4―追加ミッション
本日、オマケがあります。
ショーマはソラに乗り北へ向かう。
目指すは神帝と名乗る国王の治めるサートミーラ王国。
一時的に雲が途切れていた足元にはまた厚い雲が流れて来ていた。
―――父さん、また雨が降りそうじゃない?
―――確かに。降られる前に一度降りようか。
―――そうしよ。あ、サートミーラに入る前にヒルダさんに連絡するんだった。もう入っちゃったけど、ま、いっか。
―――やれやれ。
ソラは若干呆れつつも周囲に視線を送り、降りる事ができる場所を探す。
―――ショーマ、ドラゴンだと降りられそうに無いから、もう少しミリメトピアに近付いて降りよう。
―――りょーかい。じゃあ潜入は空からじゃなくて徒歩でって事だね。
更に北へ飛んでからショーマはソラから飛び降り、ソラも人化すると森の中へと降下していった。
ほんと、今にも雨が降りそうだ。冬の長雨って感じ?まぁこの気温じゃ雪にはならないかな。
ショーマは空を見上げ考える。そして昨日と同じ様な建物を作った。その中に光鳥の投影が出来るように壁を立てる。地面は雨で湿っているので、壁の前に座布団を敷く。
ショーマは座布団の上に胡座をかくと、光鳥用に魔力で小鳥を作る。
「ほいっと!」
その小鳥をヒルダの元へ飛ばした。間もなく反応が返る。
壁に映し出されたヒルダに開口一番、一度こちらへ来てほしいと言われる。
ショーマは二つ返事で了承し、光鳥を片付けた。
ショーマとソラは何かあったのかな?と首を捻る。
「疑問を解消する為にも、とりあえずヒルダさんの所に行きますか」
二人はディラントの城へと転移した。
◇◇◇
二人はヒルダの部屋の前に来た。
コンコン
「ヒルダさん、来たよー」
ショーマは一応ノックをしたが返事を待たず、開きっぱなしの入口を抜けて部屋に入る。
そこではヒルダとナルアルトが二人を待ち構えていた。
「連日ご苦労じゃな」
「家でゆっくり寝ながら進んでるから、そうでもないよー」
労うヒルダにショーマはにへらと笑いながら返す。
それぞれがソファに座る傍らで相変わらずナルアルトがお茶を淹れている。それを配ると自身もヒルダの隣に腰をおろした。
「さて、ミリメトピアに入る算段はついたかの?」
ヒルダはナルアルトが座ったタイミングで雑談を区切り、今後の予定を尋ねる。
「うん。もう近くの森まで来たんだ。あとは歩いて森を抜けて、普通に門から街に入る予定だよ」
「服装は頂いた資料の通りにしますが、他に何か注意すべき事項はありますか?」
ショーマの答えをソラが補いつつ、質問を投げた。
「ふむ、格好が目立たなければどうとでもなりそうなものじゃが。ナル、何かあるかの?」
ヒルダに振られ、ナルアルトは暫し考える。
「そうですね──お二人が持つ魔鋼金属の剣は置いて行かれた方がよろしいでしょう。門の検閲で神帝への献上品として取り上げられる可能性が高いですから。ショーマ様の杖も高価な白金製なので、同じ様に取り上げられる事が考えられます。もし武器となる物を持ち込むのであれば、魔鋼金属ではないただの鉄や鉄合金で出来た剣やナイフなら問題ないでしょう。
鞄の中も全て検められるので、取り上げられる可能性のあるものは持ち込まない方が賢明ですね」
「検閲かぁ。この世界に来て初体験だ。
あ、じゃあこの地図も置いていった方がいいね。天使様に人間には見せるなって言われてるから」
ショーマはヒルダに断りを入れて、テーブルに荷物を出して選り分けていく。
「鉛筆もやめといた方がいいよね。なんちゃって世界樹製だし」
「今日作った魔道具も置いていった方がいいだろう。ありふれた鉄と硝子で出来ている物だけど、この組み合わせはあまり無いから」
ショーマは愛用の鉛筆を、ソラはテレビ電話の魔道具を剣や地図の方に避けた。
持ち込み不可と思われる山の方が圧倒的に多い。
「となると、持って行けるものは着替えくらい?干した果物とかも一応持ってくのはやめといた方がいいよね。洞窟とは大陸が違うから見たこと無いかもしれないし、コレはなんだって騒がれたくないし」
ショーマの鞄の中身はほぼ持って行けない様だ。
ソラは自分の鞄も空け、同じ様に分けていく。人間に見つかれば歴史的大発見の上、取り上げられる事間違いなしの前時代の魔道具もあり、こちらも持ち込めない物が多い。
「ねぇ、武器はどうしよっか。丸腰だと不安だよね」
