5―変装指南
本日、ほんのり長めです。
※11/30…矛盾点を修正しました。
(詳細は次話後書き参照)
ショーマとソラは洞窟前に転移してきた。
正確な時刻はわからないが、ヒスイは確実に寝ているだろう。二人はこっそりと玄関を抜け、広間に入った。
「おかえりなさい。どうしたの?」
広間ではサクラが本を読んでいたらしい。物音に気が付いてソファから立ち上がったところに鉢合わせた。
ショーマはとりあえず荷物を置いてくる!とソラの荷物もひったくって自分の部屋へ消えた。
ソラはクスリと笑い、サクラの隣に向かう。
「ただいま。もう寝ているかと思ったよ」
「ヒスイはもう寝たわ。私もそろそろ寝ようと思っていたところなの」
「そっか。会えて嬉しいよ」
ソラはどうして帰ってきたのかをサクラに教える。
「そうなの。じゃあ、すぐに戻るのね」
「そうなるね」
「ねぇ、母さんってもう寝る?」
荷物を置いて戻ってきたショーマはサクラに話し掛けた。
「あら、どうしたの?」
ショーマはサクラの隣に座り、ちょっとしたお願い事を言う。
「時間があるなら俺らの変装を見てもらおうかなって。ほら、俺と父さんだと適当にやっちゃうし。実際適当にやってすぐ外の人ってバレちゃったし」
ソラはツイッと視線を逸らした。
「うふふ、いいわよ。でも私はほとんどこの近辺から出た事が無いの。何か参考になるものがあるのかしら?」
ショーマはじゃーん!と効果音付きでディラントで貰った資料(複製)をサクラに見せる。サクラはそれを受け取り、パラパラと中を見た。
「ふぅん。なかなか面白い本ね。ねぇショーマ、私にも1冊作ってくれる?」
「うん。いいよ!」
ショーマはサッと複製する。
コピーのコピーだけど・・・パッと見て落丁も無いし、文字の掠れなんかも無いから大丈夫かな。
はい。とショーマに差し出された資料をサクラは嬉しそうに受け取った。
「ありがとう。ふふ、いろいろと創作欲が刺激されるわ。それで、どこの国の格好を真似るのかしら?」
「このサートミーラ王国ってところなんだけど」
ショーマは資料を捲ってサートミーラ王国のページを広げる。
「これは、また随分と個性的な格好なのね」
「そうなんだよ。絵だけだと何となくしかわからなくって。母さんなら服の仕組みとか理解出来ない?」
「まぁ。やってやれない事は無いかしら?」
サクラは資料を見ながら考える。
「ズボンは色だけ変えればそのままで大丈夫そうね。ショーマ、上着の中の服を作ってみて」
ショーマはサクラに言われた通り、それっぽい服を空気から作る。
形はショーマの前世で言う所のタートルネックのロンT。シルエットは首もとを含め全体的にダボッと緩い。
「ちょっと待って。ショーマは布がどうやって出来ているか知ってる?ほら、今着ている服を見てみて。糸が縦横になっているでしょう?」
「確かに。これじゃビニールみたいだね」
ビニール?と首を傾げるサクラを放置して、ショーマは今作った服を霧散させた。また集中して空気を固め、服を作る。
「こんな感じ?」
「そうね──もう少し糸を細く、布目を細かくした方が綿の生地に近付くかしら」
ショーマは再度作り直す。
「うん、これで良いと思うわ。形も不思議だけど、特に問題は無さそうね。それじゃあ次は上着を作ってみて」
「これがよくわかんないの。なんか、四角いワンピースみたいな?」
「そうね。ここがこうなって・・・」
サクラは資料を読み込み、服の造形を想像する。そしてショーマはサクラの指示に従い、服を作っていく。
「──これは台形の布を2枚合わせているだけみたいよ。頭の部分と腕の部分を残して肩と脇から腰までを紐で綴じ合わせているのね。
──そう、そんな感じね。でももっと丈を長く、膝が隠れるくらいまで伸ばして。
──うん。これで上着は良いわね。次はマントを作ってみて。
──前で合わせられる様にこことここにボタンが付いているみたいよ。それと、もう少しフードを大きくした方が顔が目立たなくて良いんじゃない?
