49―旧都再潜入
お久し振りです。
すいません。更新日を間違えてました。
本日、オマケあります。
それではよろしくお願いします。
※2020/09/10…後半の会話を少し追加しました。
ショーマは「流血事件」や「飛来事件」「間一髪事件」やらを経て、捕虜のいる森で食事を取った。
そしてショーマは今、先日と同じように旧都上空にソラと共に浮かんでいる。
いや、ソラは人型なので前回とは天候も含めてかなり違う。
空は所々に大きな雲が浮かぶが、晴れと言っても差し支えないだろう。二つある月は三日月と半月なので夜空はそれなりに明るい。
眼下に暮らす人々は生きることに精一杯で、その明るさに感謝こそすれど、特別何かが起こらなければ空を見上げる様なことはしない。
すなわち、ただ浮かぶだけの二つの人影に気付く者は誰一人としていない。
―――ショーマ、領主が何処に居るのか聞いた?
―――うん。中央教会か宮殿だろうってさ。教会の回りが騎士で固められてたら教会らしいよ。あ、ちなみに中央教会はこの前俺らが居た広場に面した塔のある建物ね。
―――ふむ。教会はこれが教会だと分かるけど、あの城は宮殿と言う括りなのか?僕にはミリメトピアの方がよほど宮殿に見えるけれど。それに比べたらサートミーラは要塞だよ。
―――おねえさんたち的に自分達が住んでる城=宮殿なんじゃない?とりあえず、教会から見に行ってみよ。
二人は隠蔽魔法が着ている服も含めて全身に掛かっていることを確認する。そして、誰にも目撃される事なく、ゆっくりと街に向かって降下していった。
地上に近付くと、以前シドに教えてもらった“夜の帳”を使って存在感を薄くする。
―――あー、あそこの集団がそうじゃない?ほらあれ、先頭の馬に乗ってるの黒髪だよね。
―――確かに。うん、たぶん彼が領主だろう。しかし、護衛役の警戒が異様だな。身分を隠さずに街中に居るからか?ショーマ、ここは慎重にいこう。
―――そうなの?
―――ああ。結構カリカリしているよ。ショーマも僕みたいに音が沢山聞こえれば良いのにね。
―――そっか。視覚だけじゃなくて聴覚にも情報はいっぱいだ。遠いから聞こえないって決めつけはよくないよね。そのための魔法があるんだし。
―――そうか。ショーマには魔法が沢山あったな。
二人は更に近付いていく。
ショーマは付近の音を拾おうと風鳥の準備を始めようとする。しかし、やっぱアレを使おう!とそれは途中で止めて久々にシド直伝の“風の囁き”の使用作業を始めた。
えーっと、まず範囲を決めて・・・教会を中心に広場の真ん中くらいでいっか。よし、発動っ!うっわ!やめやめ!あー、めっちゃ頭に響くじゃんっ!!
練習は自分の家でやっていたので、範囲に多人数が居るのを想定して居なかった様だ。大量に聞こえてきた会話に慌てて魔法を解いた。
範囲内にいた人々は一瞬の内に膨大な会話が聞こえ、その瞬間誰もが耳に手を当てた。そして恐る恐る辺りを見回し普段通りに戻ったとわかると、周囲と共感しつつ原因についてあれこれと推測を始めた。
うーん。──聞こえすぎるなら範囲をもうちょっと限定すればいいのか。あ!もう中に入っちゃったし教会の中だけでいいや!発動っ!!
《おやおや、王太子殿下。この様な場所までご足労いただきましてありがとうございます。お忙しい御身でしょうに、何様にございますか?》
《はぁ、私と司祭の仲だろう?そんな余所余所しくするな》
《では改めて。バーナード坊っちゃんは忙しいのにこんな場所まで何をしにいらしたのです?》
《おい》
そう言えば、司祭は王弟の元教育係りだったってマルティナさんが言ってたっけ。
《ほほほ。それにしても、昨夜来て頂ければ鎮魂のミサをひらいておりましたのに。皆喜んだと思いますよ》
《知っている。本当は参加したかったのだが、今日の昼過ぎまで城から出られなくてな》
《まぁ、街の民も殿下がお忙しいのは分かっておりますから。それに、あの塩と小麦粉の配給が無ければもっと多くの民が亡くなっていたでしょう。殿下への感謝の言葉をいくつも預かっておりますよ》
《あれはレジーナとハミュリンの助言があったから出来たことで、決して私一人の手柄ではない。寧ろ、私だけでは配給をすると言うことを思い付かなかったかもしれないな》
《相変わらず謙虚と言うのか・・・はぁ》
王弟って、兄貴のせいで自信失くしてる系の実は出来る人だよね。それにおねえさんたちに配給の話を聞いたけど、何をすればわからないだけで何かをやる気はあったみたいだったし。意外と民に寄り添える王様になれるんじゃない?神帝とは真逆で。
《そんなことより、祈りを捧げたい。拝殿は空いているか?》
《そんなことと、はぁ。殿下のその傲らない態度は美徳だと思いますよ。それでは、こちらに》
ショーマたちは教会の敷地内に降り立った。周囲に護衛は居るものの、ショーマの魔法によって気付かれていない様だ。二人は礼拝堂に近付き、窓から中の様子を窺っている。
―――さて、これからどうする?
