9―サートミーラ王国4
遅くなりました。
本日、後半に第三者視点が入ります。
※12/16…誤字報告修正
ショーマとソラはノーランの家の、先程通された部屋に転移してきた。
奥の部屋に居るノーランは、突然人の気配が現れた居間に慌てて立ち上がり、部屋の中の確認を急ぐ。
『ノーラン、静かに、僕らだ』
ノーランがドアノブに手を掛けたところでソラが声を掛けた。間をおいて、ゆっくりとドアが開かれる。
『よかった。無事だったか』
ノーランは無事という言葉にぴくりと反応した。
『今さっき僕らは襲われてね。少し心配だったんだ。ノーランの方にも何人か残ったのは一度外に出たから気付いただろ?』
ソラの話に驚きながらもノーランは頷いた。
『・・・ふぅ。ショーマ、ちょっと出てくるからノーランとここで待ってて』
ソラは頭をガシガシと掻くと、玄関に足を向けた。
―――え?
―――色々と面倒だからちょっと片付けてくる。
―――父さん!?
ソラは驚くショーマをノーランに預け、外に出た。
ソラが外に出ると、ほんの一瞬だけザワッと空気が揺れた。ソラは気にせず無造作に一歩を踏み出す・・・
・・・ソラは宿で襲ってきた人間と同じ格好をした者を、ノーランの家の玄関に放り込んだ。物音に慌ててショーマとノーランが玄関へ駆け付けた。監視者は全員、流血などなくきれいに意識だけを刈り取られている。
「ショーマ、ロープを出して。あとノーラン、こいつらが何者か判るか?」
ロープを用意するショーマの傍らでソラはノーランに尋ねる。
ノーランは意識を失い倒れている者たちのグレーの襟元を捲っていく。そして眉間に皺が寄った。
「──こいつらは諜報部の中でも、“魔力異常者”関連の部門の奴らです」
「魔力異常者、か。とりあえずこいつらを縛るのを手伝ってくれ」
「はい」
ソラとノーランはてきぱきと拘束した。
「監視者の処理をどうするか決める前に、魔力異常者に付いて説明してくれないか?」
「そうですね。とりあえず座りましょう」
ショーマとソラはノーランの後に付いて居間へ移動した。
「魔力異常者と言うのは、異様に魔力の多い者や全く魔力の無い者のことです。前者は魔族、後者は魔法使いですね。ちなみにこの場合の魔力とは放出魔力を指します。ミリメトピアで魔族と判った者は即刻殺され、魔法使いは捕まえられます」
即刻殺されるって、やばっ。それに全く魔力が無い者は魔法使いか。確かに魔力制御って魔法学校とか行かないと習わないもんなー。魔法使い、魔法使いね・・・魔法使いだっけ?
「なるほど。ショーマが狙われたのは魔法使いを捕まえる為か。しかし、僕らの魔力はいつの調べられたんだ?そんな感じは受けなかったが・・・ショーマは何か感じた?」
ソラはノーランの説明に色々と合点がいった様だが、同時に疑問が浮かぶ。考えても思い付かなかったのか、ショーマにも意見を求めた。
「俺も特には感じなかったかな。そう言えば、シドさんのメガネもそんな感じの魔道具じゃなかった?あれも特に何も感じなかったよね」
「そうだったな」
「でも、ここへ来た人間が絶対に通る場所なら検討が付くよ。俺らの魔力が調べられたのは検問所じゃない?」
「たしかに、検問所なら諜報部が居ても目立ちませんね。寧ろ、彼らにとっては主戦場ですから」
ショーマの意見にノーランが同意する。ふむとソラが考え込んだ。
「あのさ、ノーランさんはなんで普通に入れたの?しかも人間に紛れて仕事してるし」
「それは魔力制御をしながら意図的に微量な魔力を放出しているからです。人間はほんの少しだけ魔力を放出していますから。人間の生活圏に潜伏する魔族はそうやって擬態していますね。だから魔力云々で魔族が殺される事は滅多にないんですよ」
ショーマはその説明になるほどねと納得した。そして、微量に放出ってどんなもんかな?と指先から魔力を放出し始めた。
ショーマが試行錯誤を繰り返している間、考えを纏めていたソラが話し掛ける。
「ショーマ、捕まえた奴らはまとめて緑の熊に会った森に送ろう。それで、明日の早朝にここを発つ。僕らが無事に脱出出来たら奴らを門前にでも転移させよう。ノーランには迷惑を掛ける事になるが、済まない」
「いえ、大丈夫ですよ。どうとでもなりますから」
ショーマたちは今度こそ本当にノーランに別れを告げた。そして一度宿へ戻ると捕まえた者を全て森に転送する。さすがに森は野生動物の宝庫なので彼らに危険が及ばない様に頑丈な檻を用意した。
── ある男の話 ──
今夜の仕事は監視だ。
対象はノーラン、27歳、財務部の上級事務官、出身は旧都南部の農村。19歳で採用試験に合格し、7年目で上級事務官に。農村出身の平民にしては出世が早いな。
