなか順調に行かないよ。今日ももう夕方になっちゃった。


「ウルシ、今日はこの辺で休もうか。準備をしてるから回りを見てきてくれる?」


 ショーマはウルシから降りるとそのまま付近の偵察に行かせる。そして、ルリから荷物を降ろし、魔法で火を起こす。これまで何度も繰り返しやっているので、最早手慣れたものだ。


 暫くすると、ウルシが戻ってくる。


「お帰り。どうだった?危険は無い?」


 ウルシは首を縦に振る。


「この辺は大丈夫か。それじゃあ二人とも、ご飯に行ってらっしゃい」


 ショーマがウルシの鞍と手綱を外すと、2頭は連れだって森の中へ入っていく。


 ウルシとルリが居ても寂しいな。これってホームシックかな。


 ショーマはお湯で少し戻した干し肉と、途中で見付けた木の実を食べながら地図を見る。


 さて、今日の範囲を地図で確認するか。昨日の野営がここだったから、やっぱりあまり進んでないな。出発前の日程では明日から山に入る予定だったのに。まぁ、焦っても仕方ないか。


 ショーマが明日の行程を確認して地図を仕舞っていると、2頭が戻ってくる。


「お帰り。じゃあ、いつもの通り魔法を少しだけ解除するからね」


 ショーマは宣言すると、隠蔽魔法を少しだけ解除する。これを行う事で、夜寝ていても動物や魔物に襲われる心配は無い。

 ショーマは旅立ってから数日後、この技を女神に教えて貰っていた。


「なんかズルしてる気分だけど、俺しか居ないし良いよね」


 教えて貰ってから毎晩使っているので、ウルシとルリも匂いに慣れてきたようだ。


「明日もよろしくね。それじゃあおやすみ」


 ショーマは火を消し、眠りについた。




  ◇◇◇




 ショーマ達は今日から山へと入る。外縁部から順に登っていく予定だ。




 鹿の魔物を連れてきて正解だったな。他のじゃこうも楽には登れない。山の中は鹿だらけだし。しかも、ウルシは上位の魔物だったみたいだな。鹿の魔物は魔法を使わなくても従ってくれるよ。前に女神様が言ってたのはこう言う事か。




 暫く進むと、崖に空いた洞窟を見付けた。


「ウルシ、ルリ、ここを少しの間だけ拠点にしようか。森と違って山は今までのやり方だと効率が悪いから」


 ウルシは首を横に振り、少しずつ後退りする。ルリはその後ろに隠れる様にしている。


「何か中に居るね。もしかして、強いヤツ?」


 洞窟の中から何かの唸り声が聞こえてきた。


「ちょっと離れて!」


 ショーマはウルシから飛び降り、剣を手に洞窟の入り口を睨み付ける。すると、洞窟から1匹の白い狼が出てきた。


「狼か!」


 ショーマは隷属魔法を発動させる。しかし、白狼は魔法陣から跳び出しショーマに襲いかかってきた。


「くそっ!動きが早すぎる!」


 ショーマは一方的に攻撃され、防ぐ事で精一杯だ。自分に掛けている隠蔽魔法が徐々に解けている事にも気が付かない。


 すると、白狼がショーマから飛び退き、攻撃が止んだ。


『貴様、ドラゴンか?』


「え!?狼がしゃべった!?」


『我は貴様がドラゴンかと聞いている』


 ショーマは警戒しながら答える。


「ドラゴンでは無いです」


 白狼の尊大な態度につい丁寧に返してしまう。


『ならば何故ドラゴンの匂いがするのだ』


「あっ!」


 ショーマは隠蔽魔法が少し解けている事に気付いた。


「えっと、ドラゴンと一緒に住んでいるからです」


『ドラゴンが人間如きと住むはずが無いだろう。馬鹿な事を言うな』


「いや、本当に一緒に住んでるんですって」


『では、そのドラゴンの名前を言ってみろ』


「ソラさんとサクラさんです」


『何!?ソラ殿と住んでるだと!?』


「彼は俺の養父です」


『そんな・・・そんな事があるはずがない』


 白狼はひどくショックを受けているようだ。


「あの、女神様の言い付けで俺を育ててくれてるんです」


『何!?女神様だと!?またソラ殿に面倒事を押し付けおって!!』


 この狼って、ソラさんの友達なのかな?


「すいません。ソラさんとの御関係は?」


『うん?あぁ、ソラ殿は我が唯一認めた男よ。我より強いやつは他には知らぬ』


「そうだったんですか」


 白狼は少し態度を軟化させた。


『貴様の名は何と言う?』


「ショーマと言います」


『ふーん。覚えておこう』


「よろしくお願いします」


『して、この地で何用だ。その様子ではソラ殿の遣いということでも無かろう?』


「この地の魔物を従えに来ました」


『はっ。笑わせるな。貴様如きに我は従わぬ。去れ』


「すいません。それは出来ません!」


 ショーマは魔法で石の檻を作り出し、白狼を閉じ込める。


『何!?ふざけるな!』


「ほんとうにごめんなさい!!」


 ショーマは全力で隷属魔法を展開し、白狼を捕らえた。




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