37―オネエ再来
遅くなりました。
後半別視点が入ります。
※5/30…前半最後を少し追記しました。
※6/8…天帝→神帝に補正しました。
ショーマとソラは洞窟から無人島へ向かい、サムをピックアップするとセシルを訪ねてアルカンに転移した。
「はへぇ~。本当に時間が違うんだなぁ。鳥人の奴から話だけは聞いてたが」
サムはキョロキョロと周囲を見回す。
場所はアルカンの北側、ソルマンティ家の墓所付近。
「つぅか、さぶっ!!」
ここはまだ雪が残り、歩く度にザクザクとそれなりに足が埋もれる。
「あ、ごめんごめん。これ着て」
ショーマは肩を抱いてガタガタ震え出したサムにソラの毛皮の上着をコピーして渡した。
「だからあの島でその厚着だったんだな!?」
サムは上着を引ったくる様に受け取り、直ぐ様羽織る。しかし、直ぐには温まらなので袷をぎゅっと手で押さえてガクガク震えが止まらない。
ショーマはほんとにごめんと苦笑いした。
一行はショーマの出した光・球で照らされる道を歩いている。
「そう言えば、ショーマ君がウィスでソラの旦那がスカイなんだよな?」
幾分か身体が温まり顔色を取り戻してきたサムが確認した。
「そうだよ!あ、絶対間違えないようにね!」
「おう!任せな!」
大丈夫かなぁ。まぁ、一応魔族の実動部隊に所属してるんだし大丈夫か。
ショーマの心配も余所に、一行はアルカンの北門に到着した。
山の側から突如現れた人影に門を守る自警団が警戒を強めた。彼らは槍を手に詰問する。
「動くな!何者だ!」
「スカイと言います。セシルさんかテッド君にお会いしたいのですが」
「──そこで待て」
門番を務めていた二人がこそこそと話し合う。そしてその内一人が中へ駆けていった。
当然ソラには何を話していたのか筒抜けだ。ショーマはそれを見越してソラに意思伝達魔法で話し掛けた。
―――父さん、なんて?
―――自警団の中で僕らが現れるかもしれないって事が申し送りされていたみたいだ。
―――セシルさんが気を利かせてくれたのかな?
―――そうかもしれないね。
その後すぐ、ショーマたちは門の脇にある通用口から街の中へと通された。
ショーマたちは自警団の詰所、通称“キタサン”の門前に来た。
北門と同様に申し送りがされていた為、フロアのソファではなく奥の会議室に案内される。それぞれが適当に椅子を引き腰掛けた。
「久しぶりに来たけどさ、前より街に活気があるね。夜だからお酒が入ってるだけかな?」
「それもあると思うけど、悪徳領主のロクサンドが捕まった上に横暴だった警備兵も解散したからだね。
それから、対外的にアルカンとその周辺の村々は領主だったロクサンドから自警団が権力を奪ってソローシャンから独立した様な状態みたいだ」
ここへ来るまでに街の住人たちの様々な話を仕入れていたソラがショーマの疑問に答えた。
「ふーん。クーデター成功状態なんだね」
ガチャリと会議室のドアが開く。
「スカイさま、ウィスくんおまたせぇ♪」
うふんとウィンク付きでセシルが会議室へと入ってくる。サムはそれを見てぽかんと口を開いた。
「セシルさん久し振りー!」
「ご無沙汰してます」
「──はっ!オネェか!!」
ぶふっとショーマが吹き出す。セシルは含みを持たせた目線でサムを射抜いた。
「うっ、セシルさん、すんません」
「もう、わかればいいのよん。それで、今日はどうしたのぉ?」
セシルは手近な椅子に腰掛けた。
「あのさ、保護した女性をセシルさんにお願いできないかなー?ってのと、ちょっと仕事の派遣先を探してて」
ショーマが説明を買って出た事にセシルは興味を持ち、目を弓なりに細めた。
「ふぅん?どんな子たちなの?」
ショーマはざっと彼ら彼女らの境遇と状況をざっと説明した。
「──女の子たちはこの街で住める様にすればいいのねぇ?男の子は仕事を斡旋してもいいけどぉ、ただとはいかないわよぉ?」
セシルはニヤリと笑い掛けた。ショーマもにっこり笑い返す。
「もちろんちゃんと対価は用意してるよ。セシルさんってナルアルトさんから変装を教わったんだよね?」
「そうなのよぉ。あの変装大好きオニイサンに教わったのぉん」
セシルのオニイサン発言を聞き、サムは目を丸くしておにいさんってと呟いた。それを拾ったセシルに睨まれビクッと肩を揺らすと、もう何も考えない、これからは無我の境地とぶつぶつ呟き始めた。
ショーマは瞑想かよ!っと突っ込みそうになり、慌てて口をつぐむ。
「──んん、そんなナルアルトさんが絶賛の俺の変装魔法を対価でどう?」
「へぇ~。変装魔法ねぇ。ワタシ、変装にはうるさいわよぉ♪」