―――うーん。あの会話の感じだと、参拝中は一人っきりになりそうじゃない?そこを狙って忍び込もうかな。
―――どうやって?
―――え?いつも通り転移魔法で。
―――教会の中には入ったことが無いのに転移出来るのかい?
―――あ、今みたいに転移先が見えてれば大丈夫!あとは、ちょっとの距離なら見えてなくてもおっけー!
―――そうなのか?じゃあ気を付けて行っておいで。僕は周りを見ておくから。
―――うん!行ってきます!
ショーマはサクッと魔法陣を描き、教会の中へと侵入を果たした。
☆オマケ☆
ショーマが女性たちとテントの中で楽しく会話に花を咲かせているころ。
―――ショーマ!大変だ!!
―――父さん?どうしたの?
―――セシルさんが頭から血を流して倒れているんだ!意識も無い!!
―――ええ!?なんで!?どうして!!
―――分からない!少し離れた所で釣りをしていたら、ジャリッとゴンッと音がして、振り向いたらこうなってて!
―――あー、えっと、落ち着いて。息してる?脈拍は?
―――ふぅ、ごめん。呼吸音も心音も聞こえてるよ。ただ、血が止まらないし意識も無い。
―――えーと、えーっと、じゃあ、頭を動かさない様に慎重に、でもソッコーでこっちに運んで!
―――ドラゴン姿になるから、人払いをお願いしていいかい?
―――わかった!
「ナリアさん、ちょっといい?」
「どうしたの?」
「いいから。ちょっとナリアさん借りて行くね。おねえさんたちはここに居て。絶対出てきちゃダメだよ!ミクヤさんお願い!」
ショーマはナリアとテントを出る。
「あのね、セシルさんが頭から血を流して倒れてて」
「……セシルは無事なの?」
「ちょっとわからない。今父さんが連れてくるから」
悲痛な顔で胸の前で両手を組むナリア。ショーマは夕空にソラを認めた。
―――父さんこっち!!
―――今行く!
両腕にセシルを抱えたソラはゆっくりと、衝撃を最小限に抑えて降りる。
ドスン
「セシル!」
「あ!ナリアさん待って!父さんそのまま抱えてて!」
ショーマは駆け寄るナリアを抑え、杖を取り出した。その間に頭の傷口を水で濯ぎ、空気で患部を止血するように圧迫する。
「ディア・セント・フェア・ケア!お願い!!」
ショーマの杖から治療魔法がセシルに注がれる。ナリアとソラはセシルの変化を一片たりとも見逃さないと真剣な眼差しで見つめている。
セシルの傷口は内側から徐々に塞がり、更に待つとかさぶたも残さず何処に傷があったのか分からない程になった。
「う、うーん」
「セシル!」
「……ナリア?」
「セ、セシルー!!」
目覚めたセシルにナリアが抱き着く。ショーマとソラは良かったと胸を撫で下ろした。
「ド、ドラゴン!?」
その時テントの方から悲鳴が聞こえた。ハッとしてナリアはソラからセシルを受け取り、ソラは舞い上がる。そのまま森の奥へ向かって飛び去った。
「二人とも大丈夫なん!?今のはなんだったん!?って、セシルさんやん!!」
悲鳴をあげたハミュリンが三人に向かって走り寄った。
「ほんと、何もんなんよ!!」
「まぁまぁ、落ち着いてよ」
「ドラゴンなんよ!?落ち着いていられんよ!!って、何で生きてるん?ドラゴンなんよ??」
「ははは。俺らは大丈夫ってことかな?ね」
「そうなのよ」
「そうなんだよね」
ハミュリンは腑に落ちない表情を浮かべて、とりあえずテントに戻るように促した。
☆☆☆
セシルの大怪我は寝不足からの足元不注意でした。
岩場は滑るからねー。
そして女性たちに弁明したあと、ショーマが使っていたテントでナリアの看病を受けながら爆睡しました。
ソラはなぜか竜使い認定を受けました。
契約してるドラゴンと同じ髪色に変わるんだよー。とのショーマの方便によって……。
ちなみにショーマが適切な処置が出来たのは、某救命救急系ドラマのお陰です。
次回、悪魔と取引しない?です。
ショーマは王弟を籠絡出来るか!?笑
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※次回の確実更新は、9/10(木)です。
今度は間違えない様に気を付けます。宜しくお願いします。




