24―綺麗にするには
少し長めです。
オマケあります。
※2/28…前話冒頭、追記しました。
ショーマはサートミーラから連れてきた者たちと、南の島に居る。
ショーマは手慣れた感じで空気からテントを二つ作り出し、拐ってきた女性たちと魔族の男を収容した。
イクハとミクヤはこれ以上は驚かないと思っていたが、ショーマが使う空気塊魔法を見て完全に目が点になった。メイとライは目を輝かせてショーマが色々と作り出す様子を眺めている。
ショーマは更に空気から大きな浴槽(なんとなく岩で出来た露天風呂っぽい)を波打ち際にいくつも作ると、少しぬるいくらいの湯で満たした。
「獣のみんなはご飯食べたらこっちね!めっっっちゃ臭いから!人によっては死臭もしてるしさー。水に触るの嫌かもしれないけど、そのままじゃ元の場所へ連れて行けないからちゃんと綺麗にしてね」
ショーマは食事を終えた動物や魔物を集めて湯浴みをするように指示を出した。
更に更にショーマは空気から衝立を作ると浴槽の一つを覆った。
「イクハさんたちはここ使って。あ、質問は後で受け付けるから」
ショーマは何かを聞きたそうにしている彼らを中に追い立てて入口を閉めた。
『僕もそろそろ行ってくるよ』
ソラはそう言って空へ舞う。沖へ出て行きそのままザパーンと水飛沫を上げ海に飛び込んだ。身体に付着しているであろう疫病のもとなどを海で濯ぐことにしたらしい。
ショーマは一人になった。スタスタと歩いて海にせり出した岸壁に向かう。
さてと、俺も綺麗にしなきゃねー。折角海辺に居るんだから塩水消毒ってね。今夜だけど。でも、こいつがあれば真っ暗闇もちょーよゆー!
着ている服を全て霧散させると光球をお供に夜の海に崖上から飛び込んだ。
突然の光と気配に眠っていた魚が逃げ惑うが、ショーマは我関せずと潜ったりする。
ぅおっ!魚ちかっ!すっげーきれい!昔写真で見た沖縄の海ってこんなん?
汚れ落としの為に海に入ったはずが、すっかり夜の海を満喫している。波間にプカプカと仰向けで浮かびながら、空にある月を見上げた。
こっちは晴れてるのに、向こうはずっと雨なんだよね。世界的な異常気象なのかな?いや、ウチの方はいつも通りの積雪量だったよ。同じ星なのに大陸が違うと気象条件も全く違うのかな。
うーん。天気って地学だったっけ?その辺の知識はさっぱりだ。日本の天気図以外を勉強した記憶がないよ。
ショーマは考える事を放棄して身体から力を抜く。大の字になり海に良いように弄ばれる。
やっぱ海って良いよなー。特にこのゆったりとした揺れとチャプチャプ音。浜辺に寄せる波のザザーって音も癒されるけどね。
ショーマは力だけでなく、常に掛けている隠蔽魔法や変装魔法、更には魔力制御や操作まで止めてしまう。
何もしない状態って久々かな。いやぁーしかし。さっきまでの戦場みたいな忙しさが嘘みたいにのんびりだなぁ。
──さてと、そろそろ戻るか。
一頻り満足すると、浜に上がって局地的豪雨を魔法で作り潮を落とした。空気から吸水性の高いタオルを作り水気を取ると服を着る。
換装!ってね。
へぇー、マンガみたいにパッと着れるもんだね。想像力って凄いなー。
──ちょっと違うのもいける?おお!じゃあこれは?
ショーマは調子に乗って色々な格好を始める。少しだけ楽しんだ後、サートミーラの格好に戻った。送風魔法で髪を乾かす。
ソラは海から上がるとショーマと同じようにシャワーを浴びて人化した。一通り魔物や動物と話したので、もう動きやすい人型の方が良いらしい。
「わぁ!?父さん服は!?」
「あれ?」
慌てるショーマと全裸に剣だけを装備したソラ。
ショーマは急いで服を作り、滑稽な姿のソラに渡す。
「なんで服無くなったの!?」
「なんでだろう。ショーマが空気から作った服だったから装備にならなかったのかな?」
ソラは首を捻りながらショーマに渡された服を着ていく。
「あくまで魔法って事かぁ。今度から気を付けないとね。タイミングが悪いと露出狂になっちゃう」
ショーマの言葉にソラはハハハと乾いた笑いで応えた。
ショーマが焚き火の世話をしているところに風呂上がりのミクヤが寄ってくる。イクハたちもついてきた。
「一体あの魔法は何ですか!?それにこれだけの魔物をあの一瞬で配下に治めるなんて!!さっきの高魔力の理由は!?そもそもあなたは何者なのですか!?」
質問を並べ立てるミクヤの背後からソラが話し掛ける。
「ミクヤさん、落ち着いて。いくらショーマでも一気に聞かれたら何から答えるかで困りますから」
「え!?誰!?」
「おいおい、この人はソラさんだよ」
ミクヤは人化したソラに気付いて固まる。イクハはすぐその正体に気付いて笑った。
「量は少なくなっているが、あのドラゴンと同質だろう?」