家の間取は玄関から入って右に居間、左が手前から台所、浴室、便所の水回り。突き当たりには書斎と寝室が一つになった部屋がある。鏡の様に反転して隣の家がくっついている、良くある単身者向けの官舎だ。地下は無く、屋根裏はあるが対象はほとんど使っていないらしい。
今回対象となった理由は、今日入都したある親子が接触を試みたから。検問所で“魔力検知の魔道具”がその親子に反応したらしい。
親は全身から漏れ出る魔力を検知した。きっと腕の立つ闘士ではないかと言うのが上の見解だ。確かに、己の肉体を武器とする闘士は無意識で全身に魔力を巡らせているって言うしな。
子は逆に魔力検知の魔道具が全く反応しなかったらしい。魔力ゼロの生き物は存在しないので、きっと魔力制御を使っているのだろう。子には未登録魔法使いの嫌疑がかかった。登録魔法使いは入都検査時に照合する事が義務付けられているからな。
そんな胡散臭い親子が接触する中央文官。上が怪しいと判断するのも最もだ。
俺はカーテンから漏れる明かりを頼りに居間の窓に寄り“聞き耳の魔道具”を取り付けた。そして路地の暗がりに潜み、室内の会話に耳を傾ける。
対象と親は同じ村出身の、幼馴染みと言ったところか。
ふむ。子は来月の闘技大会が楽しみらしい。もしかしたら親が出場するのかもな。
・・・特に可笑しな会話も無い。ただ観光の次いでに会いに来ただけみたいだな。
玄関で対象と親子は別れた。親子はフードを深く被っていて俺の配置からは顔が窺えなかったが、それ以外はこれと言った何かがあった訳でもなかった。
対象は家の中に戻り、片付けたり湯を沸かしたりと一般人と特別変わらない生活をしている。
俺の今夜の仕事は暇になりそうだ。家の正面に陣取ったヤツが欠伸を堪えているのが見えた。緊張感が無いな。
親子を追った方は子を捕らえる予定らしい。親が手練れの様だから手こずるだろう。
・・・今夜は対象監視の任務で良かった。
──対象の家に動きがあった。奥の部屋から居間へ、そして玄関へと。うん?途中で足音が変わったか?
外に出てきた者を見て驚く。一体お前はどこの誰だ?
対象しか居ない筈の家から出て来た男は、無造作に一歩踏み出した。しかし、直後に視界から消える。
今そこに確かに男が居たよな?目が可笑しくなったのか?背筋がぞくぞくとする中、注意深く周囲の気配を探る。するとドサリと音がした。
音の出どころを見ると、対象の家の正面で見張っていたヤツがさっきの男によって道へ放られていた。そして、男はまた無造作に一歩を踏み出し消える。
これはヤバイんじゃないか!?
俺は静かに家から距離を取り始めた。もうすぐ屋根伝いに1軒分移動しようという時、急に視界に影が差す。空を見上げると、目の前には男が。なんで今日は月が出てるんだ。と見当違いな事を思った瞬間、俺は意識を刈り取られた。
─────
ショーマとソラは夜が明けると共に目を覚まし、門が開く時間を待って宿を出た。昨日よりも雨が強く降っている。
面倒な事が何も起きません様にっ!
ショーマの願いが届いたのか出都の手続きはすんなりと済み、木札を返却すると二人は門外へと足を進めた。
ショーマ「狙われていたまさかの理由」
朝木 「魔法使いは登録制なんだねー」
ショーマ「人間の振りも難しいんだね」
朝木 「ショーマは特に女神様お手製の設定だもんねー」
ショーマ「それな。あの女神様のって思うとなんか怖いよ」
朝木 「あははー」
女神様 「くしゅん。うん?なんか寒気が…」
女神様、頑張れ!笑
ちなみに“魔法使い”は魔法を使う人間の総称です。
以前出た“魔法師”はシャインレイ王国の魔法使いの兵です。
なので国によって名前が違います。
ソラは安定の強さを発揮しました。
縮地+飛翔って、めっちゃチート。
ショーマが霞むー( ;∀;)
いや、前話はショーマが全部倒した…よね?
ソラはノーランと友達設定のままですが、ノーランはドラゴン相手に畏れ多いと通常モードです。
心の距離をちょっぴり感じたソラでした。
次回、今度こそ旧都潜入!です。
サムの回収にいきまーす!
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
更に、12/13に総ユニーク20,000人達成!
更に更に!今話で50万字突破!
更に更に更に!!投稿開始から1年半!
ヽ(*´▽)ノ♪
思いの外連載が続いて正直びっくりです。エタらずここまで来れたのは読者の皆様のおかげです。(人´∀`*)アリガト♡
今まで通りのんびりほのぼの更新になると思いますが、頑張ります。これからもよろしくお願いします!
…ショーマ全然成長しないなー。( ̄▽ ̄;)
※次回更新は12/20(金)です。よろしくお願いします。




