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俺が魔王として女神が悪魔な世界にやって来た  作者: 朝木 花音
11女神の手伝い―実働編
241/263

63―振り回される大人


 お久し振りですとひっそり更新。


 本日いつもの倍量です。

 後書きは反省会。


 それではよろしくお願いします。





 ショーマとソラは旧都サートミーラの城にお邪魔している。


「さて今夜は何の用事だ?」


 バーナードは二人の向かいに腰を下ろし、早速と問い掛けた。

 初めて自国よりも強大であろう外国を認識して呆けていた執事は、諸々の失態を取り戻すべく速やかに隣の部屋へ移動した。ただ単に主人の茶の用意をしに行ったとも言う。


「その前に初対面だし自己紹介をしないか?」


「あー!そう言えば俺もこの前名乗ってないや!」


 バーナードは関わりは薄くしたいけど無理だろうなと諦め顔で名乗った。


「バーナード・バルバレティ・メルレンナ・ヴィ=アルハ・サートミーラ。一応サートミーラの王太子をやっている」


「僕はスカイ。この子の父親だ」


「俺はウィステリアだよ。この世界のそれなりに重要人物くらいに思ってて」


 ソラは特に気負いもなく、ショーマはニコッと笑ってからそれぞれ名乗った。

 バーナードはショーマの自己紹介に怪訝な表情を隠さない。ショーマはそれを横目で確認しながらも、スルーした上でサラッと用件を切り出した。


「でね、明日決行するから。もちろん雨天決行だよ」


「──は?明日?いや待て、こちらはまだ何も用意が出来ていないのだが?」


 ショーマの言葉が簡潔過ぎて、バーナードは言葉の意味を理解するのに少しの時間を要した。その上急すぎる予定に頭がすぐには回らない。


「出来ないじゃなくてやるんだよ。それにこれは決定事項だから」


 ショーマはにこりと、言い訳ばかりの子供に言い聞かせる様に、しかし有無を言わせぬ物言いでバーナードに突き付けた。

 いや、最早これはニヤケながら無理難題を吹っ掛けてくるパワハラ上司だ。


「いやしかし、国家元首をすげ替えるのだ。それ相応の用意が必要ではないか」


「え?今までずっと、それこそ何年も掛けて準備してきたんでしょ?俺の準備期間なんか二日だよ二日!昨日今日で色々と根回しして、宮殿の下見までしちゃったんだよ!」


「既に宮殿の下見まで・・・」


 ショーマの言葉にバーナードは天を仰いだ。視界いっぱいに映るのは部屋に不釣り合いの大きなシャンデリアだが、思考は屋根すらも越えて空高く逃げ出したに違いない。

 ただここはまだ話し合いの場。ハァッとため息を吐きすぐに戻ってきた。


「せめて一月はくれ。ここからミリメトピアに向かうのにどれだけ時間が掛かるか計算に入れているのか?」


「え?そんなん俺が送ってくから一瞬だよ」


 一瞬と言われてもとバーナードは眉間に皺を寄せた。初回はそれでも以降はどうするのだと顔に書いてある。先ほどから思うが、彼は腹芸が苦手なタイプらしい。


「移動時間が気になるなら、いつでも行けるように転移魔法陣を設置してあげよっか?」


 ショーマはそう言って紅茶を口に運ぶ。バーナードは事も無げなショーマの様子に眉間の皺が深くなる。


「実は理論だけでまだ試して無いんだ。だから、是非ともモルモットになってくれたまえ!・・・んふ、ぐぬ、ぶはっ!はははは!!」


 ショーマは自分の言葉がツボに入ったのか腹を抱えてケラケラと笑っている。バーナードはモルモットの意味がわからず、しかし明らかにいい意味ではないだろうと当たりを付け眉間の皺を更に深くする。

 執事はショーマのバーナードに対する態度に驚いた。丁度ティーカップをテーブルに置くタイミングで、ガチャっと音を立ててしまう。彼は平静を取り繕いサッと一礼すると、バーナードが来るまで座っていた扉脇の椅子まで撤退した。


「ひーひー、はふー。んん、とりあえずお茶でも飲んで考えたら?」


 どうにか発作的な笑いから復活したショーマに促され、バーナードは素直に紅茶に手を伸ばす。そして一口飲むと考え始めた。


 レッツシンキングターイム!しっかりじっくり考えてねー。明日決行は決定事項だけど!

