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俺が魔王として女神が悪魔な世界にやって来た  作者: 朝木 花音
10女神の手伝い―準備編
178/263

閑話―PV100,000件達成記念!


 今更ながらPV100,000件突破達成記念!

 今日はもふもふの日!

 いつもより文字数多めです。



 誤字報告ありがとうございます。


※11/1…

 魔法学校編3 誤字報告修正

 魔法学校編27 誤字報告修正

 魔王は巻き込まれ体質編28 誤字報告修正





 私は途方もない時間をずっと一人で生きてきた。

 両親は私が乳離れをするとすぐに捨てた。

 生まれてすぐに捨てなかったのは慈悲だろうか。

 見た目が他のモノと違いすぎたからだろう。

 今となっては特に気にもならない。




 あの日、あの衝撃的な出会いが私の考えを全て塗り変えた。

 いや、私の存在そのものが変わってしまったと言っても過言ではない。




 ─────




 煌々と照る太陽からの厳しい暑さが和らぎ、段々と過ごしやすくなってきた頃のこと。


 私は住処にしていた三又(みつまた)の木の前でのんびりと過ごしていた。

 木々の合間から差す陽だまりで微睡んでいると、突然足元が光り輝き暖かい魔力に閉じ込められる。不意打ちで驚いたが、なんと心地好い魔力なんだろう。


 振り返ると視線の先に小さな生き物が居た。猿に見えたがどうやら違う生き物の様だ。

 ああ、大昔に見た人か。どうしてここに人が?


 その小さな人は何かを考えているらしい。様子を窺っていると目が合った。


「今日から君はウルシね。よろしく、相棒!」


 私に名が与えられた。その瞬間、私の身体を何かが駆け巡る。これは、歓喜だ。私は喜びを伝えるべくその人にすり寄った。


 これが独りになってから初めての親愛行動だと後から気付く。あの時はそれすらも考える余地が無かった。


「ウルシ、これから滝の所まで行くから着いてきて。そうだ、やっぱり俺を乗せてくれない?」


 今はこの人に名を呼ばれるのが何より嬉しい。

 私は要望に応えるべく角を差し出し、脚を曲げ彼が跨がるのを待った。

 行こうかと声を掛けられ、私は彼を振り落とすことの無い様ゆっくりと歩き出す。


 彼はショーマと名乗った。

 ショーマ様。私の唯一の主人。


 この時私は彼に生涯尽くそうと神に誓った。


 その後ショーマ様は滝を縄張りにしていた蜥蜴どもを従えると、数頭の鹿の住む桃の木の近くに来た。桃はそろそろ旬の様で、熟れた甘い匂いが辺りに漂う。


 ショーマ様はそこに居た内の青い鹿に話し掛けた。

 青の彼女はとても美しく、私の心は大いに掻き乱された。


「じゃあ、君はルリね」


 彼女も名を貰った。私は早速その名で彼女に話し掛ける。


[ルリ、私はウルシです。よろしく]


[ウルシ様ですね。こちらこそ宜しくお願い致します]


 彼女は声までも美しかった。


 唯一の主人と美しい同僚を得た私は相当浮かれていた。

 近頃は向かうところ敵無しで少し傲っていた私にバチが当たったのだろう。あの様な情けない姿を彼女に見せる事になろうとは・・・。




 私たちはショーマ様の住処へと向かって歩く。匂いが、尋常ではないモノの匂いがする。

 思わずルリを見ると、私以上に萎縮していた。今にも泣き出しそうだ。


[ルリ、大丈夫ですか?]


[ええ、なんとか]


 懸命に歩を進める彼女は健気で。私はこのあと何が起ころうと彼女を守ると決めた。


「ウルシ、ルリ、ショーマの父のソラです。これからよろしくね」


 恐怖に戦き咄嗟に頭を下げたが、震えが止まらない。まさか、ショーマ様が竜の御子だなんて予想が着くだろうか。

 ルリを盗み見るとフラフラと足元が覚束なくなっている。すがるようなその目を見せられたら・・・。とにかく、どうにか彼女を支えようと身を寄せた。


 ふっと竜の匂いが薄まった。思わず辺りを見回す。

 ショーマ様たちの会話を聞く限りでは、竜の匂いを消したらしい。この程度の匂いでは風下から近付かれたら気が付かないだろう。


 ショーマ様はソラ様の指導のもと、私に鞍と手綱なるものを着け始めた。どうやらショーマ様はこれから旅に出るらしい。その準備の一環で私はショーマ様を乗せる為の装備を施されている。