「その解体用の普通のナイフだけでいいんじゃないか?たぶん鉄の合金だろうから。それにいざとなったら僕は素手でも戦えるし、ショーマの事だって人間に遅れをとるような鍛え方をしていないし。最悪魔法でどうとでもなるだろう」
「ま、まぁねっ///
あ、そうだった。ヒルダさんの用事って?」
ショーマはソラの言葉に少し照れ、ふとここに来た目的を思い出した。やっと呼び出された理由をヒルダに尋ねる。
ソラの鞄から出る非常識な物に唖然としていたヒルダは、気を取り直してショーマを見た。
「──旧都に行って魔族を一人連れ帰って欲しいのじゃ」
ヒルダは簡潔に伝える。その言葉にショーマはまず地図を開いた。
「旧都・・・って、ミリメトピアより東にあるサートミーラだっけ?」
「あぁ、ここじゃよ」
ヒルダはそう言って地図を指す。
「何があったのですか?魔族の方はミリメトピアに居ると言っていましたよね」
ソラはヒルダとナルアルトを静かに見た。
「それがの・・・」
何が起こったのか、ヒルダが語り出した。
─────
事の起こりはショーマたちがディラントへやってくる前まで遡る。
サートミーラ王国に派遣していた鳥人が年齢的な衰えを理由にディラントへ戻った。
これは前々からの決定事項でヒルダたちはすぐに後任を手配する予定だった。しかし、今の諜報部隊に余剰戦力は無い。とりあえずの措置として、レオン率いる実動部隊から蜥蜴人を派遣した。
この蜥蜴人がミリメトピアに潜入する際、内部にいる仲間との連携が上手くいかず、賊として捕らえられてしまった。
旧都サートミーラには闘技場があり、奴隷や犯罪者などが魔物を相手に戦う催しが定期的に開催されている。
賊として捕らえられた彼はサートミーラへと輸送され、今は闘技場の牢に囚われているらしい。
いくら待っても現れない同胞が来月行われる御前試合で披露される。との情報が入って現場は大混乱だそうだ。
一連の事態はショーマがディラントを出発した後に発覚した。
─────
「その蜥蜴人、名前をサムと言うのじゃが、そやつを助け出して欲しいのじゃ」
ナルアルトが似顔絵をショーマとソラに見せた。
「この人を助ければいいんだね。ちなみに、なんで連携が上手く行かなかったの?」
「ここから現地までの移動日数も勘案し、あらゆる予測をたてて慎重に事を運んだつもりでしたが、ここ最近の天候不良のせいで予定がずれ込んでしまったものと思われます。今回の件でやはり現場に諜報部隊の者がおりませんと、中と外の連携が上手く行かないと痛感させられました」
ナルアルトが苦虫を噛み潰したような顔をする。
「安心して!俺が必ず助けるから!」
ショーマはヒルダとナルアルトに必ず助ける事を約束した。二人は申し訳ないと頭を下げる。
他には無いかと確認して特に無いようだったので、ショーマとソラは一度荷物を置く為に洞窟へと転移した。
☆オマケ☆
サフーラ大陸、ある村の人々
〈証言1〉
おらが村の奥には深ぁい森さあってなぁ。
年に一度の神事でしか入る事ができねぇだ。
あやぁ、狩りなんかもってのほかだでぇ。
あの森のもんは全部神さんのもんだでなぁ。
そんな森によぉ、一条の光が射したっつぅでねぇか。
しかも森に吸い込まれたらしぃで。
吉兆の知らせだといいなぁ。
〈証言2〉
はい、私が見ました!
とても神々しい見たこともない白い光が真っ直ぐ森に伸びていたんです!
最初はこう、漂う様に動いていたんですけど、ある一点に決めたらそこへすうっと吸い込まれて行きました!
それはそれはもうキレイな光景でしたよ!
あそこに絶対何かがあると思います!
〈証言3〉
村の娘が白い光を見たらしい。
年を明けて降り続いている雨が一時的に止んでいるのはその光のお陰か?
それにしても雨が降りすぎている。
いくら冬で作物が無いとは言え、そろそろ春に向けて用意を始める所なのだが。
─────
昨夜のショーマのサーチライトが騒動を巻き起こしたみたい。
そして降り続いている雨。何のフラグ?
もちろんサムのフラグ!
回収早っ(゜ロ゜)笑
次回、一応お城に行っとく?です。
首都ミリメトピアに潜入だよっ!
応援して頂けると嬉しいです(^^)
訪問だけでも大感謝(^^)/
ブックマークの追加ありがとうございます!
なんと!190件になりました!!
更に!総PVが160,000を越えました!
160,000人目のお客様は11/20(水)0:00時台にいらっしゃったアナタです!
いつもありがとうございます!
よっしゃー!頑張るぞー!!
(≧◇≦)ノ オー!
※次回更新は11/29(金)です。よろしくお願いします。