 でもそっか。転移魔法って今のこの世界だと未知の魔法だもんね。カルメーナのあった時代なら魔力不足を別にして完成目前だったみたいだけど。

 うーん。自分の命を預けて良いのかは真剣に悩んでほしいな。何かあったときに全部俺のせいにされたらたまんないもん。ま、実際はユカリで実験済みなんだけどね。

 そうだ!明日は魔法陣の調整をしよ!


 ショーマはソラに意思伝達(糸電話の)魔法を掛ける。


 ―――ねぇ、父さん。やっぱ今夜帰ろう。明日の朝ディラントに行く前にちょっとやりたいことができたんだ。


 ―――やりたいこと?じゃあ少し早めに起こせば良いのかな?


 ―――うん!おねがーい!


 ―――わかった。それにしてもさっきはどうしたんだい?途中、呼吸困難気味になっていたからさすがに心配したよ。


 ―――だって、「()()()」ってなんかすごく偉そうじゃない?それをお子様な俺が国の偉い人に向かって言ったってのが自分の中で妙にツボったの!


 ―――そうなのか?まぁ、ショーマが楽しいなら良いのかな。


 ―――うん!


 じっとバーナードを観察していたソラが不意に扉の方へ視線を向けた。


 ―――誰かがここへ向かっているな。


 ―――へ?


 ―――数は二人。あの軽さと歩幅は・・・レジーナさんとマルティナさんかな。


 ショーマも扉を見ると、コンコンとノックされた。執事が滑るように扉の前へと移動する。

 バーナードは誰が来たのか判っているのだろう。誰何(すいか)もせずに入れと入室を許可した。

 ソラが予想した通り、レジーナとマルティナが入ってくる。


「うわぁ、すごいきれー。織姫様みたい」


 二人は乳白色の薄布が幾重にも重なった、しかしストンとした形の足首までのスカートを履いている。スカートと同じ生地で出来た袖にはゆとりがあり、ひらりとした袖口が華奢な手首を強調している。上に着ている赤い衣はそれぞれ似た色の色違いでサートミーラ特有の長方形の布を縫い合わせたもの。その生地は見るからに上質で、ベルベットの様な鈍い光沢を放っている。それを腰で留めている焦げ茶の幅広革ベルトには金糸の刺繍で描かれた蔦模様がぐるりと回り、華やかな衣装に高貴で洗練された要素を付している。


 ショーマの賛辞に二人はありがとうと礼を返す。


「一言よろしいかしら?わたくしは()ではなく()ですのよ」


 そうだった!とおどけるショーマにレジーナは微笑み返す。そして彼女はバーナードの隣に、マルティナは一人掛けのソファにそれぞれ腰を下ろした。


「それで、どこまでお話ししたのかしら?」


 マルティナが話し始めると思っていたソラは、レジーナが喋り出しておやっと片眉を僅かに動かした。


「明日決行ーってことだけ!」


 ショーマは元気に答える。バーナードが一瞬にして渋い顔になった。


「あら、旦那様。そんなに眉間に皺を寄せてはなりませんわ。やっとフローラに会えますのよ」


 レジーナがバーナードを覗き込み、眉間の皺を人差し指でぐにぐにと解す。マルティナはお客様の前だから止めなさいと言うものの、それでショーマたちの機嫌を損ねないのは判っているのか実力行使には出なかった。

 ショーマとソラは仲良しだねと微笑ましいものを見ながらカップを傾け残りの紅茶を飲む。


 後から来た二人の分と、ショーマたちの紅茶を変えようと部屋に戻ってきた執事はその光景を見て唖然と固まる。まさか、仮とは言え客人の前でそんな。と彼の中で常識がポロポロと崩れている様だ。


