21―黒ショーマ降臨
残酷な表現が続きます…
ショーマは城に向かって飛んでいる。
―――ショーマ、ちょっといいかな?
不意にソラから話し掛けられた。
―――どうしたの?
―――ミクヤさんなんだけど、薬を使って性奴隷の管理をさせられているらしい。
―――っ、、、りょーかい。
ショーマはソラからの情報に苛立った。
マジでどんだけゲスなんだよ。結局悪党はどこの世界でも悪党だってか。あー、ムカつく。城ってことは領主だろ?領主がどんだけ偉いってんだ?人権無視してんじゃねーよ、クソが。
ショーマは悪態をつきながら貴族街を囲う塀を越えた。その際、ちょっと手元が狂ってしまい、放った魔法が二つある門を同時に破壊したのはご愛嬌。門の有った場所は瓦礫の山と化し、それによって貴族街はある意味外と遮断された。
貴族街は塀の外と違い整然としている。道端に人だったモノが倒れている状況を散々見てきたショーマは、はぁと一つ溜め息を吐いた。
お偉いさんの住むエリアは疫病が蔓延してないんだなー。門で物理的に区切られてるから?あとは、備蓄食糧があって体力あるし、自分も住んでるとこもそこそこ清潔に保てる的な?だとしてもあの強烈な臭いはどうしてるんだ?
せめて配給とかしてるのかね?なんだっけ、えーっと、のぶ、のぶ・・・持つ者が負う義務とかそんな感じのアレ。いや、たぶんここの奴らは下々の生活なんか関係ないって思ってるんだ。だから住民も暴動を起こそうとしたんだろうな。
そーいや、街に立ち入り制限かけてたよね。外から非常食とか物資とかは届いてるのか?いや、届いてたとしてもお偉いさんが独占してんだろうな。はー、ヤダヤダ。ま、あの門じゃ当分お偉いさんは外に出れないよね。馬車なんか通れないし。もっと嫌がらせしてやりたいな。
──うん?
ショーマが色々と考えながら城に向かって飛んでいると、街中を横断する様に配置された人工的な林の上空を通過する。その時、視界に何かが入った。
ほー、ただの林じゃなくて訓練場と厩舎か。あ、これ全部解き放ったらどうなるんだろう。この街は元首都ってだけあって広いから、全部捕まえるの大変だろうな。
ショーマは林にある大きな厩舎を見てにやりと笑った。行きの駄賃とばかりに厩舎の中へ侵入する。ざっと中を見渡し、馬房に入れられていた馬を全て厩舎の外へ転移させた。厩舎内部が空になった事を確認すると、屋根の上から押しつぶす様に岩を落とす。
捕まえたものを入れる箱まで壊すとは、なんとも入念な嫌がらせだ。
ショーマは林や運動場を右往左往と走り回る馬たちを見て、アハハハと楽しそうに笑いながらまた城に向かって行く。
ショーマは城に着いた。
城は石造りの堅牢な建物で、上から見ると田の字になっている。四隅と中央に円柱状の棟が立ちその天辺には円錐状の屋根が掛かっている。他の部分は陸屋根で、巡回の兵と思しき者があちらこちらに倒れていた。
要塞って感じ?ミリメトピアは綺麗な建物だったから差が凄いね。さてと、これだけの広さを探すのは大変だな。どうしようか。
ショーマは上空で滞空しつつ考える。
「ミクヤさーん!居たら何でもいいから居場所を教えてくださーい!他のみんなは外に出て坂の上で待機しててー!!」
ショーマは大声で城に声を掛けた。何か魔法を使ったのかその声は城中に響き渡る。声に反応した数頭の魔物が坂の上に集まり、城中央の塔上層部で光が明滅した。
おお!あのシルエットは熊だ!!きっと緑熊の旦那さんだよ!あとは、ミクヤさんはあそこか!!
ショーマは塔へ向けて降下した。そして、光を目指して塔に近付く。光は塔に複数設置された細長く奥行きのある隙間から漏れていた。
「そこにいるのはミクヤさんですか?」
ショーマが隙間に呼び掛けると、小さくハイと返事が聞こえた。
壁を破壊したら建物が崩れると考えたショーマは、少し待つように伝えると陸屋根部分から建物内に侵入した。円塔内部は意外と広く、吹き抜けた壁沿いにある階段には等間隔に複数の鉄の扉がついている。
おー、結構部屋数があるなー。これ全部あれだったりするのかな?おねーちゃんとの○○部屋。
とりあえず扉だけは壊してくか。
ショーマは中央の吹き抜けを上昇しつつ扉の蝶番、錠、閂を破壊していく。そして、先程光を見た最上階の部屋に辿り着いた。ショーマは他の部屋と同じように扉を破壊する。
「今扉を壊したんで、中から蹴り開けてください」
部屋の中で人の動く気配がした。扉が蹴破られると、女性が一人出てくる。
「ミクヤさんですか?」
「はい。わざわざこちらまで御足労いただきありがとうございます」
ミクヤはそう言うと、綺麗に腰を折った。ショートカットの髪が揺れる。
「いえいえ、どういたしまして。うん。イクハさんと違って健康そうだね」
ショーマはミクヤをざっと見てにッと笑った。ミクヤはショーマの言葉に詰め寄る。
「あの、息子は!ライは無事ですか!?」
「安心して!メイも含めてみんな保護してるから大丈夫だからっ!」
ショーマは階段の手摺から身を乗り出すミクヤに慌てる。ミクヤは己の体勢にハッとすると一歩離れ、静かに微笑んだ。
「すいません。でも、よかった。もう四人しか生き残っていませんから・・・」
「とりあえず、ここから出ようか」
ショーマはミクヤの発言に不穏な気配を感じながらも、離脱を提案する。しかし、次のミクヤのお願いに足を止めた。
「その前に、ここにも火を放って頂けませんか?」
「うん?ここにも?」
「ええ。ここの女性たちは皆心が壊れかけてしまっていますので。薬を処方してどうにか保たせていましたが、私がここを出てしまうと薬を飲むことが出来ず完全に精神が破綻してしまうと思われます。出来れば自我のある内に自由にして差し上げたいのです。
先程街の方で“弔いの想いを乗せた青白い炎”を見ましたが、あれは主様の魔法ではありませんか?」
「あの魔法は俺が使ったけどさ、でもさすがに生きてる人間を火にかけたくないよ。それに彼女たちは被害者なんだから」
ショーマは苦笑いで窘めた。
「それでも、彼女たちの尊厳を何とか「そうだ!」はい?」
なおも言い募ろうとするミクヤの言葉を遮った。
「フフフ。おねぇちゃん達を全員誘拐しちゃおう!これもある意味嫌がらせ!」
ショーマは悪巧みを思いついたとばかりにニヤリと笑った。
ショーマ「フフフ」
朝木 「ショーマ?」
ショーマ「フハハハハ!」
朝木 「ちょ、ちょっとショーマ!?」
ショーマ「どうしたの?」
朝木 「はぁ、どうしたのじゃないよ。二重人格?」
ショーマ「いや、どんな嫌がらせしようかと考えて楽しくなってただけ」
朝木 「そ、そうなんだ」
ショーマは権力を振りかざす理不尽に憤っているみたい。
ちまちまと面倒な嫌がらせを実施中。
次回、去る。です。
旧都脱出!
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