1―入寮
「う゛っ」
僕は腹を蹴られて目が覚めた。1人用のベッドに2人で寝てるから仕方ない。
まだ夜が明けてないな。もう一度寝よう。
ソラはショーマの体勢を直して二度寝した。
◇◇◇
「ごめん!寝坊した!」
ソラはショーマを揺り起こす。
「え!?うそ!?」
ショーマはガバッと起き上がり、朝の仕度もそこそこに荷物をどんどん鞄に詰めていく。
「ウィス、朝ご飯を下で食べてる時間ないから途中で良いかな?」
「うん。遅刻したらまずいし」
荷物を詰め終わると、早々に部屋を出る。
「鞄は重くない?大丈夫?」
「それなりに鍛えてるから意外とへーき。この鞄さ、中身かなり入れたのに頑丈だよね」
「良い買い物だったね。さあ、学校に向かおうか」
二人は宿の主人に鍵を返し、宿を後にした。
二人は魔法学校へ向かって歩く。
「まずは学生寮に行くんだよね?」
「そうだよ。10時くらいに門にって言われたから着いたらちょうど時間だね。間に合いそうで良かった」
「はぁ。そこで父さんとは半年お別れか」
ショーマはしょんぼりしてしまった。
「急にどうしたんだい?寂しくなった?」
「うん」
ソラはショーマの頭を撫でる。
「大丈夫だよ。西部遠征に行ってた時と同じ位の期間だから」
「でもさ、あのときはウルシとルリがいたからさ。完全に一人では無かったんだよね」
「そうか。ウィスにとっては今回が本当の巣立ちになるんだね。でも、ウィスなら大丈夫。それに、学校には一緒に学ぶ生徒が居るからね。寂しいのは最初だけだよ」
「そうだよね。俺、頑張るね」
「うん。期待してるよ」
ソラはショーマの頭をポンポンと叩いた。
◇◇◇
ショーマとソラは学校へとやってきた。門の守衛に声を掛ける。
暫くすると金髪の恰幅の良い女性がやってきた。
「おはようございます。寮母のナタリーです。あら?昨日のお嬢さん?あれ?男の子?」
ナタリーは持っている名簿を見ながら困惑する。
「おはようございます。ウィステリアです。これから半年お世話になります」
ショーマは頭を下げる。
「おはようございます。父のスカイです。息子がお世話になります」
ソラも頭を下げる。
「ご丁寧にありがとう。昨日は女の子と間違えてごめんなさいね」
「大丈夫です。行く先々で女の子と間違えられてるんで、もう気にしてません」
ショーマは若干拗ねた様に答える。
「あはは、すいませんね。ウィス、拗ねないの」
「あら。男の子なのにこんなに可愛らしいなんて、将来が楽しみね」
「うん!そうかもしれないね!」
「ウィス・・・」
ナタリーの一言で機嫌を直したショーマにソラは少し呆れている。
「うふふ。それでは、寮まで案内したいと思います。お父様は一緒に来られますか?」
「いえ、ここで大丈夫です。ウィス、しっかりやるんだよ?」
「うん!頑張るよ!」
「頑張ってね。では、よろしくお願いします」
「はい。じゃあ、ウィステリア君。寮まで行きましょうか」
「じゃあね、父さん。行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
◇◇◇
ショーマはナタリーに連れられて、寮までやってきた。
「ここがウィステリア君が住む学生寮です。向こうの建物は貴族専用の学生寮だから近付かない様に気を付けてね。今来た通りに来れば、貴族の方々と顔を会わせる事はほとんど無いわ」
「わかりました。できるだけ会わないように気を付けます」
面倒事に巻き込まれたくないしね。近付かないのが一番だよね!
「ふふ。では、入りましょう」
ショーマは学生寮の門をくぐる。
「まずは玄関ね。私はそこの管理人室か食堂にいることが多いの。何か用事があればそこを訪ねてちょうだい。
門限は一応夜の9時ね。でも、基礎コースは働いている人もいるから厳守では無いわ。遅くなる時は声を掛けておいてね」
「はーい」
「次に食堂へ案内するわね」
ショーマはナタリーの案内で食堂へ入る。
「ここが食堂よ。朝食・夕食はここで用意するわ。食事が必要な時は夕食は当日の昼まで、朝食は前日の夜8時までに教えてね」
「あのー、食事は有料って聞いたんですけど、いくらなんですか?」
「一食当たり銅貨3枚ね」
「銅貨3枚!?安過ぎないですか!?」
「大丈夫よ。貴族の寮で余った食材を安く仕入れたりしてるから」
「そうなんですね。とりあえず、今夜の夕食と明日の朝食をお願いしても良いですか?」
「良いわよ。夕食の時間は夜の6時から8時、朝食の時間は朝の7時から8時です。遅れないようにね」
「はい。気を付けます」
「次は水場ね。着いてきてちょうだい」
ショーマはナタリーにサクッと主要な場所を案内してもらう。
1階には玄関、管理人室、食堂、中庭、玄関から見て左右それぞれにトイレ(何故か和式ボットン)、浴室(水浴び専用)兼洗濯室、階段が有る。階段を上ると学生の部屋が並んでいる。2、3階共に左右5部屋有り、全部で20部屋になる。左の3階が女子専用で、残りの部屋が男子専用らしい。
「では、ウィステリア君の使う部屋へ行きましょうか」
「はい!」
二人は玄関から見て右の階段を上り、3階の階段脇の部屋へやってきた。
「ここがウィステリア君の部屋。鍵はこれね」
ナタリーはショーマに部屋の鍵を渡す。ショーマは部屋の中へ入り、一通り確認する。
へぇ、結構広い部屋だな。バルコニーまで有るんだ!物干し竿もあるし、洗濯物はここで干すみたいだね。うん?でも、調理スペースが無いな。案内も特にされてないし。自炊ってどこでするんだろう。
「この階の他の部屋は今は使っていないの。来月に基本コースが開講されれば来ると思うから」
「わかりました」
「さぁ、これで案内は終わりだけれど。何か質問はあるかしら」
ショーマは、何点か質問することにした。
「えっと。寮では自炊ができると聞いたんですけど、どこで出来るんですか?」
「それは食堂の厨房で。空いてる所を使ってちょうだい。食器や鍋は厨房のものを使って良いわ。食材は自分で用意するか、この寮にある物を買うこともできるからね」
「そうなんですね。わかりました。ちなみに、昼食はどうすれば良いですか?」
「学校に学生食堂があるの。寮の食事よりちょっと高いけど。場所は入学申請の時に貰った地図に書いてあるはずよ」
「そうなんですね。ありがとうございます。あと、朝の日課で剣の練習をしているんですけど、どこか良い場所はありませんか?」
「そうね。この寮には練習出来るような広い場所が無いわね。第3鍛練場なら朝は空いているかしら。後で学校の先生に確認してみてちょうだい」
「わかりました。後で確認してみます」
「他には無いかしら」
「今のところ大丈夫です。案内ありがとうございました!」
「はい。では、これから半年よろしくね」
「よろしくお願いします」
ナタリーは階段を降りていった。ショーマはナタリーを見送ると、部屋へ入る。
よし、荷ほどきでもしますか!
やっと学校編に入りました。
次回はこの世界の説明回になると思います。
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