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俺が魔王として女神が悪魔な世界にやって来た  作者: 朝木 花音
11女神の手伝い―実働編
229/263

51―二人の温度差


 本日、長めのコネタがあります。

 コネタの質量がめちゃくちゃ重いです。


 それではよろしくお願いします!





「あのさ、俺がここに来たのはちょっとした提案をするためなんだ。王弟さん、悪魔と取り引きしてみない?」


 ショーマは跪くバーナードを見下ろしている。その顔には笑みが浮かび、楽しそう。

 一方のバーナードは額にびっしりと汗を浮かべ、苦悶の表情だ。


「あ、ごめんごめん。これで喋れる?」


 ショーマは威圧を緩めた。バーナードはハァハァと息を整える。ショーマは気にせず次の言葉を発する。


「サートミーラの王様やってみない?」


 バーナードはショーマの言葉に反応出来ていない。息を整えようとしていた筈が、今はゲホゲホと咳き込み息も絶え絶えだ。

 流石のショーマも笑みを引っ込め、心配そうに彼の顔を覗き込んだ。


「ねぇ、ちょっと、え、大丈夫?」


「ウグッ、くさっ、ゴホッ、ゲホッ、カハッ」


 ―――ショーマ、それショーマのせいじゃないか?


 唐突にソラから意思伝達魔法が届く。


 ―――俺のせい?


 ―――魔道具が濃い魔力を浴びて壊れたんだと思う。彼は顔を覆っていなかっただろう?


「──ふーん。匂いがわからなくなるとか、そんな感じの魔道具か」


 ショーマの呟きにバーナードは襟に着いていたピンバッジの様な魔道具を手に見る。お前のせいかと、ショーマの事を恨めしい顔で見上げた。

 ソラに意識を向けていたショーマはバーナードに戻し、その責める様な視線を受け止めた。


 うっ、涙目のおじさん。なんか、心が痛い。


 ショーマはさりげなくバーナードに隠蔽魔法を掛けてやる。そして、彼が落ち着くまで室内をぼーっと観察する事にした。


 あの像は何を模してるんだろう。抽象的過ぎてさっぱりわかんない。前衛美術的な?他の教会は普通に女神像だよね。実物の方がまぁ、美人なんだよな。女神像は人間の想像と創造の限界って感じで諸々足りてない、みたいな。

 でも、ウチの女神様ってひと度喋り始めるとあれー?って感じなんだよな。仕事もたまにあれれーー?ってなるし・・・人外なのは見た目だけ?いやいや、そんな、言っても女神様は女神なんだし。ねぇ。──これ以上はやめとこ。

 塔の上の窓はステンドグラスになってるんだ。あれは花、かな。黒い手裏剣が積み重なってるみたい。あ、夜だから暗い色に見えるのか。

 てか、黒って結構そこら辺にある色だよな。もちろん真っ黒は別にして。なんで人間は黒を毛嫌いしてるんだろ。動物が本能的に火を嫌う様なもの?うーん。昔からあんま暗い所に怯えるってこともなかったからなぁ。今なんて、夜の散歩は楽しいし。

 そっか。人間は黒が嫌いって言うか、怖いのか。得たいの知れないモノって何となく暗がりとか闇とかそんな黒っぽいとこから出てくるもんね。


 ショーマが現実逃避の如くつらつらと考えていると、バーナードが復活した。

 息をやっと整え、ショーマと目を合わせる。顔の良いやさぐれたオヤジが無駄に豪華な絨毯敷きの床に胡座を組んで座っている。王弟が着るには些か粗末な古着の袖で顔を拭う姿には威厳も何も無い。


