9―悪魔の理由
ショーマは授業が終わるとヘンリー、キャサリン、ジョージと共に市場へ向かう。
「ねぇ、ジョージは魔力感じられた?」
「僕は身体の中心にほんわりとしたものなら感じました」
「マジで!?ヘンリーは?」
「俺か?そうだな。何かが流れてる感じまでは掴んだ」
「マジかよ」
ショーマはガックリと肩を落とす。
「ウィス君、私には聞いてくれないの?」
「キャシーは先生に太鼓判押されてたじゃんか!!」
「えへへー!実はうちのお母さんも魔法学校行ってて、やり方知ってたんだよね」
「なんだよそれ!ずるい!!
はぁ。なんで俺は魔力を感じられないんだよ」
「ウィス君は何か他の事を考えてたんじゃない?」
「他の事か・・・」
確かに、血液なんじゃ!?とか無駄に前世の知識を穿り返してたかも。明日は頭を空っぽにしてやってみよ。
「とりあえず買い物しようぜ」
ヘンリーはショーマの肩をぽんと叩いて市場へ入っていった。
◇◇◇
ショーマは夕食を食べ、部屋へ帰ると早速女神リンクを使う。
「ただいま。女神様、どうだった?」
―――おかえり。昨日の調査結果だよね?とりあえず判ったよ。
「サンキュー」
―――じゃあ、まずは種族からね。ショーマ君の種族になった竜人は、亜人種。
「亜人種って?てか、カッコはどうした!?」
―――この世界では魔族って呼ばれている種族の総称だね。カッコはさっき外したよ。
「外したって、大丈夫なの?」
―――大丈夫だよ。カッコ付きのままの方が、竜と竜人どっち着かずであんまり宜しくないみたいだったから。
「そうなの?問題無いなら良いけど。ちなみに竜だったらどーなるの?」
―――竜はソラ君達と同じだよ。
「・・・なるほど」
―――じゃ、説明続けるね。
「はいよ」
―――竜人は体力、魔力共に優れ、寿命が長い。背中に竜の翼が生える。翼での飛翔可能。亜人種最強。
「なんかすごいな。竜人って。でも、どうしてそうなったの?」
―――体力、魔力を最大にしたときに寿命まで最長設定にしちゃったらしくて。その矛盾を正す為に種族が変わったみたいなの。
「つまり、女神様のうっかりのせい?」
―――コホン。次に身分だけど、これは昨日の予想通り、魂がソラ君達と繋がったのが原因だね。
「・・・・・・・。なるほどね。でもその理由なら、結構簡単に身分って変わらない?」
―――そんなに簡単じゃないよ。魂に強い衝撃がかからないと、身分は変わらないらしい。
「強い衝撃って、例えば?」
―――例えば、「農民」だった人がある日突然、戦争によって家族を目の前で亡くすとする。すると、その強い衝撃で「戦士」に変わる。だから戦争は戦士が増えて長引くことが多いみたい。
「へぇ。戦争ねぇ」
―――ま、この世界では戦争が極力起こらない様に私が調整してるから。そのせいで、身分の変化に気づかなかったみたいなんだよね。
「戦争を調整ってどういうこと?」
―――前に言ったじゃない。私は悪魔で女神だって。戦争は悪魔な私が降臨して止めさせてるの。
「そう言えば、そんなことも言ってたね。
しかし、なるほどね。だからか」
―――何が?
「いやさ、この世界は通貨が国毎とは言えレートは共通だし、地図も完全じゃないけどあるじゃん?留学だって書類があれば簡単にできるし」
―――そうだね。
「それ全部、戦争がほとんど無いからなんだなーって」
―――そうなの?
「そうだよ。詳細な地図があれば、他国に攻める為の作戦が簡単に立てられるでしょ?通貨が共通だと、協力的な国から武器を購入し放題だし。他国に簡単に留学できるって事は、スパイを簡単に送り込めるって事じゃん」
―――確かに。
「それでも戦争になってないのは凄いと思うよ。でもさ、いくら女神様でも戦争を止めさせるのは難しくない?」
―――そこは、ほら。魔族のみんなの協力あっての介入だから。
「そうなんだ。あ、もしかして。教科書に書いてあった魔王ってさ、女神様の事?」
―――そうなのかな?悪魔って言われることの方が多いけど。
「ふーん。俺は魔王になったら、女神様の真似をすれば良いの?」
―――いや、人間の敵として存在してくれてれば良いよ。人間って外に脅威があると内側は団結するでしょ?そうなれば人間同士の戦争なんてほぼ無くなるよ。
「確かにね。悪魔な女神様じゃ人間の脅威たり得なかったってことか」
―――ほら、私の根本は女神だから。信仰の対象よ?直接対峙した当事者にしか脅威を与えられないの。エンジェル&デビルだからね!
「たぶん、ヴィーナス&デビルだと思うけど。じゃあ、俺は居るだけで良いんだね」
―――ま、まぁね。たまに魔族のみんなにやってもらってる仕事をお願いするけど。
「それぐらいなら別にいいよ」
―――人間からは常に狙われる事になるけど、ごめんね。
「それは魔王って時点で最初からわかってる」
ショーマは顎に手を当て、考える。
「うーん。今日の話を聞いて思ったんだけどさ。俺の種族を「魔族のどれか」にして身分を「魔王」にすれば、簡単に済む話しだったんじゃない?「魔王」って身分があればの話だけど」
―――あっ!?
「はぁ。ま、やるとなったからには魔王目指して頑張りますよ」
―――ゴメンねショーマ君!!
「はいはい。じゃね」
やっぱ女神様はダメ上司じゃん。
◇◇◇◇◇
ははは。魔王の言う通りだ
これでは駄女神じゃないか
一度新人研修を受けさせるかな?
◇◇◇◇◇
題名にもなってる女神=悪魔を回収しました!
しばらくのんびり回が続きます。
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