12―ラアイテ探訪1
翌朝、ショーマとジョージはまず商店街でキャサリンと待ち合わせ、ヘンリーの実家に寄ってからアランの待つ中央の北門へ向かう。
ショーマ達は先程キャサリンと合流してヘンリーの実家へ向かっているところ。ヘンリーの実家は街南西部の職人街にある。
「ヘンリーは職人街に住んでるんだね」
「そうだよ。お父さんが大工さんだからね。工房がある家はやっぱり職人街じゃないと」
「そうなんですね。そう言えば、今日は弟さんも連れて行くって言ってましたよね?」
「カール君って言うんだけど、お母さんに似て可愛いんだよ♪」
「カール君って事は男の子だよね。あんまり可愛いって言わないであげて」
「あはは!ウィス君、自分が女の子と間違えられてるからって気にしすぎ!」
「だってー」
ショーマはふて腐れる。
「ウィスは、まぁ、しょうがないですよね。あ、あそこにいるのはヘンリーさんじゃないですか?」
ジョージは路地の角に佇むヘンリーを見つけた。
「ホントだ。急ごっ!」
キャサリンに急かされ、ショーマ達はヘンリーの元まで駆け寄った。
「おはよ♪」
「おはよー」
「おはようございます」
三者三様に挨拶をする。
「みんなおはよう。ほら、カールも挨拶しろ」
「──おはようございます。カールです。今日はよろしくお願いします」
カールはお行儀良く挨拶をした。
可愛いは可愛いけど、少年の可愛さだな。そっちの方がいいな。羨ましい。
「カール君はヘンリーと違ってほんとにかわいいねー♪」
「おいキャシー、カールが固まってるからほどほどにしろ」
キャサリンはカールを抱きしめ、頭をぐりぐりと撫でている。そんなキャサリンをヘンリーが窘める。
キャサリンから解放されたカールにショーマとジョージは自己紹介をする。
「俺はウィステリア。ウィスって呼んで。今日はいっぱい遊ぼう!」
「僕はジョージです。僕とも仲良くしてくださいね」
「うん!えっと、ウィス姉ちゃんとジョージ兄ちゃん?」
「カール!俺は男だから、ウィス兄ちゃんって呼ぼう。な!!」
ショーマはカールの両肩をがっちり掴んで訴える。
「う、うん。わかったよ、ウィス兄ちゃん」
「ぶははは。これはもうお約束だな」
「あははは。ウィス君も毎度毎度大変だね」
ヘンリーとキャサリンは大爆笑してショーマに睨まれた。
◇◇◇
ショーマ達は中央の壁に添って歩き、中央北門までやってきた。
中央北門は高台にあり、眼下には大通りに添って美しい町並みが続く。大通りの終点には港があり、その先には巨大な水門が聳える。そして、水門の奥には大海原が広がっている。
「ここは見晴らしが良いね!海まで一望できるじゃん!」
「王城からの眺めはこんなものじゃないらしいよ?見たこと無いけど」
「さすがお城ですね。一度で良いから見てみたいものです」
しばらくすると、大通りの方からアランがやってきた。
「みんなごめーん。お待たせー」
「アランさんおはよー。今日はよろしく」
「おはようございます。よろしくお願いします」
「おはよ♪今日はいろいろ期待してるからね」
「今日はよろしくな。あと、弟のカールだ」
「カールです。はじめまして」
「俺はアランでーす。よろしくねー」
それぞれ挨拶やら自己紹介やらを行った。
「じゃー、行こっかー」
ショーマ達はアランの案内で、北の市場までやってきた。
いつもの市場では野菜や果物などの農産物が多めだったが、こちらの市場は港側だからか海産物の方が多い。
また、大陸屈指の貿易港でもあるため、スパイスなどの輸入品も少量ながら扱っている店があった。
「そろそろお腹も減ってきたよねー?昼食は俺の家で用意してるからー。あ、カールの分もちゃんとあるよー」
「アラン兄ちゃんありがとう!」
アランの案内で、問屋街を歩いていく。
その中でも一際大きな商館の前までやってきた。
「ここが俺実家のチャールズ商店だよー」
「マジか。商人の息子だとは聞いてたが、まさかチャールズ商店の御曹司だったとは」
ヘンリーは驚きでしばし固まった。
そんなヘンリーを見て、ショーマはキャサリンに尋ねる。
「チャールズ商店って、そんなにすごいの?」
「すごいなんてものじゃないよ?この国の建国当初からある老舗中の老舗なの!」
「大げさだよー。ただ古いだけだってー。さーさー、入ってー」
ショーマ達はアランに促されて店内へと入った。
店内は清潔感があり、素朴ながらも品の良い家具が備わっている。あまり華美ではない所が万人受けするのだろう。客は貴族だけでなく平民もいるみたいだ。
一行がアランの案内で客間へ着くと、従業員らしき人がアランに声を掛けてくる。
「アラン様お帰りなさい。そちらの方々が昨日言ってらした御学友ですね」
「そうだよー。昼食の用意は出来てるー?」
「はい。ただいま持って参ります」
「よろしくー。みんなー、昼食は珍しい物を用意したんだー♪是非感想を聞かせてねー」
「えっと、おいくらですか?」
ジョージは恐る恐る値段を確認する。
「最近取り引きを始めたばかりの商品だからー、参考までに感想を教えてくれれば良いよー。で、商品はこれなんだー」
アランは麻袋の口を解いて中身を見せた。
「あ!米だ!」
「ウィスは良く知ってたねー。あ、プランにはインディ王国から米が入ってるのかなー?これは海の向こうのジャポネ皇国との交易品だよー」
キャサリンの目がキラリと光る。
「これはどうやって食べるものなの?小麦みたいに粉にしてパンの材料にするの?それともスープにいれるのかな?」
「それがねー、これは籾殻を取り除いて精米して炊くんだー」
「精米?炊く?」
「まぁ、見てのお楽しみだよー。とりあえず座ってー」
アランは従業員の持ってきたお盆をショーマ達の前に置く。
「これがさっきの米?真っ白だね」
キャサリンは三角に握られた白米に興味津々だ。
「これはおにぎりって言うジャポネの郷土料理なんだー。味付けは塩だけだけどー、甘くて美味しいんだよー。食べてみてー」
一同はおにぎりに齧り付いた。
「何これ!しょっぱい!甘い!おいしい!」
キャサリンは目を丸くして驚く。
「やっぱりおにぎりはシンプルな塩に限るな」
ショーマは昔を懐かしむように噛み締めている。
「これはおいしいですね」
「もう一つ食べて良いか?」
「僕も!!」
「まだあるからどんどん食べてー」
ショーマは久しぶりに食べる米に満足し、チャールズ商店を後にした。
朝木 「ショーマ!ちょっと聞いて!」
ショーマ「どうしたの?」
朝木 「またブックマークが増えたの♪」
ショーマ「ホントだ!おめでとう!」
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アランは老舗の問屋の御曹司でした。
白米はジャポネ皇国で食べれるみたいです。どこだそれ。
次回はラアイテの探検後半です!
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