「ねぇ、本題に戻ってもいいかな?」


 ショーマはカップをソーサーに戻しつつ言葉を放った。悪いとバーナードはレジーナの手をそっと外す。

 ソラがカップを軽く上げて頂いても?と微笑むと、固まる執事はハッとし、いそいそと途中で止まっていた給仕の手を動かす。


 ショーマは紅茶が行き渡るのを待って話し始めた。


「で、明日なんだけど。ミリメトピアに行く時間は今日のこれくらいの時間かな。決行までに色々とやることがあってさー」


「意外と良心的な時間だな。もっと街中が寝静まる深夜になるかと思っていたが」


「えー、俺そんな起きてらんないよー。まだまだお子様だもん」


「中身はともかく、見た目は確かにそうだな」


「ひどいなぁ!ふふ、ま、いーや。ってことで、君も出掛ける用意をしておいてね」


「はぁ、わかった。あと私のことはバートで良い。私もウィスと呼ばせてもらおう。どうせ私の名は長過ぎて覚えていないのだろう?さっきは無駄に良い笑顔だったしな」


「あはっ、バレた?じゃあバートさんって呼ばせてもらうね。てかほんとめっちゃ長い名前だよ。舌が縺れそう」


「長年言い続ければそうでもないぞ。そもそも私の身分にもなれば他人に名乗る機会などほぼ無いしな。それで、一度に何人まで移動できるんだ?」


「うーん、50人くらいならいけるんじゃない?この前結構な数を一気に跳ばしたし。感覚的に言うと20人余裕で行ける感じだね」


 イクハさんたちに魔物、動物、レジーナさんたちも。よくあれだけの数をサートミーラから無人島まで転移して余裕だったもんだ。そう言えば父さんもドラゴン姿だったっけ。魔法陣にさえ入ってれば質量はあんまり関係ない感じなのかな?そう言えば、質量って要素を絡めて作らなかったな。


 ショーマは自分の作った魔法の性能が想像以上だと今さらながらに気付いたらしい。バーナードが思いの外多い人数に瞠目していることはスルーし、考える人のポーズで考える。


 そうなると、固定式で用意しようとしてる魔法陣は人数制限とか掛けておいた方が良いかな。あまり一回に大量に送れると後々問題になりそうだし。あとは特定の人間だけが使える様な、何か鍵的な物が必要だな。

 って、問題は魔力だよ!ユカリは俺が補充すれば良いけど、人間の魔力ってユカリ以下って話だよね。うーん。どーすっかなぁ。


 ショーマは本格的に没頭し始めた。バーナードは困惑の表情を浮かべてソラを見る。


「おい、これは大丈夫なのか?」


「ああ。ただ今までの経験から言うと、こうなるとなかなか戻って来ないな」


 ソラは苦笑いで答える。


「とりあえず僕らで仔細はまとめてしまおうか」


 ソラとバーナードは考え込むショーマを置いて話を詰めていく。


「気付かれない様に侵入するのか。ちなみにドラゴンは使えないのか?」


「どう言うことだ?」


「ここの時の様に、明確な脅威があった方が私が治めるのに楽だと思ってな。まぁ無理にとは言わないが」


「ふむ。まぁ考えておこう。向こうに連れていく人数はどれくらいになりそうだ?」


「すぐに動けるので、そうだな・・・15人か」


「意外と少ないな」


「はぁ。急に言われたらこうなる。ここも治めなければならないのだから。まぁ、向こうには宰相含めこちら側の人間が多く居るから大丈夫だろう。

 マルティナは皆の元に戻ると聞いたが、レジーナは一緒に行くか?」


「お邪魔でなければわたくしも連れていってださる?女の手が必要なこともあるでしょうし、腐っても元公爵家の令嬢ですのよ。どうぞ有意義に使ってくださいな。それに、わたくしも早くフローラに会いたいですわ」


