22―旧都脱出
残酷な表現継続中…
本日少し長めです。
後半、第三者視点です。
※2020/07/27…天帝→神帝に修正
ショーマは城に捕られている女性を連れ去る事にした。悪徳領主への嫌がらせの一貫らしい。
ショーマはミクヤと手分けして塔内全ての扉を開く。空の部屋もあったが全部で11名の奴隷女性を保護し、転がっていた警備兵と共に陸屋根へ移動させた。
全ての人間を移動させると、塔内は無人になる。
ショーマは各部屋いっぱいに空気塊をぽんぽんと作り出した。それぞれを導火線の様に伸ばした空気塊で繋ぐ。
「じゃあ、やるね」
ショーマはミクヤに声を掛け、導火線に炎を放った。
石造りの塔内部は一瞬にして炎に包まれた。女性達の居た痕跡やミクヤの作っていた薬などの全てが燃え尽きる。
「──なんと言って良いのか。ここまで圧倒的で無慈悲な炎は逆に美しいですね」
「無慈悲って。ただ証拠隠滅の為に焼いてるだけだよ?でもまぁ、これで少しはここも綺麗になるよねっ」
呆然と塔を見詰めるミクヤの隣でショーマはふふんと得意気に胸を張った。
「さてと、ちょっとみんなのとこに行ってくるから」
「こちらはお任せください」
ショーマは火を吹く塔に満足すると、女性を一時的にミクヤに任せて坂の上に集めていた魔物の元に降りる。
二人は先にソラ達の居る広場に奴隷となっていた人間を転移させようとも考えた。しかし、あちらは疫病が蔓延している場所。弱った人間には耐えられないだろうと、ここで待機する事になった。
坂の上には数頭の魔物が屯している。
「ごめんごめん。待たせたね」
ショーマの声かけに魔物達は首を横に振った。残念ながら、言葉を話せるものは居ない。
「言葉は話せないかー。とりあえず、熊の君、奥さんは緑の熊でok?」
ショーマが熊の魔物に確認をとると、熊の魔物は肯定するように頭をブンブンと縦に振る。
会えて良かったー!これで死んじゃってたら洒落にならなかったよ。連れてくるって奥さんに大口叩いちゃったからねー。──あれ?
ショーマは魔物違いで無い事に胸を撫で下ろしたが、直ぐに違和感を覚える。
「あのさ、子熊が一緒じゃないの?」
ショーマが尋ねた瞬間、熊の魔物から物凄い殺気が放たれた。
「ちょっと待った!今殺気はダメだって!!」
慌てるショーマ。同時に街の方から比べ物にならない圧倒的な存在感が沸き上がる。
『殺気を放つのは誰だ?』
ソラが押し殺した声で尋ねる。よく通る声だ。ソラは広場から舞い上がり、視線をショーマに合わせている。ショーマに危険が無いかを確認している様だ。
ショーマの周りにいた魔物はソラの声を聞き、一斉に空を見上げた。
―――父さん!ごめん!俺が不用意な質問をしちゃっただけだから!
―――ショーマに向けられた殺気じゃないんだね?
―――そうそう!だから心配しないで!
―――わかった。何かあったら直ぐに言うんだよ。
―――はいっ!
「っ・・・はあぁぁぁ」
ショーマは焦って弁明し、大きな溜め息を一つ吐いた。ソラは広場へ戻り、熊の魔物は申し訳なさそうに肩をすぼめる。
「なんか、ごめんね?それで、もう子熊は居ないって事でいいのかな?」
熊の魔物はこくりと頷く。意気消沈の上に、項垂れ、大きな身体が小さく小さくなっている。
「そっかぁ。来るのが遅くなってごめん」
ショーマは熊の魔物に頭を下げた。熊の魔物は首を横に振った。
そんなショーマたちを目掛けてポツリポツリと雨が降り出す。降るかどうかぎりぎりを保っていたところに、街からの煙の刺激を受けて降り出してしまった様だ。
―――ショーマ、時間切れだ。
ソラからショーマへ連絡が入る。
―――そうだね。降ってきちゃった。
「とりあえず、移動しよっか」
ショーマはミクヤたちと近くの魔物を先に転移させた。そしてソラたちの待つ広場に戻り、イクハ、メイ、ライ、全ての魔物を連れて先に送った者たちの元へ転移した。
── ある警備兵の話 ──
昨年の10月の終わりから雨が降り続いている。毎年この時期に降るのは雪なのに、ずっと雨だ。今年は暖冬なのだろう。
街の東に流れるチョルコ川は川幅が広いにもかかわらず、日に日に水嵩を増していった。
昨日、チョルコ川から下水道を伝って水が上がってきたらしい。領主は「とにかく貴族街には下水を入れたくない」とコロッセオの地下に流す事を即決した。
俺たちは地下で飼育している魔物や動物、戦闘奴隷を急いで地上へ上げることになった。その期限は2日。移動先はコロッセオで使っている奴隷の宿舎(宿舎とは名ばかりのがらんどうな建物)。