 ショーマ様は何度も練習し、薄暗くなる頃には一人で一通り着ける事が出来るようになった。


 やはりずっと竜が傍に居るのは精神的に追い詰められていたのか、ソラ様が離れたと同時にほっと息が出た。


『そろそろご飯よ。あら?お客様?』


 その声に私は飛び上がり更にそのお姿を目に入れた途端、無様にも腰が抜けて立ち上がれなくなってしまった。

 ソラ様の匂いが薄れたのではなく、二頭いた内の一頭の匂いが消えただけだったらしい。ショーマ様が御子であれば母竜が居るのは少し考えれば当たり前だ。


 どうにかこうにか立ち上がる事は出来たが、その様子は生まれたての仔の様だったに違いない。いくら相手が竜とはいえ、ルリの前であの様な醜態を晒したのは一生の不覚だ。

 しかし、これ以上の恐怖もあるまい。今後は気を引き締めて行こう。




  ◇◇◇




 今日も一日歩き続けた。ショーマ様は魔物を見るや瞬時に従えるという事を繰り返している。

 夕方になり今日の移動は終わりにするらしい。私は野営地周辺を見回りある程度危険を排除するとルリを連れて食事の為にショーマ様から離れる。


 食事の間はルリと二人きり。美しい彼女の傍は少しだけ緊張してしまう。

 でも、一緒にあの恐怖体験を乗り越えたからだろうか。ルリとの距離が少しだけ近付いた気もする。


[ウルシ様、いつも危険を取り除いて頂いてありがとうございます]


[あ、いえ、私もゆっくり食事をしたいのでこれぐらいは全然]


[うふふ。それでもありがとうございます。ウルシ様のお陰でわたくしもゆっくり食事を楽しめるのですから]


 私はその笑顔の美しさにどぎまぎとしてしまい、顔を下ろした。彼女には食事を再開した様に見えるだろう。


[私に“様”を着けるのを止めて頂けませんか]


 ふと、今まで考えていた事がポツリと口から出てしまった。勢いとは恐ろしい。


[そう言われましても、貴方様は頂きの黒ですから]


 彼女は困ったように返す。私はこの機会を逃さぬ様、更に言い募った。


[それでも今は同じショーマ様の僕ではありませんか。そこに上下が有ってはならないと思うのです]


[それならばウルシさんとお呼びしても宜しいですか?流石に殿方を呼び捨てにするのは気が引けますので]


[──はい。それでお願いします]


 私は彼女の綺麗な笑顔に見惚れてしまった。




  ◇◇◇




 これ以上の恐怖はないと思っていた私だったが、今それ以上の恐怖を感じている。ソラ様とサクラ様は敵意が全く無かったから何とか耐えられたものの、今回は敵意丸出しの様だ。

 しかし、ショーマ様は気が付いていないらしい。言葉の通じない事はこんなにももどかしいのか。

 危険から距離を取ろうと後ずさるも、私達の事を見逃す気は無いらしい。


[ルリ、私の後に下がってください]


 私は少しでも彼女が逃げる時間を作るべく後に隠す。遂に洞窟から唸り声が聞こえてきた。


「ちょっと離れて!」


 ショーマ様は私から飛び降り、剣を手に洞窟の入り口を睨み付ける。すると、洞窟から1匹の白い狼が出てきた。


「狼か!」


 そこからはとにかく早かった。ショーマ様は狼に向け今までの様に魔法を放つ。しかし、狼は難なくそれから抜け出した。そしてショーマ様に襲いかかる。ショーマ様は狼からの攻撃を防ぐ事で精一杯らしい。

 何か反撃の糸口は無いか!?私が魔法で援護しようにも二人の動きが速くて撃ち込めない。焦りばかりが募る。


 次第にショーマ様の魔法が綻んできたのか辺りに竜の匂いが漂い始めた。狼もその事に気が付いたのか攻撃を止めて距離を取る。

 そのまま二人は会話を始めた。私は後に居る彼女が気になりそっと話し掛ける。


[ルリ、大丈夫ですか?無理そうなら今のうちに距離を取った方が良いですよ]


[大丈夫です。ありがとうございます]


 彼女は気丈にもここに残る事を選択した。その意志の強い眼差しに場違いながらもクラっときた。


 ショーマ様と話をする狼は徐々に態度を軟化させる。どうにか事が収まりそうだ。そう思った矢先、ショーマ様の一言にまた殺気が膨れ上がった。


 その後はショーマ様の見事な作戦勝ちで狼を従える事が出来た。時に非情な判断も下せるショーマ様に私は感動を覚えた。




  ◇◇◇




 私達はミツキ様の洞窟に一時的に間借りする事となった。

 殺気の無い普段のミツキ様はショーマ様を襲った者と同じとは思えない程におおらかな性格をしている。


 すっかりその生活に慣れた頃、ショーマ様が夕食の準備をしている時にミツキ様から話し掛けられた。


『ずっと気になっていたのだが、ウルシは純黒なのだな。長いのか?』


[え?あ、はい。魔物になってからと言うのであれば、それなりに。でしょうか]


『そうなのか。その割には初めて会ったな。ここにはシカが群れを成して暮らして居るが』


[私は他の者と群れた事が無いので。出来るだけ近寄らない様にしていたせいでもありますが]


『ふむ』


[ミツキ様も珍しい純白でいらっしゃいますよね。白に近い者は見たことがありますが、ここまで真っ白な方は初めて見ました]


『ああ、我は女神様の悪戯で生まれた者だからな。母の腹から出た時には既にこうだったのだ』


[・・・周囲から疎まれたりしませんでしたか?]


