33―大会議室2
遅くなりました。
ショーマ達は大会議室で会議中。
「そろそろ次の説明に移るかの」
ヒルダが場を収拾した。またショーマ達は一覧表を覗く。
・メルバザン王国
・ガルメイナ王国
・ザンティス王国 +ガジルラン王国
・トキヨナ国
・ラナノワ国
・サートミーラ王国
・カンテーリー国
・・ミスリノート聖国
・・ディラント国
「トキヨナとラナノワは一つの大きな島だ。島の名前はサカント島。この二国は多部族の集まりで、その時々によって情勢が変わる。ジーク、今はどうなっている?」
レオンが一つの島を指しながら情勢を教える。
サカント島はラリーセ大陸の南東沖にある。大きさはオーストラリアの半分程、ほぼ円に近い形をしている。
ジークが次いで更に細かい説明を始めた。
「トキヨナ側はラム、カイナ、スイブの三部族、ラナノワ側はズール、ヴェステ、モラ、ミデの四部族。どっちつかずがモポラとメンチィの二部族。
奴らの争いは中央のパンドラっつー山の神殿の取り合いだナァ。国は二つに割れてっけど実際は九つ全ての部族がパンドラを狙ってンだ。
マァ、標高が高過ぎっから昔の人間ならともかく、魔法もろくに使えネェ今の人間じゃ神殿に辿り着けネェよ」
ジークはそう言いながら島の中央にある山をトントンと指差した。
パンドラって開けちゃダメなやつー!!!
ジークの説明にショーマの顔色が悪くなる。
「ショーマ、どうした?」
ソラがショーマの異変に気付き心配そうに尋ねた。
「パンドラは開けちゃダメなんだって!全ての災いが詰まってるんだから!!」
ショーマの言葉に一同は唖然と固まる。なおもショーマは言葉を続ける。
「絶対女神様が何か企んでるんだ。だって、無駄に俺の前世の世界の知識を持ってきてるんだから。開いたら終わり。世界が割れる。阿鼻驚嘆の地獄絵図。最後に希望なんか残らないんだ」
頭を抱え込みぶつぶつと言い続ける。思い詰めたショーマの目からはハイライトが消えている。
ソラはそんなショーマを自分に向かせると、両肩に手をのせて目線を合わせながら語り掛ける。
「ショーマ、女神様に神意を聞いてみたら?それが出来るのはショーマだけなんだよ」
じっと自分を見詰めて話すソラにショーマはハッとした。
「──!!そうだ!!聞けばいいんだ!!」
ショーマは女神リンクを繋げた。
「もしもし、女神様」
―――はいはーい。どうしたの?
「サカント島にあるパンドラの神殿ってどういうつもり?」
―――どういうつもりって?
「だって、パンドラだよ!?女神様がなんか仕組んでるんじゃないの!?」
―――仕組んでるって、失礼ね!あれは昔からパンドラなの!
「昔からパンドラ?」
―――そう!昔っから!私が管理を始める前からパンドラなの!
「じゃあ、女神様にもあれがどうなるかわかんないの?」
―――ショーマ君は災いの箱だと思ってるんでしょ?でも、あれは何も起こさないよ。
「本当に何も起こさないの?」
―――そうだよ!あれは神殿とか呼ばれてるけど、実際は火山の噴火予知と制御をしていた施設なんだよ。
「火山の噴火予知と制御?」
―――そう!
女神の話をまとめるとこうだ。
パンドラのあるサカント島はその昔活火山だった。標高8,000mを超える山体には3つの火口があり、頂上の火口以外は常にマグマが吹き上がり煮えたぎっていた。
問題は頂上の火口。もしこれが噴火をしたならば、舞い上がった火山灰がジェット気流に乗ってこの星を覆い尽くし地上には太陽光が届かなくなる。そうなると常に凍えた大地に暮らさなくてはならない。よって人間の活動範囲も狭まり今以上に争いが頻発する。
そう危惧した太古の人間は知恵と技術を結集した噴火予知と制御を行う施設を頂上の火口内に造った。
―――それがパンドラってワケ!
「いや、女神様にドヤられても昔の人間が造ったんでしょ?ってか今は何も起こさないってどう言うこと?」
―――それは私が昔地殻変動を起こしてマグマの通り道を変えたの。だからサカントは今火山じゃないんだ。標高だって元の半分も無いよ。もっと言っちゃうと、昔の人間はその施設を使って世界を掌握しようとしたんだよね。だから私が直々にパンドラを破壊しておきました!
「は?」
―――ちょっとパンドラを弄ると世界のどこからでもマグマを噴出出来る事に気付いた愚か者が居たんだよ。そんなことされるとこの星が割れちゃうから直ぐに対処する必要があったの。だからね魔族も生まれる前の、それこそ私がこの世界を引き継いだ直後くらいに破壊したんだ!建物は何故かきれいなまま残ってて今じゃ神殿扱いされてるけどね。
「って事は、中の設備は残って無いしサカントが火山じゃないから何も起きないのか!」
―――そ!パンドラは何も起こせないの!まぁ、確認がてら行ってみたら?ショーマ君の世界の天文台みたいな建物だよ。中はがらんとしてるけどね。
「そっか。わかった。ありがと」
―――また何かあれば連絡してねー。
ショーマは女神リンクを切った。そして固唾を飲んで見守っていた大人達に向き直る。
「ふぅ。パンドラはただの建物で、中には何も残って無いんだって」
今女神に聞いた内容を伝えた。
「そっか。ショーマの知ってるパンドラじゃなくて良かったね」
ソラはそう言いながらショーマの頭を撫でた。一方、魔族達は相談を始める。
「そう言われてみれば、我々が史実に登場する以前の事は魔王関連以外の文献を見たことが無い。他にも女神様が直接破壊した物はあるのだろうか」
「たまたま今回のパンドラが山頂にあったから残っておっただけで、地殻変動でみな海の底じゃろう」
「古代遺跡と呼ばれている場所もほぼ調査済みですからね。今更発見される事も無いのでは?」
「人間が行けネェ様な場所には残ってるかもしれネェけどな」
「それは一理あるが、かといって調査の為に今は人員を割く事ができない」
「そうじゃの。まぁ、今の人間の能力を鑑みるにそれは追々で良いじゃろ」
魔族としての方針が決まったらしい。
思い出した様にヒルダが訪れて欲しい街の場所を伝え、ショーマが地図にマークをしていった。
ショーマ「パンドラとかマジびっくりした」
朝木 「結局パンドラのハコは開かれた後なんだね」
ショーマ「え?」
朝木 「だって、女神様にハコあけられて破壊されて地殻変動で沈められて今や空っぽって」
ショーマ「あ、確かに。女神様、以外とすごいな」
朝木 「だね」
うちの女神様が実はパンドラの箱なんじゃないか疑惑www
完全に不可抗力ですがね!
次回、最後の二国。です。
これで今後の行動方針は決まる予定!
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うふふふ♪(=^ω^人)
※次回更新は10/28(月)になります。