──それで良いと思うわ。腰紐は、この前ラアイテで買った組紐の物で代用出来そうね。
──そう、それ。靴もそのままで大丈夫そう。これで形は整ったかしら。
──うん。色はこのままでも大丈夫そうだけど。念のため現地の人間をしっかり観察して、出来るだけ近付ければ大丈夫だと思うわ」
サクラはふうとやりきった表情で、作った衣装に着替えたショーマを見た。
「ありがとう!やっぱりお願いして正解だったよ」
「うふふ、どういたしまして」
ショーマは同じ要領でソラの分も作った。ソラはそれを受け取り、早速身に付けていく。
「あら、この国の男の子は成人するまで髪の毛を伸ばすみたい。折角綺麗にここまで伸ばしたから、切らずに済んで良かったわね」
サクラが習慣のページを見てショーマに教えた。
「え?あ、ほんとだ。伸ばしてて助かったね。ふむふむ。下の方で縛るのか」
ショーマは髪を解き、頭の下側で括り直す。これで完璧ね!とサクラから太鼓判を押された。ソラも着替え終わり、こちらも大丈夫とサクラは満足げだ。
「ショーマはこれからも髪を切らずに伸ばした方が都合がよさそうだね。
そうだ、今後男は髪を短くしなきゃならない国に入る時は、女の子だって言い張れば良いんじゃないか?今まで散々女の子に間違えられてきたから疑われないと思うよ」
「うっ、それは、ちょっと考える・・・」
ソラの言葉にショーマは断言を控えた。
◇◇◇
ショーマとソラはミリメトピア近くの森に作った建物に転移してきた。
「うおっ!?魔物だ!」
ショーマは目の前にいた緑の熊に驚くが、咄嗟に籠絡魔法を使い配下にした。そしていつもの如く解散しようとするも、魔物は何かを訴える様に二人の事を見ている。
「ねぇ父さん、この魔物が何を言ってるかわかる?」
「ドラゴンになればわかるけど、ここじゃ狭くて変われないな」
ソラは辺りを見回して難しいと溢す。
「あれ?アンズねえちゃんはアオイとしゃべってたけど?」
「子供の頃は人の姿でも聞こえていたんだけどね。いつからか聞き取れなくなったんだよ」
「そうなんだ。うーん。通訳かぁ。あ!ちょうどいいのが居るじゃん!父さん、ちょっと待ってて」
「え?あ、ちょっ!?」
焦るソラを置き去りに、ショーマは転移した。
「ただいま!」
ソラと魔物が何となく見つめ会う場にショーマが帰ってきた。手には紫色の小鳥がむんずと掴まれている。
『おい、ショーマ!いい加減離せ!!』
「あ、ごめん」
ショーマは小鳥につつかれていた手をパッと広げた。小鳥はバサリと飛び上がり、ショーマの頭に着地する。そして毛繕いを始めた。
「あー、なるほど。ユカリ君か」
『おぅ?ソラさん!聞いてくれよ!こいつ、有無を言わせず俺の事を掴みやがったんだ!』
「だって説明がめんどくてさって、いてっ!だからごめんって!!」
ユカリは気持ちよく寝てたのに!と言いながら、ショーマの頭をつつき続ける。ショーマはハゲるハゲると腕で頭を隠そうと頑張っている。それを見ているソラは苦笑いだ。
『ふんっ。で、何をすればいいんだ?』
ユカリは満足したのか、またショーマの頭に止まり説明を求めた。
「──はぁ。この子が何て言ってるか通訳して」
『はぁあ?そんな事で連れてきたのか。ったく、しょうがないなぁ』
ユカリはめんどくさそうに魔物と向かい合った。
『ふんふん。強者の匂い?臭いだけだろ。は?ほんと人間ってしょーもないのな』
「なんて?」
『こいつの旦那が子供を囮にされて人間に捕まったんだと。黒くてねばっとした紐でぐるぐる巻きにされて連れ去られたってよ』
「黒くてねばっとした紐?」
『ああ。んで、まだ生きてるから助けて欲しいって。ショーマたちから出る強者の匂いに誘われてここまで来たんだと。
なんか人間は「間に合った」とか「これで殺されない」とかそんな事を言ってたらしい』
え?匂う?とショーマが自分を嗅いで確認している。その横で、ソラが何かを思い出した。
「その黒くてねばっとした紐は、たぶん人間の魔法の“だーくばいんど”ってものだと思う。僕も昔仕掛けられたことがあるよ。確か並の魔物は動けなくなって魔力を吸われるんじゃなかったかな?僕には効かなかったけど」
ソラが黒い紐について、自分の見解を述べる。ショーマは腕を組み、うーんと唸った。
「もしかしたら。この子の旦那さんは御前試合の為に旧都に連れてかれたのかも。それと、サムさんがなんで簡単に捕まえられたのかもこれでわかったね。そんな魔法があるなら魔族にも効果がありそうじゃん。実動部隊なのになんで捕まったんだろ?って気になってたんだよね」
僕らも気を付けないととソラが言えば、でも効かないでしょ?とショーマが返す。ソラは笑ってそうだねと答えた。
ショーマは魔物にたぶん大丈夫だから待っててと伝え、ユカリをレイカーの湖に送った。
その後二人はミリメトピアに向けて出発した。
ショーマ「あれ?城は?」
朝木 「サクラの指南が長くって」
ショーマ「ふーん。他人のせいにするんだ」
朝木 「すいませんっしたっ!!」orz
思いの外変装指南のパートに筆が乗り、街まで辿り着けませんでした。
σ( ̄∇ ̄;)
次回、入街審査。です。
今度はお城まで行けるかなー。
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
そして、感想を頂きました!
ニヤニヤとニマニマが止まらん!
(///ω///)♪
頑張りまーす!!
※次回更新は12/2(月)です。よろしくお願いします。




