29―へんしんするよー?
大変遅くなりました。
ショーマとソラ、ヒスイはサクラと虎の魔物を待っている。ヒスイはそろそろ寝る時間だが、ショーマとソラがいるからかテンションが上がってしまってまだまだ寝そうにない。
ショーマはヒスイに今日は何をしたのかと聞き、ヒスイは一生懸命説明する。ソラがそれを微笑ましく見ていると、ダイニングと外を繋ぐドアがガチャっと開いた。
「ふぅ。キレイになったわ」
サクラがやりきったという表情を存分に湛えてダイニングに入ってきた。その後ろから全身を隅々まで洗われ、ふらふらになった虎の魔物が着いてくる。
「あれ?全然色が違うじゃん」
ショーマは振り向き、思わず呟いた。
虎の魔物は黄土色に近い暗い黄色と焦げ茶の虎柄と思われていたが、サクラによって洗われた彼女はラッパスイセンの様な鮮やかな山吹色と明るい赤茶色の虎柄をしていた。
「本当に汚れが酷かったの。5回も洗っちゃったわ」
もうびっくりよとサクラは笑う。ショーマは絶対それ今回の汚れだけじゃないと虎の魔物を見る。彼女は気まず気に夜闇で何も見えないはずの窓の外を眺めた。
「ほら、ご飯にしよう」
ソラに促され、各々席に着く。虎の魔物の汚れに奮闘するサクラを待っている間にショーマとソラは夕飯の温め直しや配膳などを終わらせていた。
四人は自分の席に座り、虎の魔物はテーブルの横に腰を落ち着ける。
ショーマとソラはいただきますと食事を始め、サクラとヒスイは既に食べているのでそれそれお茶とジュースを飲んでいる。
「ねーねー、とらこさんはへんしんしないのー?」
ふとヒスイが床に置かれた皿に乗る、肉の塊に食らいつく虎の魔物に話し掛けた。
『へんしん?あぁ、人型のことか。アタシは変身したことが無いね』
虎の魔物は肉の塊をもぐもぐと咀嚼しながら答えた。魔物の言葉は声帯を介さないで発するからこそ出来る芸当だ。ただ、お行儀が悪いとサクラに叱られる。
「みんなへんしんするよー?」
ヒスイはソラとサクラを交互に見て言う。ソラに教えてあげてと言われたショーマは、どう伝えればいいんだ?と悩む。
「そうなんだけど。うーん。ドラゴンはみんな変身するけど。そうだ!ウルシとか他の魔物はいっっっぱい魔力を溜めないと変身できないんだよ。だからトラ子さんも変身してないの」
「じゃーぼくはへんしんしたのー?」
ヒスイはこてんと首を傾げた。
「変身、と言うか魔物に進化したんだよね?」
ショーマも首を傾げた。
「たぶん。女神様が言うにはそうらしい」
ソラが自信無さげに答える。
「ショーマ、こういう時こそ女神様に聞いてみたら?」
サクラが良案を思いつく。ショーマはそっか!と久々の女神リンクを繋いだ。
「もしもし女神様ー?」
―――はろー!久し振りだね!みんな元気?
「うちは元気にやってるよ」
―――それは良かった!ちなみにお願いしてる事は順調?
「今のとこね」
―――さすがショーマくん!これからもよろしくね!
「おっけー。でさ、聞きたい事があるんだけど」
ショーマはドラゴンの進化について訊ねる。
―――うん。前にも言ったけどドラゴンは卵の中で進化してるんだよ。そうだ!今洞窟だよね?
「そうだよ。あ、もしかして来「やほっ!」うわっ!!」
ショーマが言い切る前に女神が現れた。
ショーマは相変わらず急だねと胸を押さえて文句を言い、それに女神はしたり顔を向ける。
ソラとサクラはいつも通りにいらっしゃいと微笑み掛ける。
ヒスイは急に現れた女神にうひょー!っと謎の声を上げ、椅子から跳び降りて彼女の周りをぐるぐる走り回る。しかし、あっという間にサクラに捕まり、そのままソラの膝に乗せられた。
女神とドラゴン家族が和気あいあいとしている横で、虎の魔物は口をあんぐりと開き固まったままだ。
ふと虎の魔物と女神との視線が合う。虎の魔物はブルッと震えた。何かを察知したらしい。
「あれ?この子は新入り?」
「あー、サートミーラでいろいろあって仲間になったんだよ。でさ、ドラゴンって生まれた時は進化済みなんだよね?」
ショーマはあははと笑って誤魔化し、話を逸らした。
「そうそう!これを見せてあげようと思って来たの!」
女神はじゃーんと言いながらどこからともなく透明なアクリル板の様なものを取り出す。
端の窪みを撫でると、透明な板は映像を写し出した。人差し指で板の表面を撫で、目的のものを探している様だ。
「あれはこの前ショーマが発明したガラスの板みたいなものかな?」
ソラは気になりショーマに尋ねる。
「うんと、それをもっと進化させた感じかな?で、何を見せてくれるの?」
「え?ショーマ君これ開発してるの?ちょっとこの世界には早くないかな」
「いやいや、それをここに持ってきてる時点で女神様も同罪だよ?」
「私はここだけって思ってるから」