俺たちよりも移動させるモノの方が遥かに多い。奴隷はまだ自分の足で動くから良いが、魔物や動物は檻から出せない。奴隷も使い必死に移動させたが、結局過半の動物は移動出来なかった。移動の間に合わなかったモノは地下で溺死してしまっただろう。
平時なら手際の悪さを咎められる案件だ。しかし、さすがに緊急事態だったからか、仲間内からの処刑者は出なかった。
コロッセオの地下に下水を流してから街は悪臭に覆われた。地下で死んだ魔物の腐敗臭や、下水の臭いだろう。
この時期風は北西から南東へ吹く。住人は街の中でも北西の、風上側へ身を寄せる様になった。
北西に家を持つ者は商機とばかりに金を取り住まわせているらしい。金の無いものは道の端で浮浪者の様に踞っている。スラムの奴らも西に寄ってきている。コロッセオから溢れた下水で東は端から徐々に水没しているそうだ。
五日前、一人の奴隷が血を吐き死んだ。それを皮切りに同じ宿舎内でどんどん死体が増える。
上からの指示で、その宿舎を閉めることになった。まだ生きているモノも居るが背に腹は代えられない。
宿舎を閉めてもそこから拡がる様に死者は増える。疫病が街で流行ってしまっている様だ。気付けば東の奴らはほとんどが死んでいた。井戸が汚染されつつあるらしい。
住人は恐慌状態に陥り、比較的安全な貴族街へ入り込もうと躍起になっている。
俺たちは上からの指示に従い、闘技大会用に飼育していた魔物に従属陣を施して領主館へと送り出した。それが抑止力となったのだろう。以降、門を越えようと試みる者は減った。
病が蔓延し続けている。25棟ある宿舎は最早5棟しか稼働していない。そろそろまた1棟閉鎖になるらしい。俺たちが足りない手足として使用を許可されていた戦闘奴隷もここへきてだいぶ数が減った。
領主は遂にお触れを出した。貴族街の閉鎖と街への出入りの禁止だ。
貴族街の使用人は奴隷ではないから、もし病を患ったとすると手当てなどが必要になる。そうならない内に街の外へ出したのだろう。さすが領主は神帝の弟なだけあって、貴族の家格云々による文句を言わせない。一人残らず外へ出た様だ。
貴族街の門担当のやつに聞いたところ、門から領主館前の林までの間には本当に人っ子一人居ないらしい。夜中に門の上から覗くと暗く静かで不気味だと言っていた。いつもなら春の闘技大会に向けて貴族が増える時期だから余計にそう思うのだろう。
警備で街の外を歩いていると、親子連れに出会った。きっと何も知らない観光客だろう。彼らはあまりにも簡易な装備だった。街の現状を伝え、引き返させる。
目から上しか出ていなかったが、良く似た親子だったな。しかもあのぶんだと貴族も驚く程に整った綺麗な顔をしているだろう。
その夜、南門脇の兵舎で休んでいると大きな唸り声が聞こえた。ベッドから飛び起き、慌てて外へと出る。街の住人が空を見上げていた。俺も倣って空を見る。あれだけ曇っていた空が一部晴れていた。
もう一度、今度ははっきりと聞こえた。あれはただの唸り声じゃない!いつか聞いたドラゴンの咆哮だ!!
咆哮で街の上にあった雲が全て散った。目を凝らすと月明かりで白く輝くドラゴンが飛んでいた。昨日ハルスンブルから連絡があった奴と同じか?
ドラゴンに釘付けになっていると、全身に痛いほどの寒気を感じた。耐えきれずに膝を折る。俺も周りの奴らも一様に膝を着いて地面に突っ伏した・・・。
ショーマ「やーっと脱出したよー」
朝木 「精神的に辛く長かった…」
ショーマ「お疲れ。ずっと朝木が苦手な残酷な話ばっかだったもんね」
朝木 「うん。書かなきゃ話が繋がんないからねー。でもこれで残酷な表現は終わったはず!」
ショーマ「マジで?宣言しちゃって大丈夫?」
朝木 「え?あれ?大丈夫だよね?」
ショーマ「いやいや、俺に聞かれても」
残酷な表現はこれにて一段落です!
たぶん!?
(;・∀・)
次回、復活!です。
彼が目覚めない原因は!?
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
これを糧に頑張ります!
そして、今話で200話到達しました!
ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。
拙作ですがこれからもよろしくお願いいたします。
(。-人-。)
※次回更新は、2/24(月)です。よろしくお願いします。