23―常識と非常識
遅くなりました。
残酷な表現はお休みです。
ショーマはサートミーラで保護した者たちを連れ、魔族の国ディラントより少し北に位置する無人島にきた。
砂浜の中央に焚き火を設営し、幾つかの光球を浮かべ周囲は昼間の様に明るい。
ショーマは先に着いていたミクヤと後から来たライの感動の再会を見届ける。そして未だに眠ったままの人物に視線を向けた。
「まだ目を覚まさないんだね」
『ああ。あの後もライが治療をしてくれていたんだけどね』
「どうしたもんか」
ショーマとソラが悩んでいると、イクハに伴われてミクヤが来た。ショーマが城であれこれしている間にイクハはゆっくり歩けるまでに回復した様だ。
「ミクヤ、この人がずっと目覚めないんだ。お前なら理由がわかるだろう?」
「さすがにナグのイクハよりは色々と知って・・・あら?この方は魔族なの?」
「ああそうだ。後はよろしく我らがナグリ殿」
イクハの言葉にミクヤは謎の人物を見た。直ぐに彼が魔族と判断する。イクハは一言言い置いて、魔物の仕分けを始める為にソラと場所を移動した。
ショーマは瞬時に彼を魔族と見抜いたミクヤに驚いた。
「ミクヤさん、どうしてすぐ魔族だってわかったの?」
「これだけ勢いよく、しかも一点から魔力を放出するのは魔族だけなのですぐにわかりますよ。彼らは普段上手く人間に偽装している筈ですが、気絶していては難しい様ですね」
ショーマの質問にミクヤはこれぐらい常識ですと彼の状態を確認しながら答えた。
ショーマはにへらと笑う。ライよりも経験のあるミクヤが診てくれれば万事解決と気を抜いた様だ。
「知らなかったよー。それに俺は魔人じゃないから魔力見えないし」
「え?魔人でないと魔力は見えないのですか?それは初めて知りました。実に興味深いですね・・・。
それにしても、生きているのが不思議なくらいです」
ミクヤはライがやっていた様に手を彼に向けて金色の光を放つ。
「どうして?」
「この方は魔力が枯渇寸前です。
ここは魔物の放出魔力で空気中に魔素が溢れていますので、それを取り込む事でなんとか命を繋いでいるみたいですね。自らの器で魔力を生産することが出来ていませんから」
「それは?治療じゃないの?」
ショーマはミクヤの手を指して聞く。
「効率よく空気中の魔素を彼の器に注いでいるだけです。直ぐに放出されてしまうでしょう」
「そんな・・・」
ミクヤの説明にショーマは愕然とした。
「魔力の器自体の修復が出来れば良いのですが、こればかりは私の治癒魔法でも直らないのです」
「──治癒魔法ってさ、人間の魔法でいうところのヒールだよね?」
ショーマは何かを考えながらミクヤに問う。ミクヤはそうですと頷いた。
癒すじゃ足りないのか。あれ?前にもこれ考えたな。なんだっけ。あぁ、あれか。ユカリが転移酔いしたときの。よし、聖の概念さん、彼をどうにか治す方向でよろしくお願いしまーす。
ショーマは杖を抜く。
「ディア・セント・フェア・ケア」
ショーマが唱えると、ミクヤが驚く。
「あ、え?ショーマ様っ、お身体は大丈夫ですか!?」
「え?なんで?」
ショーマはきょとんとミクヤを見る。
「い、今とんでもない量の魔力がその杖から放出されたのですが。その、私では気を失ってしまう程の」
「え?そうなの?まだまだ全然余裕だよ」
「街であれだけ魔法を使って、まだ余裕があるなんて・・・」
けろりのほほんとした笑顔のショーマと驚きに目を見張るミクヤの温度差が激しい。
「それよりどうかな?魔力の器は治った?」
ミクヤははっとして確認を急ぐ。
「──少しずつですが、魔力の生産を始めた様です。これは奇跡です!ショーマ様はすごいです!」
ミクヤはショーマを褒めちぎった。ショーマはえへへと頭を掻く。
「どれくらいで目を覚ますと思う?」
「そうですね、この調子で増えれば1時間もすれば目覚めると思います」
「よかったぁ。それじゃあこの人は任せるね」