「お前、何かしたのか?お陰で助かったのだが。いや、直接の原因でもあるのか」


「おおぅ。さっきまでの狼狽え様が嘘みたいだね」


「絶対的強者を前にしたら、矮小な人間なぞ開き直るしか無い。どうせこの前のドラゴン襲来事件もお前が糸を引いているのだろう。で、この効果はいつまで続く?」


「吹っ切り方がハンパないね。明日の朝くらいまでは持続すると思うよ」


「下手に引き摺ると判断が遅くなるからな。上に立つ者として弁えているだけだ。明日の朝まではこの恩恵を甘んじて受けよう」


「いいねぇ。そう言う潔いヤツは嫌いじゃないよ」


 諦めを滲ませた顔のバーナード。機嫌良さげにカカと笑うショーマ。相変わらずの温度差だ。


「ハァ、それで、私に何をやらせるんだ?」


「単刀直入に、サートミーラの王様やってみない?」


「・・・は?」


 ショーマの言葉を上手く飲み込めず、バーナードは困惑の表情を浮かべる。


「今の王様、いや、神帝だっけ?ヤバいやつじゃん?だから、神帝(あいつ)と比べたらかなりマシな王弟(あんた)に代わって貰おうと思って!」


 降って湧いた話にバーナードは理解が追い付かない。否、理解はしているが理解をしたくない心情だ。


「部外者であるお前がそこまで言う理由は何だ?」


「うーん。ミリティナさんへの仕打ちを見ちゃってさ。他の人のは見てないけど、彼女のあれでマシなんでしょ?別に俺はかかあ天下を推奨する訳でも、女性の社会進出を!とか声高に言うつもりはないけどさ、自分の奥さん相手にあれは無いと思うんだ。百歩譲って、犯罪者には刑としてありだとは思うけど。

 ってことで!俺の中であいつ潰すの確定してんだよねー」


 ショーマはにっこりと笑う。バーナードはハハハと乾いた笑いで応えた。


「もうそれは私に王をやらせる事が決定ではないか」


「あはっ!バレた!!でもさー自分の知らないところで代替わりさせられるより、事前に知ってた方が心構えが出来ていいでしょ?」


「それはそうだな。ハァ。で、いつやるんだ?」


「うーん近い内、二、三日くらいで動くかな?ってか、ほんと受け入れるのが早いね。実のお兄さんを引摺り降ろそうって話なのに」


「兄上に関しては私も思うところがあるからな」


「あ、そうだ!優秀な人材を中央に送ってるのは政権奪取の準備だったりする?」


「ハハハ。鋭いな。最初はただ奪われていただけだが、最近は意図的に送っていた。まぁ今回の混乱で無駄になる筈が、そうはならずに済みそうだ」


「無駄にって?」


「チョルコ川の氾濫で来月の天覧試合が出来ない事と、今回のドラゴン襲来事件の責任を取るために処罰を受けるだろうと思っていたのだ」


「処罰って?」


「軽くて国外追放、悪くて処刑だな」


「そんな、他人事みたいに淡々と言うこと?」


「常に実の兄から命を狙われているのだ。この処罰はどっちに転ぼうと兄からの解放となるだろう。まぁ、お前がしゃしゃり出てきたお陰で立場は逆になったがな」


「うっわぁー。あんたら兄弟、殺伐としすぎでない?」


 静かに微笑むバーナード。完全に引いているショーマ。両者の温度差は結局最後まで埋まらなかった。




 ― 城に戻った王弟 ―


「お帰りなさいませ」


「ああ戻った。何か変わったことは?」


「こちらは特にはありません。ですが、殿下には良い事があったみたいですね」


「ああ。妃たちの無事を確認出来たからな」


 具体的な事は言っていなかったが、ミリティナに対するあの意見なら皆無事なのだろう。


「それは良うございました」


「それから、皆を至急会議室へ呼べ」


「え?今からですか?」


「ああ。情勢がひっくり返るぞ」


 バーナードは不敵な笑みを浮かべた。





 ☆コネタ☆


 サートミーラは高すぎる魔力の為に迫害を受けてきたトミーラの民が周りの部族を侵略して興した国です。その勢いは凄まじく、僅か二代で成し遂げたとか。


 トミーラの民はソローシャンのソルの民の様に“魔人寄りの人間”の括りです。かつてトミーラの民は魔力を見る目を持っていました。今なお魔物の言葉を聞けるソルの民とは若干特性が違いますね。バーナードは先祖返りの影響か、集中すれば魔力を見ることが出来ます。

 ショーマが変装魔法を解いた時に剥がれる魔力を目視したバーナードは、元色が黒黒と理解して自分の命に至るまでの全てを諦めました。彼らの部族の言い伝えに“二色の揃う者には歯向かうな”というものがあることも一つの要因です。