『ふん、その時点で我より強い者は群れには居なかったからな。逆にさっさと出ていってやったぞ』


 そう言ってふっと寂しそうに笑ったミツキ様を見て、あぁ、この方は私と似ているな。と思った。




  ◇◇◇




 ショーマ様と西の崖までやって来た。久し振りに見た海はかなり遠い。

 今回の旅はこれで終わりらしい。明日からは東へ向けて真っ直ぐ帰るそうだ。


 その日の夕方、いつもの様に食事にルリと出掛けた。まさか、その場で彼女からの告白を受けるとは思わなかった。


[ウルシさん。貴方をお慕いしております。私の想いを受け取って頂けませんか?]


[──ルリ、私は貴女と添い遂げたい。しかし、私は普通の鹿では無いのです]


[それはそうです。ウルシさんは頂の黒ですから。でも、わたくしは頂の黒だからと貴方を慕っている訳ではありませんからね。いつも然り気無く守ってくださっているのには気が付いています。そんな貴方だから好きなのです]


[私が普通で無いのは黒だと言う事だけでは無いのです]


 ルリは先を促す様に黙った。私は一つ息を吐いて心を鎮める。


[私は他の鹿とは違う見た目で産まれました。例えるなら、今日ショーマ様が従えた黄色い蛙に少し茶色を混ぜた様な姿で私は産まれたのです。

 私が産まれた森はここより遥か南方で、こことは違い魔物になる鹿は殆ど居ませんでした。産まれたての私は他の鹿同様にまだ魔物ではありませんでしたが、まるで魔物の様な見た目の私は乳離れを迎えるとすぐに群から追い出されました。

 そこからはずっと独りで生き延びました。そんな私ですから、他の者と一緒に過ごせるのかが不安で仕方がないのです]


[──ウルシさん。わたくしが貴方の家族になります。もう独りにはいたしません]


 見事な夕焼けを背に立つルリの情熱的な目に私は屈した。




  ◇◇◇




 ショーマ様には伝えたつもりだったが、やはり言葉が違うと伝えきれない。

 北部へ旅をし始めて暫くしてからショーマ様は私とルリの関係の変化に気が付いたらしい。しかも、ルリが雌だとこの時初めて知った様だ。


「ねぇ、ルリはもしかして女の子だった?」


[ショーマ様、わたくしは雌ですのに。なるほど。角の有る無しで性別を判断されていたのですね。かと言って局部を確認されるのは例え相手がショーマ様であっても嫌ですっ!]


 プリプリと怒るルリが少し可愛らしく見えた。これは私の心の内だけに留めておこう。


「ルリ、ごめんね?」


 ショーマ様はルリの頭を撫でながら声を掛ける。


 私にも人の手があればルリともっと触れ合えるのに。

 私もミツキ様の様に人になる事は出来ないのだろうか。


 ショーマ様からの祝福を受けながら、秘かに願った。





朝木  「ウルシはルリに一目惚れしてたんだろうな」

ショーマ「ルリー!最初オスだと思っててごめんねー!!」焦っ


朝木  「よしっ!これにて女神様のお仕事―準備編が終わりです!」

ショーマ「ちょっと待ったー!!」

朝木  「えっ?なに?」

ショーマ「準備編って何!?いつから!?」

朝木  「三日くらい前から?」

ショーマ「…は?マジかよ!」


 話数がそれなりに増えてしまいまして、次話より実行編とさせて頂きます。

 ご容赦ください(´。>д人)゛



 と、言うことで。

 次回、ガジルラン王国へ。です!

 女神様のお仕事、本格始動です!!



 応援して頂けると嬉しいです(^^)

 訪問だけでも大感謝(^^)/



 ブックマークの追加、ありがとうございます!

 更に!久し振りに評価を頂きました!

 (^3^)/ <めっちゃ嬉しいヨー!)

 そしてむふふふが止まらない。

 (〃ω〃)

 これからも頑張ります!



 ※次回更新は11/8(金)です。よろしくお願いします!



ショーマ「あ、そうだ。活動報告で朝木の失態が公開されてるよ♪」

朝木  「それ言っちゃダメなやつっ!」


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