「まぁ見ててよ」
ショーマはそう言って変装魔法を掛け始めた。髪色や瞳の色、肌の色をどんどんと変えていく。自身の髪の長さを生かし、セシルの様に濃い緑から白に向かったグラデーションにしたり、虹の様に彩ってみたり。肌色も最早人か?と疑いたくなる様な色に代えたりして遊んでいる。
忙しなく代わる色にセシルは意味不明と考える事を放棄した。ただ、肌の色が人間離れし始めた当たりでもう大丈夫よ!とショーマを止める。
対するショーマは薄紫色に戻すと、これでどうだと言わんばかりのドヤ顔を披露する。
「もぉびっくりしたわよ!けど、確かに凄いわねぇ。それなら余裕で対価になるわよぉ」
「じゃあ、男性たちの方もお願いできる?」
「ええ、セシル様にまっかせなさぁい♪まぁ、実際ワタシたちは人手不足だしねぇ。
ところでぇ、ウィスくんの薄紫色は変装してる色なのぉん?じゃないと変装魔法なんて考えないわよねぇ」
「そーだよ!俺の元の色はこう」
ショーマは変装魔法を解いた。ショーマ本来の黒目黒髪の姿が現れる。それを見たセシルとサムは息を飲んだ。
「──ウィスは黒黒だったのか」
「──あんのクソババア!聞いて無いぞ!いっつもいっつもいっつも!重要情報を後出しばかりしやがって!あれも、これも、それも!」
憤慨するセシルにショーマは目を丸くした。
「セシルさん?」
「え、あらやだ、気にしないでねぇ」
いやんと笑って誤魔化すセシルを見て、ショーマはとりあえず聞かなかったことにした。変装魔法を自分に掛けて元の薄紫色に戻す。
ショーマはセシルに変装魔法を伝授すると、テンション高く色々な色に変える。ついでにとセシルの髪の毛を複製してカツラをプレゼントした。その代わりと言う訳でもないが、アルカンの南地区にあるセシルの隠れ家を今後の転移の場所として提供してもらった。そして、明日の朝(セシルにとっては昼)捕虜と面接をすることを打ち合わせて解散となった。
── ある隊長の話 ──
サートミーラにドラゴンが現れたとの連絡を受け、急ぎ隊を編成して駆け付けた。
兵の詰所に入るなり、現状の報告を受ける。
一番の被害はコロッセオ周辺に捕らえていた魔物たちが消えた事。ご丁寧に死体で詰まっていた建物は焼かれていた。
来月の天覧試合は絶望的だ。神帝がどの様な沙汰を下すのか・・・。
通信の魔道具も含めてありとあらゆる魔道具が機能を停止した。一緒に連れてきた識者の話では、過大な魔力に晒されたとか。原因は解るものの、街中の魔道具を止める程の魔力が想像できないとも言っていた。
貴族街はこの水没問題の対処として閉鎖されていたが、門は破壊され、厩舎が襲撃を受け、王弟閣下の住まう城の中央塔は焼き付くされた。しかし、人的被害は鎮火の際に火傷を負った者がいるだけで他には無い。しかも潰された厩舎の下には下敷きになった馬は一頭もいなかった。
ただ不思議な事に、塔で暮らしていたはずの奴隷たちは跡形もなく消えた。骨すら残さぬ程の火災かとも思ったが、そうでも無いらしい。その上、警備の為に奴隷紋章で従わせていた魔物がコロッセオ周辺と同様に一匹も居なくなった。
民間人の被害はコロッセオから中央教会に至るまでの間のみ。しかも直線的な被害だ。何かが大移動したのか?
それから不可解な事に、中央教会前の広場は空間が確保されていたらしい。住民たちは重ならない様に綺麗に脇へ並べられていたそうだ。
一体どうなっているんだ?まるでドラゴンが魔物たちを連れ去ったみたいじゃないか。そんな事は現実に起こるのか?
原因を突き止めなければ首が飛ぶ。しかし、最初に飛来したドラゴンの目撃以外に何もわからない。
はぁ、原因を突き止められる気がしないな。早々に他の誰かに責任を擦り付けたいところだ。
ショーマ「セシルさん、こんな人だった!」
朝木 「ねー。アルカンの誘拐事件のとこ何回も読んだよ」
ショーマ「あー、だから今日は少な目?」
朝木 「よくおわかりで…」
読むのに時間が掛かり、書く時間が減ってしまいました。
奥さんのナリアとか登場させたかったけど…
全て今後に持ち越しだな!
次回、途中経過報告。です。
きっと彼は心配しているはず!
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
これからも本作をよろしくお願いします♪
(*^^*)
総PV230,000突破しました!
230,000人目のお客様は5/24の18時台にいらっしゃったアナタです!
ご訪問ありがとうございます!
♪ヽ(´▽`)/
※次回更新は、5/29(金)になります。よろしくお願いします。