36―ワイルドライフ?
遅くなりました。
ちょっと、だいぶ、長めです。
本日、そこそこ攻めた内容です。
R15で納まってるはず!
※5/20…前話、サムが考え込んで黙るのは違うのでブツブツ呟く様に修正。
ショーマたちはミツキの洞窟に入る。
「だから、もっと全身に魔力をだな」
『わかってる!わかってるが難しいもんは難しいんだよ!』
相変わらずミツキとキャノーラは喧嘩腰で話している。二人の距離は些か遠い気がしなくもない。
それを見たショーマははぁっと溜め息を吐いた。
「全然仲良くなってないね」
「そうでも無いわよ?」
サクラがクスリと笑って見てたら判るわと言う。
「だから違う!まだここまで魔力が巡っていない!」
ミツキはキャノーラとの距離を一瞬で詰め、むんずと彼女のシッポを掴んだ。
『ふぎゃ!?止めっ!』
キャノーラは驚き飛び退こうとするが、シッポを掴まれ動けない。ミツキはにぎにぎとシッポを弄ぶ。
「ふむ、やはり触り心地の良い毛並みだな。まぁ、我には劣るが」
キャノーラはシッポを掴むミツキの手に向かって爪を振り下ろした。ミツキはパッと手を離す。その隙にキャノーラはミツキから距離をとった。
『さっきから、止めろと、何度言ったら、わかるんだい!!』
「キャノが何度言っても出来ぬのが悪いと思うが?」
シッポを隠し威嚇するキャノーラに、ミツキは悪びれる事もなく言い放った。
『うっ、だからってね!?』
「それに具体的に触られた方が、何処が足りぬかわかるだろう?さて、主たちも戻ったことだし一旦休憩にするか」
キャノーラはやっと解放されると脱力した。その場にぐったりと寝そべる。
「ミツキ、それセクハラだから」
「せくはらとな?」
ショーマが溜め息と共に吐き出した言葉にミツキは首を傾げた。
食後、ショーマはミツキにセクハラとはなんたるかを説いている。
「セクハラか。こちらがそう思っていなくともセクハラなのか?」
「受けた側の感覚が優先されるから」
「ふむ。こちらにその気が無いのにそう言われるのも釈然とせぬな」
「フッ。加害者はみんなそう言うよね。そんで被害者に騒ぐなって言うんだよ」
ショーマは過去に何かがあった様な、遠い目をして呟いた。
姐さんやお姉様方にケツ揉まれたりいろいろ触られたり。そんで健全な反応すると笑われて、どうしろってんだよな。ただでさえ魅惑的な身体を売りにしてる彼女ら相手に・・・。
結局、かかあ天下のフェミニスト集団の中じゃ被害者が何言っても無駄なんだよ。泣き寝入りしか無いんだよ。
がっつり被害があったらしい。
そんな二人の横で、キャノーラは黙々と魔力を巡らせる訓練を行っている。それを見守っているのはサクラだ。
ソラはミツキに頼まれ、洞窟内にキャノーラの部屋を作っている。ヒスイはどんどんと広くなっていく洞窟にはしゃぎ駆け回っていたが、危ないからと先程ソラに捕獲された。
『むむむ、シッポの先まで、うー、こっれで、どうだい!?』
「良いんじゃないかしら?ねぇミツキ、どう?」
サクラに話を振られたミツキはキャノーラを見る。
「まだ荒いが、それだけあれば良さそうだな。その魔力が巡った状態で、身体の中心に魔力を込めろ」
『中心にだね!?むー、むむむー』
キャノーラは唸りながらぐぐっと身体に力を入れ、どうにか魔力を移動しようとしている。
「ミツキ、部屋が出来たよ。あとで見ておいて」
「おお!さすがソラ殿だな!仕事が早い!」
『ふぬぬー!』
ソラが洞窟の拡張工事を終えて戻ってきた。その間もキャノーラは魔力の移動に梃子摺っている。
「ほれ、またシッポを掴まれたいのか?」
『ぐぬぬぬぅー!!』
ミツキに声を掛けられ、キャノーラは魔力の巡りにも気を配る。
『ふんにゃあぁぁ!!──ハァハァ』
キャノーラの気合いの入った?声と共に、ショーマたちの前に一人の女性が現れた。皆一様にどよめく。
「キャノ!お前、やったぞ!!」
「ちょい待ち!キャノ、これ羽織って!」
ショーマは寄ろうとするミツキを止めて、空気から作り出した毛布をキャノーラの肩に掛けた。ミツキは怪訝な顔でそれを見ている。
魔物って、基本裸だもんね。人型になっても気にしないよね。でもさ、これ、いろいろ刺激が強すぎない?巨乳美女の四つん這いって・・・。
一瞬見ちゃったけど、ほんとなんなのあの巨乳!それなのに腹筋バッキバキって、どこの女戦士!?そう言えば、昔ビキニアーマーがどうとかって言ってたヤツがいたな。
てか、あの表情もヤバいよね。明け方の花魁がキセルを吹かしてる感じ。漂う一戦終わりました感。
まるで老婆の様な嗄れ声だと思ってたけど、この見た目だと酒やけした声か出しすぎた声か・・・。
──これだけ揃えば立派なオカズなのに、全く反応を示さないなんて。俺、完全に枯れてる?