「本当だ。人化できる魔物なんて見たことなかったから」
「ねぇ、とりあえず座ったら?」
ショーマは焚き火の横に石で出来たテーブルと椅子を作り、皆を座らせた。そしてミクヤの質問責めに一つ一つ答える。
魔王候補で魔族の稀少種(竜人)で女神様の部下でと正体を明かしていくと、徐々にミクヤの勢いも落ち着いた。サートミーラでのあれこれや、ここへ来てからのあれこれがなんとなく府に落ちた様だ。
そして質問が魔法に関する部分に話題が及ぶと段々苦笑いの様相になってきた。
「空気から物体を作るなど考えたこともありませんでした。それにしても、魔素を自在に操るなんて非常識にも程があります。魔法を使う時に自分の魔力と混ぜるなんて」
「そうだ。魔素って何?」
「魔素は空気中の魔力の事です。ショーマ様の言葉にすれば世界の魔力のことですね」
「へぇー。そうなんだ。ミクヤさんは物識りだね」
「ハァ、世界に対する常識が欠落しているのにこれだけの力を持つなんて・・・なんだか私たちは常識に収まらない大変な方に助けられたのですね」
えへへと笑うショーマを見て、ミクヤは溜め息混じりに話を〆た。
質問が落ち着くと図ったようにくぅっと誰かの腹が鳴る。ライが腹に手を当て、困った様に眉を下げた。
「ははっ!今ご飯貰ってくるね!」
ショーマはライににっこりと笑いかけ、ディラントへ向けて転移した。
ショーマは城の食堂に現れる。夜もだいぶ遅いからか食堂は閑散としていた。
ここディラントには夜行性の魔族も多く居るので食堂は基本的に24時間開いている。
「あのー、すいません。病人に優しい料理ってあります?」
「病人ですか・・・玉子粥なら直ぐに用意が出来ますよ」
「それ良い!やっぱり病み上がりはお粥だよね。
あと、普通の・・・やべっ、みんな何食べるんだろ。ちょっと聞いてきます!」
「え?聞いて?・・・あれ?・・・はっ!?」
ショーマは再び転移した。ミクヤ、メイ、ライに食べたいものを聞いてまた食堂に戻る。
パッと消え、パッと現れたショーマに料理人は己の目を疑った。いつも捕虜の料理を用意している人とは違ったので、転移魔法の存在を知らなかったらしい。
「えっと、さっきの玉子粥の他に肉料理で女性に人気のやつと、オムライスを二つお願いします!」
ショーマは食事を注文すると、待ち時間を使ってヒルダに光鳥を飛ばした。食堂の一番後ろの席に座り、ヒルダからの反応を待つ。数分後、ヒルダが壁に映写された。
《お疲れ様じゃの》
「ヒルダさんも遅くまでお疲れ様」
《わたしは夜更かしに慣れておるからまだまだ元気じゃ。しかし、サム程の者がが死にかけておったのか》
「うん。助けた魔人に診てもらったら“魔力枯渇”って状態だったらしいよ。今は安定してるけどね。魔力の器も治ったし」
《そうかそれは良かった。のじゃが、器が壊れておったのか。よく治ったの?》
「まぁ、たまたまねー」
《ふむ、その苦笑いは詮索するなと言う事じゃな。まぁよい。それで、ショーマが先程ナルに問合せた件じゃが。セシルは今アルカンにおる。自警団の詰所に行けばだいたい会えるみたいじゃの》
「りょーかいです!あ、はーい!今行きます!
じゃあ、またあとで連絡するね!」
ショーマは呼び声に応えると光鳥に送っていた魔力を切る。そして受け取り口に向かうと食事を受け取り、島に転移した。
☆オマケ☆
ショーマは急いで何を食べたいか聞きにきた。
「みんな何食べたい?あ、イクハさんは病人食だから」
「病人食……」
「私は肉料理が食べたいです」
「ライはね、たまごがいい!」
「メイ、たまご好きー!」
「ショーマ、世界樹茶もヤカンで貰っておいで」
「おっけ!じゃあ待っててね!」
ショーマはまたディラントへ転移した。
☆☆☆
ショーマ「よし、みんな綺麗になったね!」
朝木 「あのままじゃ帰れないもんね」
ショーマ「居場所バレるから狩りも出来ないし」
朝木 「確かに。ちなみに入浴剤入りだったり?」
ショーマ「よくわかったね!森林の香り!」
朝木 「緑のバス○マン?」
ショーマ「そうだよ!」エヘッ
魔物のみんなが入浴しました!
猫系の子らは水面をちょんちょん。
からの背に腹は代えられぬと嫌々入水。
すんなり入ったのは意外と鳥系の彼ら。
ぷかぷか浮きながらの羽繕い。
結構満喫していました。
猫の方が烏の行水?笑
次回、初めまして?2です。
今度こそサム!
まさかの料理人と初めましてだった今回。
(;・∀・)
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※次回更新は3/9(月)です。よろしくお願いします。
活動報告にも書きましたが、年度末なので更新ペースが遅くなります。m(_ _)m
なんとか週1で更新したい…