「じゃあ俺だって家族間しか使わないし」
ああ言えばこう言うの不毛な言い争いが始まる。
「ねぇ、女神様は何かを見せようと思ってここへ来たのよね?」
サクラの一言で二人は言い合いを止めた。そして女神はまた板を撫でる。
「そうそう!えっと、この中の、あった!これ見て!」
どうやら目的のものが見付かったらしい。女神は皆に見える様に板をテーブルの端に平置きした。
板に写し出されているのは薄暗い空間。一体何が始まるのかと一同は固唾を飲んで見守る。
女神が少し早めるねと操作をした。すると、映像には黒い二本の影が現れる。その二本の影は徐々に大きくなり、二匹のトカゲの様な形になった。
「これ何なの?」
「これは卵の中のソラ君とシド君だよ。どっちがどっちか判らないけどね」
どうやらこの映像はソラとシドが孵るまでの様子らしい。ショーマはポカンとした顔で女神を見た。これが僕らかとソラは映像を見つめている。
「ほら、そろそろだよ」
ショーマが目を離していた間に羽が生え、トカゲの様だったものからドラゴンに変わっていた。
そして、映像は眩い光に包まれる。
「あ、これ進化だね。ユカリと一緒だ」
ショーマはユカリの進化場面を思い出す。
光が収まると空色のドラゴンと紫土色のドラゴンに変わっていた。
「これで卵の中で進化してるってわかった?」
「うん。あ、でも待って。ヒスイは人型で生まれてきたよ?」
「それはこのまま見てればわかるよ」
ショーマの疑問に女神は答える。一同はそのままじっと映像を見ていた。
暫く見ていると、徐々に大きくなっていたドラゴンは何の前触れもなく赤子へ変化した。卵の中で膝を抱えた二人はおでこを突き合わせている。
「ショーマがうちに来たときみたいなのね」
「確かに人間の赤ちゃんに似てるかも。これから今のヒスイ君くらいまで成長したら殻を破って生まれるんだよ」
「なるほどねー。で、なんで急に人化したの?」
「それはドラゴンは他の世界から来てるから。どうしても魔力を溜める器が最初は不安定なんだよね。その器を強くするために外の魔力をぐんぐん吸収するし、自分の放出魔力は出ていかない様に内側内側へと凝縮していくんだ。そうやって魔力を操作していると、自然と人型になっちゃうんだよ」
「へぇー。あ、だから父さんたちはドラゴン姿で卵の側にいたし、俺が魔力制御出来ないときも卵の側に居たらいいって言ってたんだ」
「そう言うこと。みんなの放出魔力がもったいないからね。
ヒスイ君の器はまだ完全に安定してないから、あと10年くらいは人型のままかな。完全に安定したらドラゴンになれるようになるよ」
女神の説明にショーマはなるほどと頷く。
「あ、そうだ。そこの虎の子は結構溜まってるから、ショーマ君がちょこっと魔力を足してあげれば人型になれそうだよ」
急に話のやり玉にあがった虎の魔物はビクッとする。ショーマたちの視線が集まり、居心地が悪そうだ。
「え?マジで?ちょこっとってどれくらい?」
「うーん、今ここでやってくれればストップって言うよ」
『ちょっと待った。本当にやる気なのかい?』
「うんやるよ!折角だし!」
ショーマは慌て逃げようとする虎の魔物を籠絡魔法で制し、魔力を注ぐべく右手を突き出した。
ショーマ「女神様久し振りだね」
女神様 「ほんとほんと」
ショーマ「朝木が呼ばないから」
女神様 「ほんとだよね」
朝木 「ちょっと待って!ショーマが思い出さないからでしょ!?」
ショーマ「は?俺のせいにすんの?」
朝木 「どう考えてもショーマのせいでしょ!人のせいにしないでよ!」
ショーマ「朝木が話に出さないからだろ!書いてるのは誰だ!?」
なんたらかんたらぐちぐちぐだぐだ
女神様 「はぁ。この感じも久し振りだね。あ、茶柱だ」ずぞぞ
久し振りの女神様。
なんで出た!?
まさかの生命の神秘回。
完全にN○Kの教育番組か理科の授業だよね。
きっと臍が何かに繋がっていたはず。
生物取ってなくてイマイチ分かってない人。
次回、今度こそぴったりな人です!
待たせてすまぬ!!
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訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
これからも頑張ります( v^-゜)♪
※次回更新は、4/20(月)となります。よろしくお願いします。
緊急事態宣言で話題のこの時期に体調不良なんですよ。
たぶん年度末サバイバルを生き延びた反動だと。
新型コロナだったらどうしよう!?
家族と職場の人以外で人と接触してるのはスーパー、コンビニくらいなんだけどな(ーー;)
はっ!これが経路不明ってやつ!?
とりあえずのセルフ隔離!笑
……バカやってないで温かくして寝ます。