「ハハ。フローラとレジーナが揃えば怖いものなしだな。それで、兄上の処遇はどうなる?」


「兄上?あぁ、神帝のことか。奴は数日森に置いた後にこことは違う場所に連れていく。人格の矯正をされるだろうが、まぁ今のところ命を取りはしない」


「最後に会うことは可能か?」


「それぐらい大丈夫だろう」


「助かる。それにしても、人格矯正、か」


 バーナードは腕を組み、テーブルの中央辺りを見つめている。彼は兄である神帝シルベスタによる数々の罰と言う名の無差別殺人を思い浮かべているらしい。マルティナは唇を噛み、漏れそうになる罵詈雑言を身の内へ押し留めようとしている。

 一方、レジーナは見たところ神帝からの直接の被害は無い様だ。彼女はバーナードとマルティナの事を心配そうに見ている。


「──あ!そう言えば下見に行ったときにフローラさんと王子様も見てきたよ。二人とも元気そうだった」


 ショーマの突然の言葉にサートミーラ勢が固まる。代わりにソラが話し掛けた。


「──あぁ、ウィスに気付いた子供か。そう言えばどんな子だったんだい?」


「うーんとね、全体的にフローラさん似かな。人形みたいな神帝の要素は全然無かったよ。あ、口元はバートさんに似てるかも!」


 ショーマはバーナードを見て共通点発見!とばかりに嬉しそうな声を出した。

 バーナードはそうかとソファに背を預けた。レジーナは良かったですわねと目尻を下ろし、マルティナも微笑んでいる。会話を聞いていた執事はふるふると目に涙を浮かべた。


 ソラは静かに紅茶を飲み、ショーマの言葉で多少弛緩した空気に向かってほうっと息を吐いた。





 皆さま、お久し振りです。

 朝木はとりあえず生きてます。

 以下反省会と言う名の謝罪、言い訳、今後の方針です。

 朝木の独りよがりなのでスルーで結構です。




 この度は更新が2ヶ月近く滞ってしまい申し訳ありません。

 当初は2/10の更新予定でしたが、書けない日々が続きました。

 更新予定日に書いていた文字は1,000字も満たしていなかったと思います。

 しかもいつも以上に面白くない。

 完全にスランプに陥っていた様です。

 そこへ毎年恒例の年度末ブラックマンスリーが今年は2月からとフライングしてきて、平日は日に一度はアクセスしていた「なろう」を放置する事態となっていました。

 アントワネット的に「平日が駄目なら休日に書けば良いじゃない」となりますが、平日の激務のせいかスランプのせいか。

 書いても面白くならずに書き直しや書き足し等を繰り返し、一月超えても満足出来ず、これは投稿したくない、でもエタりたくないと悶々とした日々が続き……

 本日どうにか更新に至りました。


 更新が止まっていた中でもブックマークや評価を頂き、驚きと共に感謝してしてもし足りないなと心が温かくなりました。

 こんな状態の作者のモチベーションアップは必至です。

 これを糧に頑張ります。



 やっと年度末が終わったと思ったら、新入社員の教育係に抜擢されたので当分忙しいままとなりそうです。

 二日やってみて思ったのが「すでにしんどい。特に脳ミソが」

 緒先輩方、尊敬します。

 今後の方針として、実生活に馴れるまで更新は不定期とさせて頂きます。

 ただし、朝木の中のエタ防で「15日はショーマの日」と勝手に制定し、14~16日の中で一度は更新します。

 あと、次回予告はそこまで辿り着かなかった時にちょっと落ち込むのでやめます。

 うん。こんなところかな。


 最後になりますが、これからも『俺が魔王として女神が悪魔な世界にやってきた』をよろしくお願いいたします。


 2021.04.03  朝木 花音




 感想、ブックマーク、評価、ありがとうございます。

 総PVが300,000件を突破しました!300,000目のお客さまは2/1の16:00台にいらっしゃったアナタです。

 総ユニークが2/1に35,000を突破しました。


 これからもショーマたちをよろしくお願いします!


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