はぁっと溜め息を吐くショーマにサクラが心配そうな顔を向けた。ショーマは何でもないと返す。しかし、心の中では涙を溢した。
「キャノ、立てるか?」
ショーマに掛けて貰った毛布の中で箱座りをするキャノーラにミツキが言う。
『みんなみたいに後ろ足でって事だね?やってみるよ』
キャノーラはまだ喉から声を出せない様だ。とりあえずミツキの指示に従おうと居住まいを正した。ゆっくりと前に体重を掛け、腕で地面を押す。その力を利用して腰を上げた。しかし、もう一歩の所でよろめく。
「危ない!」
ミツキが咄嗟に倒れそうになったキャノーラを抱き留めた。
『っと、すまないね。もう大丈夫だよ、放しておくれ』
キャノーラの言葉に反し、ミツキはぎゅうっと力を込める。
『ちょいと、放しておくれ!』
「──なんだこの匂いは。初めて嗅ぐ」
ミツキはキャノーラの首筋に顔を埋め、くんくんとそこの匂いを嗅ぐ。それを見た周りも鼻をひくつかせた。
「何か匂いする?」
ショーマは嗅ぎ取れない。
「これは、あれね。時期的には少し早い気もするけれど」
「でもこの匂いはそうだろうね。ミツキ、優しくしてあげなよ」
ソラとサクラは訳知り顔で頷き合う。更にソラはミツキに声を掛けた。しかし、ミツキはもう既にどっぷりハマっている様だ。息も荒く美味しそうに舌まで這わせ始めている。キャノーラは混乱し、放せと騒ぎ立てている。
「うん!?ミツキ!?」
「ショーマ、帰りましょう。いつまでもここにいてはいけないわ」
「二人きりにしてあげないと野暮だよ」
「どういうこと?」
ショーマはサクラとソラを順に見た。意味不明とばかりに首を傾げる。
「キャノが発情して、ミツキはそれに当てられたみたいね」
「ミツキはずっと一人だったからね。しかもあの距離のあれは耐えられないだろう。さ、ほら帰ろう」
「なっ!?」
ショーマはばっとミツキを見た。
はは、目が完全にイってらっしゃる・・・。
「──うんうん。帰ろっか。ミツキ、こんな手前じゃなくて奥に行きなよ。ってもう聞こえて無いか」
ショーマは口元を引き攣らせながら、家族を連れて洞窟を後にした。
◇◇◇
ショーマたちは洞窟に帰ってきた。
ショーマとサクラはダイニングに向かい、ソラは眠そうなヒスイを連れて風呂へ向かう。
ふぅーっと一息、ショーマはテーブルの自分の席に座った。
「さっきの、凄かったね。でも急にどうしたんだろ」
ショーマは頬杖をついてサクラに話し掛ける。先程のミツキの劇的な変化に正直な所引いていた。
「うーん。そうね。私の推測だけど良いかしら?」
サクラはお茶を入れながらショーマの疑問に向き合った。ショーマはうんと答え、言葉の先を待つ。
サクラは湯気の立つカップを一つ、ショーマの前にコトリと置く。そしてもう一つを持っていつもの席へ座った。ショーマはありがとうと言ってカップを両手でぎゅっと握る。
「たぶんだけれど、ミツキに負けた時点でキャノは少し発情していたと思うの。ほら、メスは強いオスを本能で求めるから。ただ、その時点では二人とも違う種だったでしょう?だからミツキも私たちも気が付かなかったのよ。
それが、気付かれない時間が長くなって、あそこまで濃厚な匂いになってしまったんでしょうね」
「なるほどね?だとしても、なんで急にミツキのスイッチが入ったんだろ」
「それはさっきキャノが人化したことでミツキと同じ状態になったの。ショーマは魔族の起こりは知っているわよね?」
「うん。人化した魔物同士の、そっか!それでミツキはキャノのフェロモンにやられちゃった訳か!」
「たぶんよ?」
「でもそれが正解だと思う!キャノは住んでた森では頂点だったらしいし、誘うような強いオスも居なかったんじゃないかな?そもそもあそこに他の虎が居るのかも怪しいし。だから勝手を知らなくてあんなに慌ててたんじゃない?」
「そう言えば、番は居たけれど子は成してないって言ってたわね。その彼もだいぶ前に人間に捕らえられたって言っていたわ」
「じゃあミツキに負けず劣らず独り身だった訳だ。そりゃ突然あーなれば焦るね」
「本当にね」
ショーマとサクラは納得顔で同時にカップのお茶を啜った。ほうっと同じ様に息を吐いてしまい、どちらともなくクスクスと笑う。
「そう言えば、キャノのフェロモンは父さんには効かないの?俺はそもそも種族が違うっぽいからあれだけど。匂いわからなかったし」
「ドラゴンは唯一にしかそういう興味が湧かないから大丈夫よ」
ショーマはなるほどねーと更に納得してお茶を啜った。
ショーマ「まじかぁ、あれがミツキかぁ」
朝木 「ね、本当にね。焦ったわぁ」
ショーマ「なぁ、ミツキてもしかして初めて?」
朝木 「は?知らんし。乙女に聞くな」
ショーマ「プッ、乙女って、ププッ」
朝木 「言うのはタダだからね!」
ミツキ、暴走しました。
いやぁ野生動物って凄いっ!笑
ミツキはたぶん過保護になるタイプですよね。
嫁を自分の腕の中で囲って放さなそう。
次回、久々オネェ。です。
おっひさ~♪笑
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