 彼らの言う“二色の揃う者”とは、具体的に言えば“魔人”と“人化した魔物”のことです。人間は二色が揃う事が極めて稀な事なので。


 神帝シルベスタは自分より頭が良く、周囲の信頼も勝ち取り、更には先祖返りの高魔力保持者のバーナードに幼い頃から劣等感を抱いています。シルベスタは性格も最悪なので弟に勝っているのは顔くらいですね。その顔すら人によっては王弟(こっち)が好みと言われる始末です。

 そんな状況なのに王として君臨出来ているのは、亡き前王のせいです。前王はどちらが王でも別に良いから長男に決めたほどの考え無しでした。


 元王妃であるミリティナは宰相の娘で元々バーナードと仲良くしていました。彼女は歳を重ねるにつれ社交界で妖精姫と持て囃されるまでに美しく成長しました。シルベスタは“このままでは弟の妃になる。そんなことは許さない”と彼女を自分の妃にするために画策します。なんやかんやあり見事シルベスタはバーナードからミリティナを奪い取りました。


 シルベスタはことあるごとに癇癪を起こし、王妃となったミリティナへの暴力は年々凄まじくなりました。身の危険を感じた彼女は父である宰相に助けを求めます。しかし宰相は国を人質にとられ、娘の為に行動を起こすことが出来ません。その頃バーナードはフローラと結婚して旧都サートミーラに島流しにされており、手を貸すことすら出来ませんでした。

 二人の男が手も足も出せないところでミリティナへの暴力はエスカレートし、ついに彼女の心は壊れます。宰相は報復としてバーナードを主とした政権交代を目論みますが、シルベスタから送られてきた幼馴染みであり戦友でもあったミリティナの悲惨な現状にバーナードは全てが嫌になり拒否しました。

 事態を重く見たマルティナが幼馴染みのバーナードを説得するために愛妾として侍ります。マルティナだけでなくフローラとレジーナからの説得もあり、バーナードはシルベスタと戦うことを決意しました。


 そんな最中(さなか)、フローラの魔力の質が良く量が多いことがシルベスタ陣営に洩れました。その報告を受けて、シルベスタはフローラを狙い始めます。

 天覧試合の時にシルベスタはフローラに粉をかけるも愛する旦那様がいるのでと全く相手にされませんでした。その一件でどうしても彼女が欲しくなったシルベスタは一計を講じます。

 その事件の直前、フローラが懐妊したことが発覚していました。彼女は医療が発達しておらず、母子共に何があるかわからないので箝口令が敷かれ少し発表に時間を置いている間に連れ去られたのです。その状態で元気な王子が生まれたのは奇跡に近いでしょう。


 先日発表されたフローラの懐妊情報は、いい加減愛するバーナードの元へ帰りたい彼女の狂言です。簡単にバレそうなものですが、従医はバーナード派の者であり、自身の身の回りの世話をする者たちもバーナード派でガッチリと固めているのでなかなか尻尾は掴ませません。ちなみに王子は自分のことを父親似だと回りが言っているのに、父とされている神帝とあまり似ていないことを薄々感じています。シルベスタは王子に全く興味が無く、前王と同じように自分の事を邪魔せずに生きていればどうでもいいとさえ思っています。


 以上、王族の秘密とサートミーラの現状でした。


  ☆☆☆


ショーマ「突然どうしたの?」

朝木  「セシルみたいに別視点で書くと、とんでもなく長くなるからサラッとね」

ショーマ「ふーん。これでサラッと?」

朝木  「え?普通に書いたら中編一本になるからね!?」

ショーマ「あー、確かに?」



 ショーマとは関係のない部分なのでサラッとね。

 ……サラッと、だよね?


 コネタだけで二日使った朝木でした。

 ( ´△`)



 次回、見て見てー!です。

 何を!?

 ( ・◇・)?



 応援して頂けると嬉しいです(^^)

 訪問だけでも大感謝(^^)/


 評価ありがとうございました!

 励みになります(* >ω<)


※次回の更新は9/30(水)です。よろしくお願いします。

 やっと十一(といち)(意味違う)更新にまでもって来れた!


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