7―彼の正体
翌朝、ショーマは第3鍛練場にやってきた。
「ウイステリア君、おはよう」
「あ、ブラウン先生。おはようございます。どうしたんですか?」
「どうしたって、一応君を待っていたんだよ。施設の使い方を知らないだろう?」
「あ・・・。教えてください」
ブラウンは扉の開け方からショーマへ教える。
「ありがとうございました」
「どういたしまして。ついでだから、暫く見学させてもらうよ」
ショーマはブラウンの前で、走り込みや筋トレ、素振りなど朝のメニューをどんどんこなしていく。
何だろう。たまに漂うこのミカンの様に甘酸っぱくて、でもミントみたいにスッとする匂いは。普段から嗅ぎ馴れてるような。どこで嗅いだ?あれ?まさか!?
ショーマは素振りを止め、ブラウンに向き合う。
「間違ってたら笑ってください」
「どうしたんだい?」
「もしかして、ブラウン先生はドラゴンだったりしませんか?」
「ははは。やっぱり気づいたようだね。
私の本当の名前はシド。君の想像通りドラゴンだ。それに、君の先輩でもある」
「先輩?どういうことですか?」
「私は女神様によって魔王になるように産み出されたんだよ。でも、魔王は性分に合わないし、魔法の研究の方が面白くてね。今では自由気ままに人間の世界をフラフラとしてるんだ」
「そうなんですか。あれ?なんで俺が魔王になるって知ってるんです?魔王を感知する魔法でもあるんですか?」
「いや、半月くらい前に女神様から連絡があって知ってたんだよ。君の本当の名前はショーマだろ?」
「はい。じゃあ、女神様が言ってた良い出会いってシドさんの事だったんですね。」
「きっとそうだろう。それと、私の事はブラウンで良いから。私も君の事はウィステリアと呼ばせて貰うよ。それにしても、君の魔法は独特だね。昨日、前触れもなく一瞬で匂いを消したよね?」
「うーん。基礎を習った事が無いのに無理矢理使ってるからですかね?」
「そうなのかい?試しに、今自分に掛けている魔法を解いて掛け直してくれない?」
「わかりました」
ショーマは隠蔽魔法と変装魔法を解く。
「おぉ!本当の君は黒なんだね!」
「はい。この色のせいで赤ん坊の時に捨てられてしまったんです。今はモミールの西の端でドラゴンのソラさんとサクラさんと暮らしてます」
「ソラとサクラの子なのか!あれ?捨てられたって事はドラゴンじゃない?でも、気配がドラゴンだけど。君も私を見て感じただろう?」
「あの違和感はドラゴンの気配だったんですか。俺、ドラゴンの子らしいんですよ。だから気配がドラゴンなんですかね?」
「へぇ、ドラゴンの子?
まあいいや、君の魔法を見せてもらおう。まずは、匂いを消している魔法を使ってくれるかな?」
「はい」
ショーマは隠蔽魔法を展開する。
「やはり、風で散らしているのでは無いのか。原理は説明できる?」
「臭いものには蓋をしろって原理ですね」
「それはどういうこと?」
「身体の表面を薄い魔力の膜で覆って、匂いが出ない様にしてます」
「その発想は無かったな。じゃあ、髪と目の色を変えてるのは?」
「これですか?」
ショーマは変装魔法を展開する。
「見事なものだ。それの原理は説明できる?」
「さっきの魔法と原理はほぼ同じです。髪の毛と目の表面を色の着いた魔力の膜で覆ってます」
「なるほど。そうか、君の魔法は身体から魔力が離れないから長時間使っていても魔力切れが無いのか。ウィステリア君、私に匂いを消す魔法を教えてくれないかな?」
「良いですよ」
ショーマはブラウンに自身の開発した隠蔽魔法を教えた。
「あ、そうだ。君の動きは人間離れしてるから、鍛練してるところを見られないように気を付けて」
「え?そうなんですか?」
「ソラに鍛えられてるんだろ?あいつの強さは化け物だからね。その弟子の君も相当だと思うよ。素振りしか見てないけど」
「わかりました。忠告ありがとうございます」
ソラさんってどんだけー!?
◇◇◇
ショーマは朝練を終えると、寮へ戻った。水浴びで汗を流し、着替えて食堂へ向かう。
「おはようございます。ナタリーさん」
「あら、ウィステリア君。おはよう」
「あの、今日の夕食と明日の朝食もお願い出来ますか?」
「それなら、そこにある名簿に記入してくれるかしら?食事代は月終わりに纏めて払ってね」
「わかりました」
ナタリーの指した壁に紙が貼られていた。
ショーマは名簿の自分の名前の欄にとりあえず三日分の朝食と夕食の丸を付けると、朝食を受け取り食べ始める。
「いただきます」
朝食の内容は、スクランブルエッグにソーセージ、硬めのパン、コーンスープだ。
この国は基本パンが堅い・・・。サクラさんの焼くふっくらパンが恋しいよ。
「あ、ウィス。おはようございます。随分早いですね」
ショーマが食事を始めると、ジョージが部屋から降りてきた。
「おはよー。そう?もう7時だよ?それに実家にいたらもっと早いし」
「そうですね。僕も実家にいたらもっと早いです」
「でしょ?」
「では、僕も食事をもらってきます」
ジョージも朝食を受け取り、ショーマと食べ始めた。
ブラウンはまさかのお仲間でした。
次から魔法の授業が始まります。
もう、いろんな意味でドキドキです。
(>_<、)
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