ショーマはミクヤに後を託し、魔物を仕分けしているソラたちの元へ向かった。
ショーマはソラに近寄る。それに気付いたイクハも寄ってきた。
「こっちは順調?」
『ああ、大まかに住んでいた森毎に分けたよ。一番多いのはサートミーラの南に広がる森、次に多いのはサートミーラの北西の森とハルスンブルの西の森かな。ちなみにミリメトピアの南の森からはあの熊の魔物だけみたいだ』
「へぇー。そうなんだ」
「あまり遠い所から連れてくるメリットはありませんからね」
「確かに、途中の輸送なんかは距離が延びればそれだけ大変だもんね。じゃあ、熊の彼はイレギュラーなんだ」
話しているショーマ、ソラ、イクハに近付く者がいる。
『坊や、魔力は持ち直したが、そろそろ腹が減ったよ。何か食べてきていいかね?』
「えっ!?あービックリした。虎の君か。ちょっと待ってて!」
ショーマはぱっとどこかへ転移して、ぱっと肉の山と共に戻ってきた。一つ一つの塊は巨大で、軽く50個は超える。
「・・・これは、どこから?」
イクハは肉の塊を唖然と見つめる。
「スポンサーのディラント王国から!じゃあこれを皆で分けてね。ケンカしちゃだめだからねー!」
ショーマの号令に動物と魔物は肉に群がる。
「父さん、見といて。イクハさんはこっち」
ショーマはソラに動物と魔物を託し、イクハと移動する。
ショーマはイクハと共に誘拐してきた人間の女性を寝かせている場所に来た。その場にメイとライも呼ぶ。
「イクハさん、二人とこの人たちの首輪は外しても大丈夫なもの?」
「子供たちの物は既にショーマ様が上書きをしているのでショーマ様の手で簡単に外せますよ。──ふむ。女性たちの方は、高出力の魔力を流して壊すしかない様ですね」
イクハは女性の首輪を一通り観察し、ショーマに伝えた。
ショーマはそれを聞くなりメイ、ライの首輪を掴んでパキッと割り、近くの女性の首輪に手を掛けた。魔物に魔力を譲渡する要領で、でもいつもの三倍くらいの魔力を一気に流す。すると、首輪は一秒も待たずにボロボロと崩れ去った。
「はは、ははは、なんだこれっ!?」
その光景を全て見ていたイクハは腰を抜かした。
「え?これでいいんでしょ?」
そんなイクハを横目に、ショーマは次々と首輪を壊していく。いくらも時間を掛けずに壊し終えたショーマは、ふぅっと特に汗をかいてもいないのに額を拭った。
「・・・な、なな、なんなんですかその非常識な魔力はっ!!」
「うん?何が?」
イクハの言葉にショーマは可愛らしく首を傾げた。
ショーマ「ふふふーん♪」
朝木 「ご機嫌だねぇ」
ショーマ「とりあえず懸念事項はクリアしたからね!」
朝木 「ずいぶん人間離れしたみたいだけど」
ショーマ「朝木、俺は人間じゃないだろ?」
朝木 「あ、そうだった!」てへっ
ショーマ「・・・」
朝木 「おい!突っ込め!!」
ショーマ「・・・」肩ぽん
朝木 「無言で肩ぽんやめてー!!」泣
例の彼の回復の目処が立ちました。
ショーマはかなり非常識な魔法を使った模様。
ただいま様々な謎が続出中です。
空気中の魔素とは?
そして、ナグリとナグとはいったい?
注:壮大な謎はありません。
次回、初めまして?です。
喋れるまでに回復!
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
総PV200,000件を超えました!
PV200,000人目のお客様は2/19(水)15:00台にいらっしゃったアナタです!
BMが210件になりました!
ご訪問、BM、評価等ありがとうございます!
ここまで書いてこれたのも一重に読者の皆様のお陰です。
ありがとうございます(*⌒―⌒*)
これからもよろしくお願いいたします!
さぁ!今日から200番台いっくよー!!
ヘ(≧▽≦ヘ)♪
テンション高っ!笑
※次回更新は、3/2(月)です。よろしくお願いします。